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【校長室より】核兵器禁止条約、来年1月発効へ 

更新日時:2020年11月9日

【校長室より】核兵器禁止条約、来年1月発効へ 

核兵器禁止条約、来年1月発効へ       

中学3年生は、1024日(土)に平和学習の一環として、広島平和記念資料館の被爆体験伝承者の今石克久さんのお話しを聞きました(学校生活ブログを読む)。例年ですと生徒たちは現地で被爆体験者の講話を伺うのですが、今年はコロナの影響で広島・倉敷の修学旅行が中止になったため、伝承者のお話しを伺うことによって原爆の恐ろしさを知るとともに、さらに理解を深めることができました。伝承者とは「被爆者の体験や思いを伝える広島市の被爆体験伝承者養成事業に応募し、3年の研修を経て認定を受け、広島平和記念資料館などで、高齢化が進む被爆者に代わり被爆体年伝承講話」(NEWSWEEK 2020.8.11)をする方たちのことです。今石さんは、今年95歳になる被爆者の体験をご本人に代わってお話しくださいました。

このように日頃から平和学習に力を入れている多摩中高ですが、1026日、核兵器禁止条約が発効することになったというニュースが入ってきました。2017年に国連で採択されたこの核兵器禁止条約は、50の国と地域が批准手続きを終えてから90日後に発効することになっています。今年批准手続きをしたジャマイカ、ナウルに加えて、中米のホンジュラスが9月末に国内議会の手続きを終えて国連に寄託することになり、来年1月にも条約が発効されることになりました。

 

核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有が国際的に認められているのはアメリカ、中華人民共和国、イギリス、フランス、ロシアの5カ国。NPTが批准していない核兵器保有国はインド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国の3カ国。世界で唯一の被爆国である日本は核廃絶を目指していながら、アメリカの「核の傘」によって安全保障が保たれているという理由から、現時点では禁止条約に入る可能性はないとしています。日本以外に「傘の下」にある国々といえば、韓国、オーストラリアをはじめ北大西洋条約機構(NATO)加盟国を含む約50カ国です。

 

NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン会長とともに、2017年にノーベル平和賞を受賞したカナダ在住のサーロー節子さんは、禁止条約発効に喜ぶと同時に、条約を批准しようとしない日本政府に対して不満の声を上げました。節子さんはインタビューで次のように語っています。

 

「広島で体験した悪夢を思うと、75年たってやっと祈りが通じたと思いました。まだ体が震えています……人間として、この大量破壊の兵器について考えてください。核保有国の同盟とか、そういうことよりも、核兵器が人間ひとりひとりにどういう意味をもたらすのか。広島であったこと、長崎であったことを、もう一度真剣に捉えてください。何十万という人が亡くなった、殺されたんですよ、大虐殺されたんですよ……どうぞ日本の人たち、日本の政府、私たちの気持ちを理解してください。ともに前進できる土壌になってください。そっぽを向かないでください。背を向けないでください。」(News Web)

 

13歳の時に広島市の陸軍施設で被爆し、建物の下敷きになりましたが奇跡的に助かった節子さんは、戦後アメリカに留学。以来夫の祖国であるカナダに住み、一被爆者とし核兵器廃絶を訴えてきました。

 

また国際連合事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さん過去記事:中満泉さん、「偉大な指導者50人」に )は、JNNの取材に次のように答えています。

 

「核を廃絶したという大きな目的に関して、真剣に考えている国がこれだけある。特に被爆者の方々の運動が一番大きかったです。多くの加盟国が核廃絶を達成しなければいけないという強い思いに動かされて、こういった形で進んでいたことを非常にうれしく思います」

 

さらに前述のICANフィン会長は『朝日新聞』の取材に答えて次のように語っています。

 

「一日で世界をすぐに変えるわけではないが、条約は強大な影響を与えることになるだろう。これは核兵器の終わりの始まりだ。核兵器は今や国際法で禁止され、後戻りできない。……私たちはさらに多くの国が条約を批准するよう、活動をやめない。「核の傘」の下にある国、そしてすべての核保有国の参加を目指す。50カ国・地域では決して十分ではない。」

 

★みなさんも、世界で唯一の戦争被爆国である日本の「核兵器禁止条約」に対する対応、核兵器廃絶と平和の意味について改めて考えてみましょう。