【校長室より】子どもたちに寄り添う世界の女性首相たち
更新日時:2020年6月29日

子どもたちに寄り添う世界の女性首相たち
このたびの新型コロナ感染症の蔓延に対して、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、子どもを寝かしつけたあとに自宅の居間から「家にいましょう、強く、そして優しくなりましょう」と毎日のように動画を配信して国民に自宅での自粛生活を勧めたことはすでにお知らせしました。他国に先んじての国境封鎖、完全ロックダウンを決行し、感染を抑え込んだ首相の英断は効を奏して、早めの自粛解除にもつながりました。
首相の親身な対応は特に子どもたちに向けられ、ちょうどロックダウン中の4月初旬の復活祭(イースター)では、いつもなら子どもたちに卵を運んでくる「イースターバニー(うさぎ)」や、抜けた乳歯をコインに変えてくれる「歯の妖精」はエッセンシャルワーカー(医療従事者や介護者、薬局・スーパー店員などロックダウン中も働くことを認められる)なので、仕事が忙しくてみんなのところには来られないかもしれないと話しかけました。その代わりに卵の塗り絵ポスターを玄関に貼ってくださいというメッセージを大きな卵の塗り絵とともにFBに載せ、この子どもにもわかるエピソードは世界中に広まりました。
2019年12月に世界最年少の34歳でフィンランド共和国の首相に就任したサンナ・マリンは教育相のリー・アンデルソンと科学&文化相のハンナ・コソネンの三名で、子ども向けの記者会見を行いました。まず首相が新型コロナウィルスの現在の状況を知らせ、手洗いとソーシャルディスタンスの重要性について話したあと、「いつ学校に行けますか?」「いま私たちに出来ることは何ですか?」「外に遊びに行けますか?」「祖父母の家に行っても良いですか?」などの子どもからの質問に答えました。『クーリエ・ジャポン』は、三人の女性閣僚は子どもたちの質問に対して一つ一つ丁寧に答えている様子を報じています。
デンマーク史上二人目の女性首相として2019年最年少41歳で首相に就任したメッテ・フレデリクセンも、7歳から12歳の子ども向けのニュース番組の中で記者会見を行い、「外出してもよいですか?」「隔離対策の期間は延期されますか?」「誕生会をやってもいいですか?」などの質問に「お互いの距離を取りながら、森や自然のなかの散歩はとてもよいので是非続けてください」などと答えました。
2020年ベルギーの緊急臨時政府の首相となった45歳のソフィー・ウィルメスも義務教育担当大臣と児童担当大臣という女性閣僚とたびたびテレビに登場して、「どうして外で遊んではいけないの?」「夏休みは少なくなるの?」「おばあちゃんにはどうしてあげたらいいの?」などの質問に、母親が話しかけるようにやさしく答えたということです。
三人の子どもの母親でもあるノルウェーの59歳のエルナ・ソルベルグ首相は、育児をしながら仕事もいつも通りにしようと頑張りすぎない、完璧な保護者にならなくてもいい、親の注目を引きつけようとする子どもに気づいてあげて欲しいなど、自宅で育児と仕事をしなくてはならない母親に対して発信しました。さらに首相は子ども向けの記者会見を開き、新型コロナウェルスが怖くて当然だが、もっとも大切なのは感染しないこと、そのためにお友達に会わずに家にいてください、と話しかけました。
アイスランドの44歳のカトリン・ヤコブスドッティル首相は希望者に対して無償でウィルス検査を実施し、ウィルスの追跡調査システムを開発して死亡者数を抑え、おかげでロックダウンも学校閉鎖もしなくてすみ、ほぼ平常と同じ生活が出来たということです。学校を休校にすることによる社会的影響を重んじて、幼・小・中学は休校にせず、高校だけオンラインにしたそうです。
このように母親や子どもに寄り添う姿勢を表すことによって、新型コロナウィルス感染を最小限に抑え込んだこれらの国々の首相が、いずれも若い女性であることは注目に値します。2019年12月に発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数でも、上記の国々はどこも女性の政治参画が突出しており、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、6位ニュージーランド、14位デンマーク、27位ベルギーというように、153カ国のうち121位の日本との差を見せつけられます。
そしてこのたびのコロナ対策に関して、3月18日に国民に対して呼びかけたドイツのメルケル首相の演説は冷静沈着であり、その圧倒的な説得力はしばしば引用されています。メルケル首相は、第二次世界大戦以来のドイツに降りかかった試練として国民に結束を求め、医療従事者に対して感謝の気持ちを表すとともに、スーパーのレジ係や商品補充担当者に対しても、社会機能の維持に貢献しているとして謝意を述べました。ちなみにドイツのジェンダーギャップ指数はG7の中で10位と最高です。
これらの女性首相の活躍は各国大使館のHPで見ることができます。女性ならでは対応は、子どもたち、母親から高齢者、そして医療従事者などのエッセンシャルワーカーたちに対するきめこまやかな心配りによって、国民の心を1つにつなぎ合わせる役目を果たしたといえるでしょう。