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【校長室より】在校生のみなさんへ、元気に過ごしていますか?

更新日時:2020年5月11日

【校長室より】在校生のみなさんへ、元気に過ごしていますか?

五味太郎さんの「ガキたち、これはチャンスだぞ」

4月7日に政府より緊急事態宣言が出され、日本全国の小中高校は臨時休業に入りました。多摩中高では13日から「Web等による課題授業」を始めましたが3週間たっても東京や関東近県の感染者数は衰えず、緊急事態宣言は531日まで延長されることになりました。

 

zoomでのホームルームの様子

zoomでのホームルームの様子

 

みなさんはGWでも外出もできず、おうちの中でスマホやタブレットの画面を見る授業に疲れを感じている人も多いのではないでしょうか。新学期が始まっても登校できず、同じクラスの同級生とも顔を合わさないまま始まった新学期以来、ストレスもたまってきているのではと心配しています。やむなく外出するときはマスクをして人が集まる場所には行かないようにしましょう。外出後には手洗いやうがいをしてコロナウィルス感染から自分を守りましょう。規則正しい健康な生活を送ることは自分の心と体を守るだけでなく、家族の健康を維持するためにも大切なことです。

 

今のみなさんの不安はどのようなことですか? 学校に行けない、クラスの友達に会えない、屋外で思い切り体を動かせない、部活ができない、家族と外食をしたり旅行ができない、遊園地に遊びに行けない、ライブに行けないなどですか?大学入試が来春に迫った高3のみなさんにとっては受験準備しかありませんね。突然世界中を襲ったコロナ禍以前には当たり前にできていたことが一切出来なくなった今、コロナウィルス感染はいつ収まるのだろう、学校はいつ始まるだろうという不安が心の片隅にいつもあるのではないでしょうか。テレビでも毎日ウィルスのことばかり、番組と言えばリモートか再放送、子どもだけでなく日本中そして世界中のすべての人が置かれたこの環境に不安を感じているのは確かです。

 

でも世界中には水も食料も不足し、学校に行けない子どもたちがたくさんいることを考えてみてください。彼らの元にもこのコロナ禍は襲いかかっているのです。日本ではすべての子どもたちに教育の機会が与えられ、住まいや飲み水や食料は豊かに確保されています。例えば戦争中の自粛を想像してみても、現代人はモノのあふれた豊かな生活が当たり前だったからこそ、いつ終わるのかもわからない生活の大きな変化に当惑するのです。

 

みなさんが受けている「Web等による課題授業」では一方的な受け身の講義ではなく、自分の頭で考える主体性と思考力が養われています。新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」が知らず知らずのうちに身についているのです。この勉強法に慣れていれば授業が再開した後でも自分で問いを見つけ、その解答を見つける習慣が自然に身についてくるはずです。家族のみなさんといつも家の中にいることはある意味ストレスかもしれませんが、一緒にゲームをするとか、簡単な料理をするとか、お手伝いをするなどの良い機会になります。マスクが買えないなら手作りでマスクを作るのはいかがでしょう。インターネットには「巣ごもり生活」のさまざまな情報が満載です。

 

ここまで長々と書いてきましたが、今わたしたちが置かれたこの状況に対して絵本作家の五味太郎さんが発したメッセージが私の心に響きました。

 

社会全体が不安に襲われている中で、五味さんは「逆にその前は安定していた?コロナ禍じゃなかったときは、居心地がよかった?」と問いかけています。「普段から感じている不安が、ひるがえってコロナに移っているだけじゃないかな。もっと言えば、不安とか不安定こそが生きているってことじゃないかな」と言います。さらに五味さんは「今みたいな時期こそ、自分で考える頭と、敏感で時折きちんとサボれる体が必要だと思う」「乗り越えていくというより、前よりよくしましょうよ」「ガキたちにはこれがチャンスだぞって言いたいな。心も日常生活も、乱れるがゆえのチャンス。」

 

このように断片的に五味さんの言葉を引用するのはご本人に失礼なので、きちんと本文を読んでいただきたいです。(五味太郎さん「コロナ前は安定してた?不安定との向き合い方」、その他で朝日新聞Digitalなど)

 

学校再開について、親も子もそして学校の先生たちも政府や自治体の判断に振り回されています。これに対して五味さんは突然の横並びに反対し、「やっぱり日本人って、誰かが命令してくれるのを待っているよね。その方が楽というか、やりやすいのかな」と疑問を呈しています。ただ東京都のように感染者数が増加している場所ではまず健康を保つことが第一ですので、公共交通機関を使って登校する生徒の多い私立中高ではこの措置はやむをえません。五味さんは考えることはとても面白いことなのに、今の子どもたちは試験や資格や卒業証書のために勉強をすることに疲れて、自分が何がしたいのかわからなくなってしまうことに警鐘を鳴らしているのです。さらに子どもの幸せを考える親に対しても、親の期待に添いたいと思うあまり「忖度する子ども」を育てないよう頑張らなくてはならないと言っています。

 

五味さんは。現在の不安と不安定が渦巻く社会に対して「今こそ本当に何がしたいのか向き合うチャンス」だという発想の転換の一つを提供してくれます。現在の状況が一日でも早く終息し、今までのような当たり前の生活が戻ることを祈るばかりです。