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【校長室より】地球温暖化はなぜ阻止しなくてはならないのか

更新日時:2019年10月14日

【校長室より】地球温暖化はなぜ阻止しなくてはならないのか

パンダマークが目印のWWF (World Wide Fund for Nature 世界自然保護基金)によれば、地球温暖化とは、大気中にある二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガスが増えすぎて地表面にたまり、気温が上昇するとともに地球全体の気候変動が起こることを指します。18世紀の産業革命以降、人間は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やして多くのエネルギーを得てきましたが、大気中に排出される二酸化炭素が急速に増加して地球温暖化が起きました。しかし、科学の進歩に伴って地球温暖化に対する理解が進んだのは1970年代のこと、1985年に温暖化対策の世界会議が開かれたのをきっかけに国連などでも対策の会議が開かれるようになりました。最近の日本の夏は高温と異常気象に悩まされますが、エアコンや冷蔵庫の冷媒に使われるフロンや生ゴミ・湿地・水田・下水などから出るメタンなども地球温暖化を加速させる原因となっています。地球温暖化に対して何の対策もせずにこのまま経済活動を続けると、100年後には4°前後の気温上昇が予測され、地球規模で深刻な被害がもたらされるということです。

 

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書はこのまま気温が上昇し続けると、次のような環境破壊が起きると指摘しています。

 

1 気温の上昇や洪水などの異常気象による被害が増加

2 珊瑚礁や北極の海氷などのシステム破壊とマラリアなどの熱帯の感染症の拡大

3 作物の生産高の地域的減少

4 干ばつによる水資源不足による食糧不足

5 広範囲における陸域や淡水の生態系の変化と生物多様性の損失

6 大規模な氷床の消失と、それに伴う海面水位の上昇

7 多くの動植物の種の絶滅と世界の食糧生産の減少

 

地球温暖化によって海水が膨張することにより、過去100年間で世界の平均海水面は20センチ近く上昇したといいます。南太平洋の島国によっては国土全体が海に沈んでしまう危険が生じます。また世界の人口の6分の1を占める、氷河や雪解け水に生活水を頼っている人々や乾燥地域に住む人々は、生活水を得にくくなります。氷河が溶けることによって大規模洪水が起きる一方で、氷が消滅することによって下流の地域で水不足が起きる可能性も出てきます。異常気象により洪水の浸水や水害が増え、都市部でも極端な降水により洪水や地盤沈下が起きると同時に水不足や干ばつも起き、経済に打撃を与えるとともに生態系に異常をきたすことになります。IUCN(International Union for Conservation of Nature and National Resources 国際自然保護連合)によれば、地球温暖化によって絶滅に瀕する種は2000種近くに及ぶということです。農作物への打撃も少なくありません。食料の生産性が下がると経済格差の拡大も相まって飢餓状態に陥る地域が増え、伝染病の蔓延により被害が増大します。

 

仮に気温上昇を2°未満に抑えられたとしても、今となっては温暖化の影響は避けられないところまできています。そこでWWFでは省エネルギーによって必要なエネルギーを大幅に減らし、太陽光や風力などの天候によって変動する電源を用いる自然エネルギー100%の社会を目指すという目標を立てました。電気自動車、燃料電池自動車の利用、自然エネルギー中心の電力供給、余剰電力からの水素製造などを提案しています。

 

1997年に定められた「京都議定書」の後継となる「パリ協定」は、2020年以降の気候変動問題に関する国際的枠組みのことで、2015年にパリで開催された「国連機構変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されました。その結果パリ協定には温室効果ガスの主要排出国を含む多くの国が参加しています。

 

パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2°Cより低く保ち、1.5°Cに抑える努力をする」ことと「できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をそれ以上上がらないようにし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と森林などによる吸収量とのバランスをとる」ことを世界共通の長期目標に掲げています。京都議定書では排出量削減の義務が先進国に限られていたのに対して、パリ協定は途上国を含むすべての参加国と地域に2020年以降の温室効果ガス削減・抑制目標を定めることを求めています。

 

9月23日にニューヨークで開催された国連温暖化対策サミット(UN Climate Action Summit)では、グレーテス国連事務総長は二酸化炭素などの温室効果ガスを2030年までに45%削減という事前目標を挙げて削減を求め、パリ協定締結国185カ国のうち77カ国が50年には実質排出ゼロにすることを表明しました。しかし、主要排出国のうち中国、インド、アメリカ、日本は削減の具体的な道筋を示していません。事務総長は20年よりあとの石炭火力発電の新設中止も求めていましたが、日本は先進7カ国(G7)で唯一、石炭火力発電の新増設計画があるといいます。(『朝日新聞』)

 

“How dare you?” 「よくもそんなことが出来ますね」 16歳のスウェーデン環境活動家、グレタ・トゥンベリさんの怒りの矛先は、このような温室効果ガスの主要排出国の政府代表に向けられたことは明らかなのです。地球温暖化に対して何の対策もしなければ、地球は絶滅に瀕し、その被害を受けるのは子どもたちだということをグレタさんは訴えているのです。