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【校長室より】『わたしたちの家が火事です』

更新日時:2020年7月6日

【校長室より】『わたしたちの家が火事です』

『わたしたちの家が火事です』グレタ・トゥーンベリさんの主張

世界的なコロナ禍のせいでメディアに忘れられたかと思いきや、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、430日に新型コロナウィルスの影響を受けた子どもたちの感染拡大を防止するために、ユニセフ(国際連合児童基金)に10万ドル(約1070万円)を寄付したというニュースが伝わってきました。この10万ドルは、デンマークの「ヒューマン・アクト」という団体がグレタさんの活動を支援するために授与したものですが、グレタさんが全額を寄付することがわかり、「ヒューマン・アクト」もグレタさんの志に賛同して同額の10万ドルをプラスして、合計20万ドルがユニセフに寄付されました。この団体は、コロナ禍における子どもたちを守るプロジェクトも立ち上げたといいます。

 

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グレタさんは2019416日にフランスのストラスブールで行われた欧州議会のスピーチの冒頭で次のように話しました。

 

I want you to panic, I want you to act as if the house was on fire I have said the words before…” 

「私はみなさんにパニックになって欲しいのです。前にも言ったように自分の家が火事になったようにふるまって欲しいのです」

 

実はこのスピーチをする直前の16日にパリのノートルダム大聖堂が火災により燃え落ちたのです。フランス人だけでなく世界中の人々を悲しませる事件でした。グレタさんは、大気中のCO₂の排出量を減らし、環境破壊、大気汚染、海洋の酸性化をなくさない限り、文明の上に築かれた私たちの生活はあっという間に崩れ落ちると警告し、地球の危機を「自宅が火事になったら」と表現しました。

 

2018年グレタさんが15歳の時にスウェーデン議会前でたった一人で始めた「気候のためのストライキ」は若者の賛同を呼び、「未来のための金曜日」((Friday for Future)という学校のストライキにまで発展し、翌2019年には気候温暖化に反対して世界各都市でそれぞれ100万人単位の大規模な抗議行動になりました。

 

この彼女の行動に感銘したアメリカ人絵本作家ジャネット・ウィンター(Jeanette Winter)が描いたグレタさんの伝記がOur House is on Fire(『わたしたちの家が火事です』)です。シカゴ生まれ、ジョージア・オキーフと同じ美術学校で学んだウィンターはこの本を作った動機を次のように書いています。

 

When I heard her speeches, I felt Greta was speaking for me. And I’m eighty years old.

「彼女のスピーチを聞いた時、私はグレタが私の代わりに話してくれているように感じました。私は80才です。」

 

この本はグレタさんが始めたストライキがどのように世界中に広がっていったかを親しみやすい色合いとわかりやすい文章で描いています。一方でCO₂の排出量を削減しようというグレタさんの主張は、文明社会推進とは逆行することだということも事実なのです。人々が文明的で快適な生活をしようと思ったら、ガソリン車をやめて電気自動車に代え、グレタさんのように飛行機を使わずにヨットを使って移動しなくてはなりません。各国首脳の中にはグレタさんの言動を幼稚だと揶揄する人もいますが、大人になったときに、さらにその先も地球を存続させるために、いまのうちに持続可能な状態にしようというグレタさんの言動は、同世代の多くの若者の心を動かしています。



これはグレタさんのメッセージである「わたしの家は燃えています」を文字通り表現したYouTubeです。いつもの日常が始まろうとしている朝、家族は朝の支度をして食事の準備を始めます。しかしいつもと違うのは、部屋のあちこちから炎が見えたかと思うと、それは次第に大きな炎となって燃え上がります。家全体が燃えているのに、両親は顔色1つ変えず子どもたちを学校に送り出します。私たちが注意しないと、気が付かないうちに地球は炎に包まれているのです。あなたはこの状況にパニックにならずに平気でいられますか?コロナ禍は将来を担うであろう子どもたちにも襲い掛かっているのです。地球温暖化が引き起こす地球の危機はコロナ禍と無関係ではないということをグレタさんは行動で示しているのです。