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#21 トルコの政治(2014年大統領選挙)【トルコ滞在記】

更新日時:2022年11月1日

#21 トルコの政治(2014年大統領選挙)【トルコ滞在記】

大統領選挙でエルドアン勝利を喜んでいるコンヤ市民の様子



#21 トルコの政治(2014年大統領選挙) (2014年8月7日)

イスラム教の大切な行事ラマザンが終わった後、トルコで注目されるイベントといえば8月10日の大統領選挙です。
今回はトルコの政治の現状について、簡単にお話しします。(といいつつ、中学生には少し難しい話かもしれません)
日本のニュースでも時々耳にするトルコの現在の指導者は、レジェップ・タイイップ・エルドアン首相です。彼はイスタンブール市長を務めた後、2003年に首相に就任し、現在13年目という長期政権です。

昨年のゲジ公園で続いた反政府デモはまだみなさんの記憶にあることと思いますが、あの大規模な抗議活動はなぜ起きたのでしょうか?
エルドアンは首相就任以降、トルコの経済を大きく発展させ、国民からの高い人気を得てきました。しかし、もともと彼は保守的なイスラム信者で、高校も宗教指導者養成校を卒業しているほどです。彼は首相就任前にある政治集会でイスラム教を賛美する詩を朗読し、政教分離に関する法律に違反したとして、実刑判決を受け、半年ほど服役した過去もあります。それほどまでにトルコでは建国の父ケマル・アタテュルク以来、政教分離が徹底されているのです。

さて、エルドアンはトルコの経済を大きく発展させてきた一方で、イスラム色の濃い施策も実行してきました。
私が初めてトルコを訪れた2009年時点でさえ、ガイドの男性は「エルドアンはモスクばかり建てている」と苦い顔をしていました。エルドアンはその他に大学などの公的な場所での女性のスカーフ着用を認めたり(それ以前はスカーフはイスラム色が強いので、政教分離の考えからスカーフ着用は禁止されていました)、22時以降の酒類の販売を禁止したりといった政策を行ってきました。(22時以前なら普通にお酒を販売しているところが他のイスラム諸国と違いトルコらしいところですが)
このようなエルドアン首相のイスラム色の濃い政治は、政教分離を大切に考える人々に疑念や不満を抱かせてきたのです。
その他のエルドアンの政治手法(縁故者に利益誘導する、反対者は強権的手法で排除する等)も人々の不満を高めました。

そういった不満の爆発が昨年のゲジ公園での大規模な抗議行動だったのでしょう。
さらに追い打ちをかけるように昨年の12月にはエルドアンの家族ぐるみの汚職疑惑が持ち上がりました。しかし、捜査を始めた警察の上層部の人間を大規模に配置転換したり、ツイッターを遮断するなど強権的なやり方が続きました。

その後、今年の3月30日には統一地方選挙がありました。ゲジ公園での抗議行動以来の全国的な選挙で、エルドアン首相への信認の意味合いもありましたが、結果はエルドアン率いる政党AKP(公正発展党)の圧勝でした。

エルドアンには首をかしげる国民が多いのになぜでしょうか?

多くのトルコ人に聞いてみると、9割近くの人はエルドアンのことをよく思っていません。今まで私が会ったトルコ人で積極的にエルドアンを評価する人は一人だけでした。
そんな状況なのに選挙で彼が勝利できるのは、エルドアンに代わりうる政治家がいないからだと、多くのトルコ人は言います。「エルドアンはダメだが、他の政党や政治家はもっとダメだ」と。つまり消去法で行くとエルドアンということです。
またそれは比較的若い人々の意見で、年配層や敬虔なムスリム層にはエルドアンの人気は依然として高いものがあることは事実です。

彼の経済運営の手腕を評価する人は、「やはり自分の生活は大切」と考えているようです。昨年のゲジ公園での抗議行動の際にも、大部分のトルコ人は普通に会社へ出勤し、仕事が終わった夕方以降や週末にデモに参加していました。発展をつづけるトルコの経済に悪影響を与えるほどまでには抗議行動はしたくないと考えている人も多いようです。
以上のような理由も要因となってエルドアンとAKPは選挙に勝利したのでしょう。

さて、8月10日の大統領選挙、「結果」はいかに?
エルドアンに批判的なのは若者、しかし選挙にあまり行かないのも若者という構図は日本と似ていますが、立候補者3人の中でエルドアンが大統領になることは間違いないでしょう。
私が「結果」というのは、大統領選挙の後に再びゲジ公園のような大規模な反政府抗議行動が起きるのかどうかという点です。

トルコ滞在記、しばらく夏休みでお休みさせていただきます。

※本連載は、2014年~2015年にかけて掲載していた記事の復刻になります。
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