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【校長室より】3学期始業式 校長講話

更新日時:2024年1月11日

【校長室より】3学期始業式 校長講話

3学期始業式(高校) 校長講話

熊谷 昌子


 皆さん、明けましておめでとうございます。
 新しい年が始まって気持ちも新たにがんばろうと思っていた矢先だったと思います。元旦の日に、能登半島地震という大きな災害が起きました。まずは被災された皆様へお見舞いの気持ちをお伝えしたいです。そして残念ながらお亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。今後の復興のために学校としてできることを皆で考えていきましょう。


 さて、年の初めには今年の抱負をご家族で伝え合ったことと思います。そんなことしてないという人は今からでも大丈夫。ご家族の前で宣言するかどうかは別にして、それぞれの夢とそれを実現するための目標についてはしっかりとイメージしてください。自分自身が設定した目標に向かって進めるというのは、あなたが自由である証で、とてつもなく幸せなことです。今回の地震で目標に向かうことができなくなった方が、沢山います。生まれた国や時代が違えば、この自由は手に入っていなかったであろうことは想像できますよね。

 あなたが今手にしている自由はまだ小さくて不完全と感じているかもしれませんが、これから年を重ねる毎に大きくなっていきます。ですから、自由である事の価値を今のうちから冷静に考えてください。そして自由と表裏の関係にある「未来の自分に対する責任」についても想像してください。皆さんそれぞれが今、どんな活動をするか、あるいはしないかが未来の自分をつくっていくわけですし、その活動の結果は本人だけが負うことになります。その覚悟をもったうえで自由を手にしていってもらいたいと思います。


 前置きが長くなりましたが、今日は「他喜力」をご紹介したいと思います。これは、日本のメンタルトレーニング研究の第一人者で、多くのプロアスリートや会社経営者などにメンタルトレーニングを指導して成功へと導いている西田文郎(にしだふみお)さんの造語です。この「他喜力」、スポーツでも進路でも私生活でも、目標までの道のりをグッと短くしてゴールを近づけてくれる力なんだそうです。

 世の中には夢や目標をもち、それに向かって努力を続けている人たちがたくさんいます。アーティスト・スポーツ選手・就活中の人・そして学生である皆さんもそうです。「ところが…」、西田さんは次のように言います。

 「同じように頑張っていてもその努力が報われて大輪の花を咲かせる人もいれば、逆に全く報われないで終わる人もいる。いったいこの違いはどこで生まれるのか?本当のことをいいましょう。うまくいかない人は自分を喜ばすことしか考えていないのです。夢をかなえて成功している人というのは、自分を喜ばせるだけでなく、他人を喜ばす方法を常に考え、実践しているから豊かで幸せな人生を手に入れられたのです。世の中は他人を喜ばせた人が勝つ仕組みになっているのです。」

 これをきいているみなさんの夢は人それぞれでしょう。一人ずつ中身は違ったとしても共通することは、自分一人が頑張って達成できるほどささやかな夢ではないということです。目標の達成には必ず人の力を借りることになりますよね。どれだけ才能や技(技術)を持った人でも、周りにいる人に受け容れられ、協力してもらえなければ成功はできないのです。逆に言えば人を喜ばせることを常に考えている人というのは、あなたが必要な時に周りの人から協力してもらえ、自分が思う以上の力が出せ、夢に達成できるというわけです。



 ここにいる皆さんがご存知の「他喜力」maxの人物とは誰でしょう?そう、言わずと知れた学祖大妻コタカ先生ですね。コタカ先生がお裁縫で作った作品はいつも使う人の立場に立って一工夫を凝らしたものだったそうです。自分ではお裁縫の才能を商売に生かそうなどとは思っていらっしゃらなかったと思いますが、便利かつ素敵な作品は話題になってコタカ先生の周りは人が集まり、やがて乞われて裁縫学校を立ち上げるまでになります。それからも常に周りの人を気にかけ、神社にお参りをしては「私をどうぞお役立てください」とお祈りをしたコタカ先生でした。戦争で一家の主をなくした働く女性のために夜間の学校を日本で一番最初に作ったのもコタカ先生でした。

 そんなコタカ先生の生涯には大きなピンチが何回か訪れました。

 その一つが関東大震災による校舎の焼失です。夏休み中にやっと工事を終えた新校舎が9月1日始業式の日に焼け落ちたのです。ご存知でしたか? そんな残酷な話がありえるのかといいたくなるような状況の中、3か月後には仮校舎を建てて学校を再開させたという事実。
 コタカ先生はそれが、「決してあきらめない心、良馬先生の励ましと協力、そして周囲の人たちの協力」の3つがあったからこそできたことだと語ったそうです。普段から「他喜力」を発揮し続けていたコタカ先生だからこそ成せた技だったわけですね。



 あともう一人、紹介したい例として、昨年大活躍だった大谷選手。
 彼が高校1年生だった時につくったマンダラチャートを見てみましょう。野球の技術を磨く内容の他に、他者との関係について書かれている部分がこんなに沢山あります。自分の力を最大限に伸ばすためには、自分が努力することは当然としても、他者との関係をしっかり築いて協力を得る事が不可欠であることを、高校1年生の時点で気づいていたところが、天才と言われる所以なのでしょう。



 では、他人を喜ばすって何から始めればいいのでしょう?難しく考えないでください。まずは一番身近な人、そう家族を喜ばすことから始めましょう。ちょっとした気遣いや言葉かけでも充分です。

 学校でもたとえば挨拶の際にちょっと笑顔を大げさにしてみるとか、掃除を手伝ってみるとか、友達と難しい数学を一緒に解いてみるとか…。常日頃から周りをよく観察し、自分のどのような行動が誰をどれだけ喜ばせるかイメージする習慣をつけるといいですよ。だってそうすることによって自分も楽しくなりますよね。

 ぜひ大妻多摩に「他喜力」を蔓延させて学校生活を皆さんの手で豊かにしてください。



 最後になりましたが、高校3年生の皆さんはいよいよ受験ですね。この時期は不安で当たり前。自信がある人がいたらそれは妄想です。だって準備万端整って試験を受ける人なんてどこの学校にもいないんですから。でもその不安の中でも最後の1秒まであきらめないことが大切。体調に気を付けながら最後の最後まで粘ってください。高校1・2年生の皆さんもそれぞれの夢の実現に向けて大いにチャレンジして頑張ってください。皆さんの健闘を祈っています。



(感染防止のため、始業式はZoom配信で行われました)