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【校長室より】ヨシタケシンスケさんの「すごい宿題」

更新日時:2021年1月11日

【校長室より】ヨシタケシンスケさんの「すごい宿題」

コロナ禍を乗り越えよう! ヨシタケシンスケさんの「すごい宿題」

昨年5月からNHK Eテレで放映されていた「すごい宿題」の年末特集は、私が大好きな絵本作家ヨシタケシンスケさんの「すごい宿題」でした。これは昨年の緊急事態宣言が解除になった昨年6月のスペシャル版。ヨシタケさんがステイホーム中のこどもたちに出した宿題です。

 

まず、おうちの中で一人になれる場所を探してそこで絵を描いてください。一人ぼっちになれる場所です。誰かに見つからないようにこっそり描くのです。そしてその絵を誰にも見せてはいけません。絵ではなくても、丁寧でなくてもいいから今思っていることを描いてください。その絵を描き終わったら、すぐにクシャクシャにして捨ててください。その絵は誰も見たことのない、あなた(きみ)だけの秘密の絵になります。

 

ヨシタケさんの宿題はこういうものです。ヨシタケさんのイラスト付きの「宿題のやりかた」の映像を見ていて、「自分だけの秘密の絵を描いたら、絶対に人に見せたくなるに違いない」と思いました。ただしこれは大人になった私が考えることであって、実は私自身もこどものころに秘密の絵を描くスケッチブックを持っていました。もちろん今はそのスケッチブックは残っていませんが、私は毛虫やイモムシやクモをたくさん描いていたことだけは覚えています。その絵をもとにして粘土でイモムシを作って色を塗ってはニスで表面をコーティングしては自分の宝物にしていました。もしかしてそれを続けていたら今頃絵本作家になっていたかもしれません(!?)

 

ヨシタケさんの宿題の意味は、自粛期間のためのびのび自由に遊べないこどもたちに楽しんでもらう企画です。誰も知らない自分だけの秘密をもつことはとてもわくわくするものです。

 

ヨシタケさんがコロナ禍のこの一年間頑張った人たちに向けて描いた『あつかったらぬげばいい』は、全国の絵本屋さん3000人が投票した「絵本屋さん大賞2020を受賞しました。今まで比較的こども向けに描いてきたヨシタケさんでしたが、この本は赤ちゃんから会社員のお父さん、伴侶を亡くしたお年寄りに向けても描かれています。ヨシタケさんは『月刊モエ』一月号で「今までは割と反論されない、文句を言われない言い方や着地点をずっと探していたんですけど、この本では結構偏ったことを言っちゃって」と書いています。この一年、ステイホームや外出制限、リモートワーク、全面休校にと授業など、世界中の人たちがコロナに振り回されて肉体的にも精神的にもすっかり疲れ切っていた時に、『あつかったらぬげばいい』は「ヨシタケ式心を緩める絵本」としてベストセラーになっているということです。

「せかいがかわってしまったらじぶんもかわってしまえばいい」という言葉はまさにそのとおり、状況は悪化していても無理はしないで気持ちだけはゆったりしようよ」というヨシタケ流の心の解き放ち方だと感じました。

 

私が好きなのは「よのなかがみにくくおもえてきちゃったら」「ひかるがめんをみなきゃいい」。「ひかるがめん」とはコンピュータのディスプレイとかテレビのことだと思います。私たちは毎日のコロナのニュースに振り回され、リモートワークの画面にも疲れ切っているはずです。コロナも何も関係ない「へやがちらかっていたら」「とりあえずむきだけそろえばいい」は、実際にわたしがやっていることです。縦のものは縦、横のものは横というように向きを揃えるだけで整理したようになるから不思議です。ごちゃごちゃのデスクでも本や資料の向きを変えて気分を変えましょう。

 

「あつかったらぬげばいい」、「さむかったらきればいい」というメッセージは、辛いときには当たり前なことをすれば気持ちが楽になるよということなのでしょう。図書館に置いておきますのでページをめくってみてください。