OTSUMA TAMA Junior and Senior High School

学校案内

【校長室より】ニュースレター「多摩の風」vol.14

更新日時:2023年9月1日

【校長室より】ニュースレター「多摩の風」vol.14



ニュースレター「多摩の風」とは

本校の多彩な教育活動とその魅力を皆さんに紹介したいと思い、整理・編集したのがニュースレター「多摩の風」です。生徒には紙で配布しておりましたが、校内外問わずご好評をいただいていたので、今年度からはHPでもご紹介する運びとなりました。ぜひ、ご覧ください。(一部内容につきましては、学校生活ブログでも紹介しております。)


PDFとしてのダウンロードはこちらから可能です。(「多摩の風」vol.14 )

過去の記事



中2 グローバル・キャリア・フィールドワーク

 コロナ禍以前にも中2の希望者によるオーストラリアへのグローバル・キャリア・フィールドワークは実施されていましたが、今回ついに中2全員参加で実施することができました。前・後半に分けて、3・4組は7月19日の終業式に出席してから出発、1・2組は3・4組が帰国した後の26日の出発でした。出発から帰国まで4泊6日の行程でしたが、次に現地での4日間の様子をご報告します。





【第1日】


 現地時間の7:00前にオーストラリアに到着。生徒たちは自分たちの力で有人の入国審査を済ませると、すぐにバスに乗って移動開始、大妻多摩の姉妹校であるブリジディーン・カレッジ(Brigidine College 私立女子中高)に向かいました。
 ブリジディーン・カレッジでは、現地生徒による校内案内、お菓子交換をしながらのティ-タイム、折り紙を使った交流会などの活動を行いました。最初は緊張した面持ちの両校生徒でしたが、時間が経つにつれて少しずつ笑顔でコミュニケーションを交わすことができるようになりました。自分の思いが伝わった喜びを実感した生徒は、「1単語でもいいんだ。完璧な英語じゃなくてもいいんだ。大切なのは伝えたいという気持ちなんだ」という感覚に気がつき、自分の殻を一枚破って自信をつけることができたようです。
 昼食は現地のショッピングセンター「インドロピリー」のフードコートに行き、生徒は各自でお店を選び、注文をしました。
 マウントクーサ展望台からブリスベンの街を一望した後に、街のシンボルとなっている築約100年のシティーホールの見学を行いました。見学の後に、生徒はシティーホール前の広場にいる通行人にグループで話しかけ、英語で質問を行いました。かなり勇気のいることだったと思いますが、どのグループも1回以上(多いグループで3、4回程度)話しかけることができ、グロキャリの目標のひとつである「コンフォートゾーン(自分が心地よいと感じる領域)を抜け出す」ことを達成することができました。

【第2日】


 2日目も雲ひとつない快晴の下、ブリスベンのホテルをチェックアウトし、クイーンズランド大学のキャンパスツアーからスタートしました。クイーンズランド大学はオーストラリア有数の名門大学です。広大な敷地の中、美しい建物とユニークな自然に囲まれたキャンパスを、実際にこの大学で学ぶ学生さんたちに案内していただきました。
 地元のオーストラリアだけでなく、タイ、中国、フィリピン、香港など、様々な国・地域出身のガイドの学生さ んたちの自己紹介を聞いた後、グループに分かれてキャンパス内を巡りました。生徒たちにはツアーの途中で通りがかりの学生さんに声をかけてインタビューするというミッションが与えられ、慣れない英単語に苦労しながらもお互いに協力しながら頑張って質問していました。また、ツアーの道中、ガイドの学生さんに積極的に質問する生徒もいて、自分から勇気を出してチャレンジする姿が印象的でした。
 午後はホテルの中と外をグループに分かれてローテーシ ョンし、現地で働く日本人の方数名にお話を伺いました。 それぞれにバックグラウンドの異なる方々のお話は非常に興味深いものでした。どの方も、もちろん大変なこともありますが、海外で学ぶことや働くことは実はそこまでハードルの高いことではなく、生徒が自分の将来の選択肢の一つとして考えていけると思わせてくれるようなお話をしてくださり、生徒たちもとても刺激を受けたことと思います。生徒の質問に答える形式でお話をしてくださったので、グループごとにさまざまな事柄について知 ることができ、とても貴重な機会でした。

【第3日】


 3日目の空もクリアブルーに澄み渡った快晴でした。ゴールドコーストは「年に300日が晴れ」と言われるほど晴れの日が多く、日射しが強いために街行く人の多くは帽子をかぶりサングラスをかけています。
 この日はまず、カランビン・ワイルド・サンクチュアリ(カランビン野生動物保護園)に向かいました。ここでは野生に近い形で動物が保護されており、見学者と動物との近さに驚きます (カンガルーの群れと見学者を隔てるのはロープ1本だけです)。 またもうひとつの特徴として、園内に野生動物を治療する動物病院があることが挙げられます。治療される動物は園内動物だけではなく、園外からも多く運び込まれるそうです。動物病院はガラス張りになっており、動物が処置を受けている様子を見ることができます。現地で働く日本人の方の解説もあり、環境保護と動物保護の密接な関わりを実感として学ぶことができました。
 夜は土ボタル見学ツアーに参加しました。真っ暗な山の中を足もとを照らす小さなライトひとつで進み、洞窟の中に入ります。そしてガイドさんの合図とともに洞窟の天井を見上げると、星空と見まがうほどの土ボタルの静かな光がいっぱいに広がっており、まるで 『天空の城ラピュタ』に出てくる飛行石の洞窟に飛び込んだようでした。
 その後は真っ暗な広場に移動して星空を観察。南半球でしか見ることのできない南十字星も見ることができました。満天の星空を見上げ、オーストラリアの大自然を感じられたことでしょう。

【第4日】


 いよいよ最終日。午前中はホテルのバンケットホールに集まり、2学期に行うプレゼンテーションの準備をグループごとに行いました。生徒はここまでの行程で様々なチャレンジを行い、自分の殻を破ることができました。その成長の感覚を忘れないうちに、現地で学んだことを踏まえて自身のキャリアについて考えました。生徒はみな真剣に作業に取り組み、その様子を見た添乗員の方にも褒めていただきました。
 午後はいよいよゴールドコーストでの自由行動です。生徒は自分たちで行きたいお店を選んで買い物をしたり食事をしたりしました。英語のやりとりを通して自分が欲しいものをちゃんと買えたとき、生徒は思わず笑みを浮かべて「やった!」という達成感を噛みしめている様子でした。中でもショッピングモールは人気スポットで、長い棚にずらりとならんだ異国情緒溢れる現地の商品を眺めているだけでも、あっという間に時間が経ってしまいました。この日はフィールドワーク最終日に相応しい、 大満足な1日になったことでしょう。


 今回のグローバル・キャリア・フィールドワークを通して学んだことは、一人ひとり様々だと思いますが、きっとみんな自分の殻を一枚破って成長できたことと思います。この貴重な経験を、ぜひこれからの中学・高校生活に活かしていってください。  




中3 環境問題ワークショップ


 7月20日(水)から22日(金)の3日間、中3の環境問題ワークショップが行われました。環境問題ワークショップは今年度で3回目です。今回行われた講座を以下に紹介します。

【第1日】


①大妻女子大学社会情報学部 細谷夏実教授 「海の現状を知り、海の保全を考えよう」
 ・・・ 簡単なクイズを交えながら海が抱える環境問題をわかりやすく解説していただきました。海洋酸性化が進んで海が二酸化炭素を吸収しきれなくなり、それが温暖化を加速させるひとつの要因となっていること、陸上から海に流れ出たプラスチック製品がマイクロプラスチックとなって海を汚染していること、これらの要因によって海洋生物の多様性が危機に直面していることなどを話していただきました。細谷先生は、豊かな海を守っていくために学生と一緒に「海育(うみいく)」の活動もされていて、先生の海への深い愛情が感じられる講義でした。

②成蹊大学経済学部 山上浩明教授 「経済学でできること」
 ・・・ グループごとにトランプを使ってゲームをするところから講義が始まりました。この「カード廃棄・ダウトゲーム」は、他のメンバーに失点させながらいかに自分の失点を少なくするかを競うゲームでした。講義の最初にこのゲームをすることのねらいは話されませんでしたが、やがて環境問題とのつながりが明かされます。環境問題は絶対に取り組まなければならない人類の課題ですが、手間や費用がかかることなので、できれば自分はやりたくない、他の誰かにやってもらいたい、と考えがちです。そうした人間の、あるいは企業の心理を実感させるためのゲームでした。こうした心理をふまえたうえで、どのような経済政策を実施すれば有効な環境問題対策になるのかを考える講義でした。

【第2日】


①社会科 名塩祐太郎先生 「地球温暖化」
 ・・・ 急速に進む気温の上昇やそれに伴う海水面の上昇、温暖化を促進させることになってしまう森林伐採などについての話でした。とくに、ベネチアの街全体が冠水している映像に生徒は衝撃を受けたようでした。

②保健体育科 金川実樹先生 「環境と健康」
 ・・・ 温暖化が進み、日本列島では蚊が生息・繁殖しやすい地域が広りつつあります。今後、南方に生息する蚊が外来種として日本国内に入ってくると、その蚊が感染症を媒介する恐れがあります。温暖化によって蚊による感染症が広まる危険性が高まっていることを取り上げた授業でした。

③主幹 松田武先生 「環境問題に対する企業の取り組み」
 ・・・ 今や企業は環境問題に取り組まないと消費者から選ばれない時代となりました。各企業の取り組みはどのようなものなのか、タブレットを使って自分が知っている企業について調べる作業を中心に授業を展開しました。生徒はトヨタ自動車、ユニクロ、コカコーラといった企業を調べていました。


【第3日】


 1日目と2日目に受けた講義内で提示された複数のキーワードをつなげ、各講義の内容の関連性を考え、さらに今回のワークショップを通じて自分たちが感じたこと、考えたこと、思いついた提言などをまとめる作業をグループワークで行いました。まずは各教室で発表をしてクラス代表のグループを選び、そのあと学年全体会で各クラスの代表グループによる発表会を行いました。さすがに選出されたグループだけあって、4グループとも立派なプレゼンでした。


 今年の夏は、東京で猛暑日の連続記録や真夏日の日数の記録が更新され、また、世界的に見ても観測史上最も暑い夏となりました。グテーレス国連総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代に入った」という言葉で世界に向けて警告を発しました。この環境問題ワークショップを通じて、少しでも環境問題に対する意識をより深めてもらえたらと思っています。






第26回 英国セミナー


7月23日(日)~8月7日(月)に、本校主催の英国セミナーが開催されました。このプロラムは、英語のコミュニケーション能力の向上と英国のライフスタイルを学ぶことを目的としています。2019年の夏以来、4年ぶりの実施でした。久々の開催とあって、高校2年生16名、高校1年生21名、中学3年生12名、総勢 49名の大人数が参加しました。

 生徒たちは2週間、イギリスのご家庭でホームステイをしました。滞在したのはロンドンからバスで西へ2時間ほどのところに位置するコッツウォルズ地方のグロスターという街です。


   街のシンボルでもあるグロスター大聖堂の近くにある学校の校舎で、午前中は英語のレッスンが習熟度別に行われました。授業の内容はその日の午後に行われるアクティビィに関連しています。また、最終日にホストファミリーを招いて行われるプレゼンテーション(自分が気になった日本とイギリスの違いについて)に向けて、生徒たちは少しずつ準備を進めました。

 午後は、毎日異なるアクティビティが行われ、楽しく英国について学ぶことができました。

 ホームステイ最後の夕方には「さよならパーティー」を開き、ホストファミリーへの感謝の気持ちを伝えました。翌日はロンドンに移動し、大英博物館を見学しました。
 盛りだくさんの内容でしたが、言葉や生活様式の異なる文化圏での経験を通して、生徒が一回り成長できるセミナーとなりました。






明治学院大学国際学部 助川哲也(ドリアン助川)教授による講演会
「小説『あん』で世界に問いかけた、生きることの意味」


 7月22日(土)、明治学院大学国際学部教授の助川哲也先生による講演会を実施しました。当日は、各学年の参加希望生徒に加えて保護者の方にもご参加いただきました。
 助川先生は「ドリアン助川」の芸名を持たれ、「叫ぶ詩人の会」を結成してCDアルバムを出したり、ラジオ番組で人生相談のパーソナリティー務めたり、多数の小説やエッセイを著したりするなど、多方面にわたって活躍されてきました。今回の講演では、ご自身の作品『あん』を通して「生きることの意味とは」、「“国際”って何だろう」という2つのテーマについてお話しいただきました。


 書名になっている“あん”とはどら焼きの中に入っているあんのことです。物語は、東京の町なかにある小さなどら焼き店「どら春」の店先に70歳を過ぎた手先の不自由な女性・吉井徳江がやってくるところから始まります。このあとストーリーは、「どら春」でアルバイトとして働くようになった徳江と若い雇われ店長・千太郎の2人を軸に展開していきます。一時は徳江のおかげで店の売り上げが伸びたものの、やがて徳江がハンセン病なのではないかという噂が広まって再び客足が遠のき・・・。
 かつてハンセン病患者は、科学的な根拠のない偏見によって社会から完全に隔離され、施設の中で一生を送らなければなりませんでした。『あん』は、理不尽極まりない仕打ちを受けてきたハンセン病患者を取り上げることによって人として生きることの意味を問う作品です。この作品は世界の22言語に翻訳されて各国で刊行されています。また、2016年には映画化されてカンヌ映画祭のオープニング上映作品にも選ばれました。本校の図書室にもDVDが入っているので、興味のある人は借りて視聴してみてください。
 講演のテーマについて深く考えさせられたことはもちろんですが、助川先生ご自身のこれまでの多彩な活動についてのお話からも学ぶことが多く、心打たれる講演でした。参加した生徒の皆さんのなかには、「学ぶ」とはどういうことか、考えを新たにした人も多かったのではないでしょうか。とても密度の濃い土曜の午後のひとときでした。

 




実話怪談会「魂laナイト」

 8月9日(水)、学生会館にて国語科主催の実話怪談会「魂laナイト」が開催されました。昨年度から始まったこの企画ですが、今年度は実話怪談師の牛抱せん夏さんをお招きしてお話をいただきました。昨年度に引き続き、在校生や保護者の方々、また怪談好きの教員など多くの参加者が集まりました。特に中学1年生の参加が多く、大妻多摩の新しい怪談文化を楽しんでくれました!
 怪談の内容は、牛抱さんが幼少期に実際に家族から聞いた体験談や、牛抱さんご自身が体験された京都の心 霊スポットでのお話など、様々なものがありました。「実話」であるだけに実際の光景が目に浮かぶようなお話で、じんわり背筋が凍るような怖さでした。

  舞台の装置に目を向けると、左右の目の色が違う人形が!実はこれ、時期によって目が変わる人形だそう・・・。怪談を聞きながら実物を目の前にできたのは貴重な体験でした。  また、今年こだわったのは舞台作りです。こちらは昨年度同様、有志の生徒を募集して夏休み期間を利用し て作成しました。今回のテーマは「和」! テーマに合わせたセットとして、井戸や墓石、障子などを生徒の手で一から作りました。リアルに見える障子も、実は割り箸と半紙からできています。迫力のある舞台セットは、牛抱さんのお話をより一層恐ろしく引き立ててくれました。有志のみなさん、ありがとうございました。







東北被災地訪問

 


 8月23日(水)〜26日(土)、3泊4日の日程で今年も「東北被災地訪問」が行われ、中1からOGまで21名が参加しました。本校が東日本大震災の被災地との交流を始めてから今年で12年になります。

 初日のメインメニューは「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」での震災学習。これまで岩手県の岩泉町を中心に被災地訪問をしてきたので、岩手県以外の震災遺構を訪問するのは今回が初めてでした。被災したときの状態がそのまま残されている気仙沼向洋高校の建物を見て、写真や映 像も豊富な伝承館でガイドの方に案内してもらい、生徒たちもメモをとって話を聞いていました。震災後10日程しての市立階上中学校の卒業式での卒業生代表の答辞の映像は涙なしには見られないもので、涙を流して映像に見入っている生徒も何人かいました。見学の最後にそれぞれが感じたこと、伝えたいことをポストイットに書き、館内に掲示されました。


   その後は岩手県陸前高田市に移動し、民泊の受け入れ家庭の方々との対面式にのぞみ、式後、各ご家庭に分かれていきました。今回は民泊を1日増やし、2泊3日としました。地元の方とのふれあいを通じてそれぞれの生徒が様々なことを経験し、感じ、考えた民泊になったことでしょう。

 2泊の民泊を終えての3日目は、最初に陸前高田の津波復興祈念公園にある津波伝承館を見学し、そのあとガイドさんの案内で震災遺構になっている気仙中学校の見学と防災学習をしました。午後は宮古市田老地区での防災学習をしたあとに、三陸鉄道に乗って岩泉町まで移動しました。

 最終日は龍泉洞見学と渓流釣り体験の予定でしたが、数日前の大雨で龍泉洞の見学施設が水没し、無期限の閉鎖となってしまったため、宮古市の浄土ヶ浜訪問に行程を変更しました。浄土ヶ浜も震災時には津波に飲み込まれたのですが、現在は景観も各種施設も復興して、真夏の青空の下、美しい景色を見せてくれました。

 東京に勝るとも劣らない暑さの中、生徒たちはよく頑張って行程をこなしてくれました。この4日間で多くの人々と交流し、様々なことを感じてくれたことと思います。





編集後記

 今号では夏休み中の活動を紹介しました。このほかにも様々な活動を通して、一人ひとりが成長できた夏休みだったことでしょう。2学期も文化祭、修学旅行、校外学習、部活動の新人戦など、たくさんの行事がありますね。しっかり勉強と両立させながら、充実した2学期にしていきましょう。