OTSUMA TAMA Junior and Senior High School

学校生活

【卒業式式辞】学校長より31期生の皆さんへ

更新日時:2021年3月17日

【卒業式式辞】学校長より31期生の皆さんへ

高校3年生(31期生)

大妻多摩高等学校卒業式

高校3年生のみなさん、大妻多摩高等学校ご卒業おめでとうございます。

今年度は世界中が巻き込まれた厳しいコロナ禍の中、みなさんは本当にがんばって受験勉強をしてきたと思います。今その成果が実を結び、それぞれの進路に向けて新たな旅立ちをしようとしているところです。今年のこの経験はこれからの勉強や社会での活躍にかならずやプラスに働くことでしょう。世界中の誰もが予測すらできなかった新型コロナウィルスの蔓延に対して、人々は知恵を結集してワクチンを開発し、そこに国際協調と共生が生まれ、寛容の心がはぐくまれようとしています。

海の向こうのアメリカでは、共和党のトランプ大統領に代わり、1月20日に民主党のジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領に選ばれ、カマラ・デヴィ・ハリス上院議員が「女性初、黒人初、アジア系初」の副大統領に就任しました。主要閣僚に女性と人種マイノリティを起用し、コロナ対策、経済再生、移民法改正、気候変動を含む政策に重点を置いたバイデン政権が発足しました。

バイデン氏の次期大統領当選確実が判明した昨年11月7日、ハリス氏は平等、自由、正義のために闘い犠牲となってきたあらゆる世代の、黒人女性、アジア系、白人、ラテン系、先住民などすべての女性たちに向けて、世界中のメディアで取り上げられたこのスピーチを発信しました。

「私は初の女性副大統領になりますが、最後の女性副大統領にはならないでしょう。テレビで見ている小さな女の子たちは、性別にかかわらずアメリカは可能性のある国だということがわかるでしょう。

それではここから「女性と色」についてお話ししたいと思います。
ハリス氏がこの時着ていたのは白のパンツスーツ。白はちょうど100年前の1920年に、アメリカの女性が参政権を獲得したときに、参政権運動のリーダーの女性たちが着ていたドレスの色でした。

そして1月の大統領就任式では、バイデン大統領のジル夫人、ハリス副大統領、ミシェル・オバマ元大統領夫人、ヒラリー・クリントン元国務長長官で元大統領夫人はこぞってブルー系あるいは紫系のパンツスーツを身につけていました。紫はアメリカ二大政党である民主党の青と共和党の赤を混ぜ合わせた色、すなわち今までの分断から融和への願いが込められているということです。また紫は、黒人女性作家アリス・ウォーカーのピューリッツア賞受賞作『カラー・パープル』を暗示させるともいいます。白人だけでなく、黒人男性からもしいたげられてきた黒人女性が自立を目指すこの小説は、あらゆる世代のあらゆる人種の女性に向けられたハリス氏の大統領選勝利演説にも通じるものです。

そして就任式の翌日の日本の朝刊には、ハリス副大統領の誕生を祝して、ある日本企業が全面ピンク色の広告を掲載しました。この広告には「『女性初』がニュースなんかじゃなくなる日まで。」というキャッチコピーの下に、「女性が重要な役割に就くことは、まだこんなにも特別なことなのだと」と書かれ、志を同じくする様々な企業がパートナー企業として集結し、社会で女性がもっと活躍できるように一人暮らしの女性を応援するというプロジェクトの提案をすると記されていました。

この広告は即日論議をよび、この会社の役員には女性がひとりもいないとか、ピンク色の広告自体、男性が意図的に作った広告だというツイートで炎上しましたが、同日ハフポスト(アメリカ系オンラインメディア)は、このメッセージ広告を企画した人物のインタビュー記事を掲載しました。若い女性のための生活支援サービスを立ち上げ、広告を作ったのはこの会社の若い女性社員だったのです。彼女の意図は「女性初」という言葉が使われる背景には、日本における男性優位社会があることに気付いてほしかったと言います。

最近もオリパラ会長の女性蔑視発言に端を発し、会長に橋本聖子氏が選出されましたが、女性が選ばれただけで解決しない、日本の社会構造、男女格差の根強い問題が残っていることが明らかになりました。

白、紫、そしてピンク、女性を表す色は一色ではありません。現代に生きる女性たちは一つの価値観にとらわれることなく、どのような困難にも挑戦し、生き抜く強さを持たなくてはなりません。今から100年以上前に大妻コタカは女性の自立を目指して大妻学院を創立しました。女性が活躍することが当然の現代社会においても、「信念をもって社会に貢献する人となれ」というコタカの精神は皆さんの中に息づいています。大妻多摩中高で学んだことを誇りにして、自信をもって勉強、そして社会で活躍できるようお祈りしています。