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#16 イスラム教の行事②-1【トルコ滞在記】

更新日時:2022年10月19日

#16 イスラム教の行事②-1【トルコ滞在記】

肉屋さんのチラシの下半分にラマザン期間中の時刻が



#16 イスラム教の行事② (2014年7月11日)

今回は6月28日から始まり7月27日まで続く、世界中のイスラム教徒にとっての一大イベント「ラマザン」(断食月)ついてお話しします。

ラマザンは断食月と言われますが、一日中断食をするわけではありません。日の出から日没までの日中、飲食・喫煙・性行為等を断ちます。
ラマザンの期間は太陰暦のイスラム暦によって決まっており、毎年10日ほどずつ早くなっていきます。今年は、上述のとおり6月28日~7月27日までの30日間。来年2015年(イスラム暦1436年)は6月18日~7月16日までで、トルコセミナーの時期とラマザンは重なりません。

このラマザンの意義とは何なのでしょうか?
世界史を勉強している人なら知っていると思いますが、イスラム教の開祖ムハンマドが信者を引き連れてメッカからメディナへ移住したできごとがあります。西暦622年の「ヒジュラ」です。この時の苦難を追体験し、その苦難を乗り越えられたことを神に感謝することからラマザンは始まったと言われています。
その経緯はさておき、現在ではラマザンの意義は、次のようなものでしょう。
「あらゆる欲望を抑えること」「飢えている人や恵まれない人の気持ちを理解すること」「困難に耐えうる精神力を養うこと」「神の恩恵を感じること」などです。
これらは、これからお話しするラマザン期間中の様子を知ればよく理解してもらえると思います。

ラマザンは日の出から始まると言いましたが、この日の出というのは、東の地平線から朝日が差し込む時間であり、太陽そのものはまだ地平線に顔を出してきていません。いまトルコでは、朝明るくなり始めるのは4時半から5時くらいですが、ここでいう日の出はそれよりももっと早く、今日7月10日だと3:36です。この時間から日没までは飲食等を断つわけです。
私はイスタンブールで、知人のトルコ人の義兄のAliさんと一緒に暮らしています。彼は元トルコ軍の将校で、けっこう敬虔なムスリムですが、彼も真夜中の2時半や3時ごろに起きて、日中の断食に備えて食事をしています。そしてその後、また仕事に行くまで数時間仮眠をとっています。
上の写真を見てください。これはお肉屋さんのチラシの下半分ですが、ラマザン期間中の日の出の時間、そして一日五回の礼拝の時間が正確に記されています。人々の参考にしてもらうサービスですね。ちなみにこの時間は太陽の運行で決まっていますので、日によって、また都市や町によって少しずつズレがあります。この写真のものはあくまでイスタンブールの時間です。トルコで最も西にあるエディルネという街になると、日没は9時を過ぎます。

一番左が日の出時刻、他の五つが礼拝時刻

今日7月10日の欄(左端の数字が13の欄)を見ると、日の出は3:36で、これ以降は一切の飲食等はできません。そしてその右側に時刻が五つありますが、それが一日五回の礼拝の時間。このうち右から二番目の時間が日没の時間であり四回目の礼拝の時間でもあるのです。つまり今日(7月10日)は早朝(というか真夜中)の3:36~夜20:47までは一切の飲食・喫煙等ができないのです。これは私たち日本人にはけっこうきついように思われますよね。
ですが、このラマザン、さきに述べたようにいわゆる断食をするのは日中だけ。日没以降は盛大な食事をするのです。日中の断食を終えての盛大な食事を「イフタール」と言います。(次回へ続く)



※本連載は、2014年~2015年にかけて掲載していた記事の復刻になります。
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