【校長室より】オーストラリア森林火災
更新日時:2020年1月13日
アマゾン森林火災、北米シアトル近郊の森林火災に並んで、2019年9月ごろからオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州やビクトリア州で大規模な森林火災が起き、今年に入ってもますます拡大し、犠牲者25人、家屋焼失1500棟、焼失面積500万ヘクタールの被害が出ているといいます。
シドニー大学の生態学者によれば、これまで5億匹の哺乳動物、鳥類、爬虫類、昆虫が焼死したということでしたが、世界自然保護基金(WWF)は、コアラ、やカンガルーなど約10億匹の命が失われたと報告しています。昨年11月には350頭のコアラが焼死したというニュースを見たばかりだったのですが、コアラの生息地として知られているニューサウスウェールズ州では3万頭弱のコアラのうち8000頭が犠牲になったと1月6日のハフポストは伝えています。コアラの主食であるユーカリの葉は油分を多く含んでおり、それが火災を拡大したとも言われています。コアラ一種に限れば、全個体数30万頭の約30パーセントが失われたというニュースも目にしました。
毎年森林火災が起きるオーストラリアでは、地上の草木が燃え始めるとコアラは木の高いところをめがけて登り、火災が収まるのを待つのだそうです。鳥類は遠くに飛び去り、小型の哺乳類や爬虫類や昆虫は倒木の下や、地中の穴に避難して炎が過ぎ去るのを待つということですが、今年の火災は気候変動の影響で大火災になり、地上全体を燃やし尽くしたため酸素が欠乏し、地上・地中に限らず動物たちは窒息死した可能性があるといいます。カンガルーなどの跳躍力のある大型動物は安全を求めて熱帯雨林に避難することが多いのですが、土地全体が極度の乾燥状態だったために熱帯雨林でさえ焼き尽くされました。
オーストラリアには他の大陸では目にすることがない固有種が1350種あるといいますが、世界の絶滅危惧種の9.1パーセント、380種の固有種が保護下にあるということです。大妻多摩中学の2,3年が参加するグローバル・キャリア・フィールドワークではカランビン自然動物保護園(Currumbin Wildlife Sanctuary)を訪問しますが、そこではコアラ、カンガルー、ウォンバット、ワラビーなどの有袋類やカモノハシのような単孔類、エミュ、ヒクイドリなどの飛ばない鳥やディンゴ、タスマニアデビル、ハリモグラのほか、パイソン、クロコダイルなどの爬虫類がオーストラリア固有種が保護され、観察することができます。ハイウェイを車で走ればカンガルーやコアラ横断の標識が見られるオーストラリアでこの大規模火災が収束するのはいつのことでしょうか。気候変動が原因で起きる世界各地の大規模火災。刻々と入ってくるオーストラリアの動物の犠牲と生態系の変化に心を痛める毎日です。
以下、カランビン動物保護園の動物たちです。