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【校長室より】3学期始業式 校長講話

更新日時:2023年1月11日

【校長室より】3学期始業式 校長講話

3学期始業式 校長講話

熊谷 昌子

あけましておめでとうございます。
皆さん年末年始はご家族と有意義にそして楽しく過ごせたと思います。
新型コロナの感染の勢いはなかなか治まる気配がありません。それに加えて今年はインフルエンザの流行も予想されています。今学期も気を引き締めて感染防止対策に取り組んでいきましょう。


さて、新年にあたり、「未来を変えるコツ」の話しをしましょう。
高校生というのは、自分がこれからどのように生きていくのか、真剣に考え、時に悩む時期ですよね。未来を変えられるコツがあるのであれば、やっぱり知りたいですよね。ある有名な心理学者がそのコツについて語っていますので、紹介します。
未来とは、 過去→現在→未来 という時間軸の上にあります。つまり過去に起きたことの積み重ねで現在の世界が造られていますし、現在行われていることで未来が造られていきます。あなたが今ここにいるのは、昔ご両親が結婚されたからでもありますし、あなたが中学入試で本校入試の合格を勝ち取ったからでもあります。過去に、親御さんが別の方をパートナーに選んだり、あなたが入試で力を発揮できずにいたら、違う現在が生まれていたわけですよね。ただ、その過去も、そのときには 現在だったんです。そして、未来は刻々と現在、そして過去になっていきます。未来というのは概念で、実在ではないです。つまり、冒頭にお話した未来を変えるコツとは、「今やることに全力を尽くす」 これしかないのです。

当たり前すぎて、拍子抜けしましたか?でも、当たり前のことをやり遂げるって、案外難しい事です。今を大切にして、今できることに全ての力を注ぐこと。今を大切に生きないと未来に花は咲きません。であるなるならば、何に向かって全力を尽くすのか、問題はそこ。「目的を定めること」。

こんな風に唱えるのは心理学者のアルフレッド・アドラーです。書店には彼の書籍が沢山並んでいますし、日本でも彼の著書を元にしたドラマがつくられたりしていますので、ご存じの方もいるかもしれませんね。心理学者としてはフロイトやユングと並ぶ三大巨頭です。ただその考え方はフロイトやユングと大きく違う点があります。フロイトは「何か原因があって結果がある」と考えます。つまり「問題となる原因を取り除けば結果が変わる」「取り除けなければずっと変わらない」というアプローチをするのです。私たちもよくこの考え方を利用しますね。成績が上がらなければその原因を探ろうとします。それに対してアドラーは「何か目的があってその結果をつくり出している」と考えます。つまり「辛い(あるいはつまらない)勉強から遠ざかるために、他の事(ゲームだとかTik Tokだとか…)に時間を費やして過ごすので、成績があがらない」と考えるわけです。そう言われると「確かに…」と思わざるを得ませんね。

人間は、多くの場合問題を何かのまたは誰かのせいにして生きています。それをアドラーの目的論は徹底的に否定します。「あなたは原因のせいにして甘えているだけだ」という感じです。厳しく胸に突き刺さる言葉ですが、「過去の原因にとらわれずに、本当はどうなりたいのか、どうしたいのか、今の自分の気持ちに向き合いなさい」とアドラーは言っているのです。
フロイトとアドラーどちらが正しいとか間違っているという話しではありません。課題解決のために視点を変えた別々のアプローチというだけだと思います。

私たちは原因論で物事を考えがちですが、原因がわかってもそれを取り除く努力をしなければ未来は変わりません。過去の出来事にとらわれすぎると身動きできなくなってしまう可能性さえあるのです。それに比べると、アドラー的なものの考え方では、自分の決意、自分の勇気ひとつで未来が変えられる気がしませんか。目的論で考えてみると今までになかった新しい発想、新しい行動が生まれるかもしれませんね。
目的が大事だ。目的がその人をつくるのだと主張するアドラーは、「人生の意味は、全体への貢献、他者への関心、協力」であり、「自分が得た知識を他者に役立てるために勉強するのだ」と言っています。これって大妻多摩が掲げるスローガン「私の力を、未来のために」と同じ事ですよね。文化や技術、経済、社会の発展に役立つこと、誰かに幸せや喜びをもたらすこと、感動を与えること、など、色々な役立ち方があります。伸び代を沢山持っている高校生の皆さんですから、自分がどのような形で役立てるのかわからなくても、決めていなくても問題はありません。そのかわり、それを見つけるために、それに気づくためにしっかりと学んでください。

なお、アドラーは自分と向き合いたい時や人間関係に悩んだ時に参考になる考え方もあらわしてくれています。興味を持った人はぜひ著書を読んでみてください。心のアンテナに反応した物事を深掘りする活動こそが「今やることに全力を尽くす」ことに繋がります。

最後になりましたが高校3年生の皆さん 、皆さんは今、目的をもって目の前の目標に向けて頑張っていますね。
大妻多摩での6年間の学校生活の中で、ここぞという場面でしっかり力を発揮できるよう努力を重ねてきた皆さんですから、是非自信をもって勝負の日に挑んでください。


皆さんにとってこの一年も充実した日々になりますように願って、始業式の言葉と致します。

 

 (感染防止のため、始業式はZoom配信で行われました)