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【校長室より】「女性初」が、ニュースなんかじゃなくなる日まで。

更新日時:2021年1月25日

【校長室より】「女性初」が、ニュースなんかじゃなくなる日まで。

「女性初」が、ニュースなんかじゃなくなる日まで。

トランプ前大統領がホワイトハウスを去った120日に、ジョー・バイデン新大統領がワシントンの就任式で宣誓して、第46代アメリカ大統領が誕生しました。またカマラ・ハリス前上院議員も副大統領として宣誓をしましたが、彼女は常に「女性初、黒人初、アジア系初」の副大統領として紹介されています。

 

ハリス副大統領は昨年の大統領選で勝利した時に「私は初の女性副大統領になりますが、最後の女性副大統領にはならないでしょう」と、あとに続く少女たちにメッセージをおくりました。(参照:【校長室より】「副大統領、私が(今)話しているのです」

 

冒頭に紹介したのは121日、ハリス副大統領の就任を祝して朝刊全面に載った「エイブル」の広告コピーです。このコピーの下には字が小さいので見にくいかもしれませんが、次のように書いてあります。

 

海の向こうで女性初の副大統領が誕生しました。

長い歴史を塗り替え、たくさんの人に希望を与えたこのニュースは、うれしい反面、こうも思うのです。「女性が重要な役割につくことは、まだこんなにも特別なことなのだ」と。

現在、日本のジェンダーギャップ指数は世界121位。アメリカ以上に、女性、男性間の格差は大きい。暮らしに目を向けると、女性は男性に比べ給与水準が低く、中でも一人暮らしの女性は、生活に余裕がないのが現実です。

さらにこれらの文章の背後には「女性初の副大統領」「囲碁女性初の快挙」「女性初の都知事」「EU委員長女性初就任」「初の女性学長」などの新聞記事の活字が二重写しになって見えます。「エイブル」は女性の自立・自活をサポートする『MAISON ABLE』を立ち上げ、「女性が、もっと活躍できるように」日本の女性を応援する協賛企業を募集すると提案してます。

 

「エイブル」のこの説明にもあるように、日本では依然として女性の地位は低い。賃金格差も大きく、このたびのコロナ禍においては、非正規の女性従業員が解雇される割合が大きく、メディアでも母子家庭の窮状が報道されており、「女性初」どころか女性の生活が脅かされているのが現実なのです。

 

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ウィキペディアを見ると「日本初・世界初の女性一覧」が出てきますし、世界で初の偉業を成し遂げた女性たちの活躍が紹介されています。例えば大西洋横断を成し遂げたアメリカ・ハート、ノーベル賞を受賞したキュリー夫人、宇宙飛行士サリー・ライド、アメリカ国務長官のマデレーン・オルブライト、大統領候補のヒラリー・クリントン、メイ・C・ジェミソンは黒人女性初の宇宙飛行しとして紹介されています。「男性初」の〇〇という表現は見たことがありません。では「女性初」とはどういうことでしょうか。いままで男性が占めていた職業に女性が進出すると「女性初」という言葉がついてくることがわかります。ハリス副大統領のように「女性初、黒人初、アジア系初」ということは、彼女が「マイノリティ」だということ、この反対の「男性、白人、多数派人種」が「マジョリティ」ということになります。ハリス副大統領が誕生したことは歴史的快挙ですが、アメリカ社会でさえ、背後には依然として性差別的な思想が根強いのです。今回のバイデン政権では29人の主要閣僚のうち女性は12人、アフリカ系、アジア系も含まれており多様な顔ぶれが揃いました。ワシントンポストの集計によれば、25の重要ポストのうち、女性が12人、人種マイノリティが13人ということです。またネイティブアメリカンやLGBTを公表しているピート・ビティジェッジ氏を運輸長官に起用しています。バイデン政権は経験者を配置しつつ、意識的に現代アメリカの多様性を反映しているところが新しい点です。

 

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「エイブル」の紙面全面広告に戻りますが、大統領就任式にこの広告を掲載したことは称賛に値しますが、紙面が「ピンク」だったことがちょっと気になりました。

 

「なぜピンクなの?」

 

赤ちゃんの産着は「ピンク」と「ブルー」、小学生のランドセルは「赤」と「黒」など、性別による色分けは、無意識のうちにわたしたちの生活に溶け込んでいます。日本に限らず欧米でも同様にこのように性別による色分けがありますが、近年はジェンダーによる固定概念を破る商品開発がなされるようになりました。社会がなんとなく決めた色ではなく、個人の好みによって女の子でもブルーや黒を選んでよい時代がすでに来てるのです。

 

「エイブル」の広告は「活躍するのに、女性も男性も関係ない。そんな社会を一日でも早く実現させるために。」という文章で締めくくられています。ピンクが悪いとは申しませんが、それなら何色がよかったのでしょうか? 生徒のみなさんはどう考えますか?