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【校長室より】「植物に学ぶ生存戦略・山田孝之」

更新日時:2020年2月3日

【校長室より】「植物に学ぶ生存戦略・山田孝之」

「植物に学ぶ生存戦略・山田孝之」今、NHKがおもしろい!



「香川照之の昆虫すごいぜ!」や「みんなの筋肉体操」などNHKには興味深い番組がありますが、「植物に学ぶ」は今までに見たことのない映像と内容の番組です。

タイトル名に「山田孝之」とあるように、話す人・山田孝之が、植物が子孫を残し生き延びていくための戦略を人間の行為にたとえて、実に真面目くさって解説する番組です。植物のまれに見る美しい映像があるかと思うと、解説に使われるのはアナログなホワイトボードと写真やイラスト。山田が語りかけるNHKの林田理沙アナウンサーも山田の荒唐無稽な説明に対して吹き出しもせず、「そうですか」「ああ、そうなんですね」などと真面目に相づちを打ちます。



1話10分、3話からなるこの番組は、林田アナウンサーのにこりともしない「こんばんは」に始まり、山田の解説と教訓のあとに、唐突に林田アナウンサーの斜めポーズの「さようなら」で終わります。



例えば先日の「カラスウリ」では、受粉のため日没後に白いレースのようなひらひらした花を咲かせて蛾をおびき寄せると説明があったあとに、ジュディ・オングが登場してひらひらした蝶のようなあの衣装で「魅せられて」を歌います。過去のVTRか合成かと思っていたらなんと本物のジュディ・オングさん。山田さん、林田さんとともに登場人物の一人としてカラスウリの生態の実証となるのです。

また「キャベツのしたたかな戦略」では「こりん星からイチゴの馬車でやってきたゆうこりん」が、なぜこの出自を封印して小倉優子としてママの代表のようなCMに出るようになったのかが語られます。タンポポの解説では、プーチンを例に出し、タンポポとかプーチンという名前が彼らの生存戦略であり、「ポ」とか「プー」とか「チン」というかわいい音にだまされてはいけない、と山田は大真面目に話していました。



ジュディ・オングにしてもゆうこりんにしても、中高生が往年の彼らを知らないと思いますから、夜10時50分から始まるこの教養(?)番組が小中高生対象かどうかは疑問です。なにしろこの「魅せられて」は1979年、今から41年前のレコード大賞受賞曲なのですから。

ネットでじわじわ知られてきたこの番組を表すのに必ず使われるのが「シュールな」という表現。このシュールという表現は「現実離れした」とか「不思議な」という意味で使われているようですが、超現実主義を表すシュールリアリズムとは似ているようで意味が違います。シュールリアリズムは正しくはフランス語の「シュルレアリスム」。フランスの文学者アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」(1924)に端を発した精神分析、絵画、映像、また、哲学などの幅広い思想運動をさします。



今、多摩キャンパスの紅梅は美しい花を咲かせていますが、梅の花はその美しさと香りでハチを引き寄せ、受粉してもらうことによって秋には実をつけます。校舎の周辺はあらゆる植物の宝庫です。目立たない植物ほどその生存戦略はしたたかで、他の植物に負けまいと種を守るための方策を本能的に身につけているのかもしれません。植物の人間臭さを林田アナウンサー相手に熱っぽく語る山田は植物が乗り移ったのではないかと感じさせます。映像はあまりに妖しく美しくシュールであり、山田も林田アナウンサーの関係もシュールなのです。