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【校長室より】『ライオンキング』、サークル・オブ・ライフ

更新日時:2019年8月19日

【校長室より】『ライオンキング』、サークル・オブ・ライフ

『ライオンキング』、サークル・オブ・ライフ

「ナーンツィゴンニャーバギギババ」(“Nants ingonyama bagithi Baba”、「ライオンが生まれたよ」)という祈祷師ラフィキのスワヒリ語の高らかな歌声から始まる『ライオンキング』、アニメ、ミュージカルで誰でも知っているディズニー作品の超実写版の映画が上映中です。プライドロックの動物たちの王であるムファサとその妻サラビの息子であるシンバの誕生を告げるオープニングの場面、おでこに王子のしるしをつけられたシンバがラフィキに抱き上げられて動物たちにお披露目され目をぱちくりさせる感動的なシーンです。



英語 日本語訳
From the day we arrive on the planet この地球に生を受けた日から
And blinking, step into the sun      太陽の光はまぶしく
There’s more to see than can ever be seen 目に見えるもの以上のもの
More to do than can ever be done できること以上のこと
There’s far too much to take in here はるかな神秘
More to find than can ever be found 奇跡が起こる
But the sun rolling high          太陽は高く輝き
Through the sapphire sky         サファイア色の空を越えて
Keeps great and small on the endless round 永遠の生命が刻まれる
   
It’s the Circle of Life 生命の円環
And it moves us all           すべての生物に流れるいのち
Through despair and hope     絶望と希望
Through faith and love 信念と愛
Till we find our place 自らの場所を見つけるまで
On the path unwinding 果てしない道
In the Circle              生命の円環
The Circle of Life            生命の円環

 



エルトン・ジョン作曲、ティム・ライス作詞によるあの有名な「サークル・オブ・ライフ」の歌詞です。(意訳)

 

誕生のその瞬間からシンバにはこの王国を引き継ぐ運命が課せられているのです。しかし、王の座を狙うムファサの弟スカーと彼を崇めるハイエナの群れの悪だくみにより、スカーにおびき寄せられたシンバがヌーの群れに襲われ、息子を救おうと駆け付けたムファサの死によってシンバの運命は大きく変わるのです。父の死は自分に責任があるとスカーに告げられ、王国を追われたシンバはイボイノシシのプンバアとミーアキャットのティモンに助けられ、彼らとともに「ハクナマタタ」(「どうにかなるさ」)の現実逃避した日々を過ごします。どこからどこまでもアニメの『ライオンキング』と同じ筋書き(当然ですが)。でもムファサはじめシンバもキリンもフラミンゴも本物の動物と見間違えるばかりのリアルさ、しかしこれらの動物たちもアフリカの広大な風景もCGというから驚きです。彼ら動物たちは英語をしゃべったり歌ったりするのを見ると不思議な気持ちになりますが、それも最初だけで、ストーリーに引き込まれていきます。シンバの幼馴染のナラによって現実に引き戻されたシンバは、スカーによって支配され荒廃した王国に戻り、彼を倒し父の築いた王国を奪回し、生命は引き継がれるという結末です。

 

国王が弟により王座を奪われ、王妃は弟である新国王の妻になるが、国王の息子は父の死に不信を抱き、叔父である現国王に復讐するというのはイギリスの劇作家シェイクスピアの『ハムレット』ですが、ハムレットは、弟に毒殺されたと告げる父親の亡霊に出会い復讐を決意するのです。この大筋はまさに『ライオンキング』と同じ。ただし、『ハムレット』はほとんどの主要登場人物が死んでしまうという「悲劇」ですが、『ライオンキング』のテーマは「すべての命は引き継がれる」という自然の摂理です。それがよくわかるのは、「ハクナマタタ」と歌いながらのんきに暮らしているシンバの毛の一部が風に舞い、キリンの食べた葉っぱと共に消化され、糞となってフンコロガシに転がされているうち割れ、その中にあった毛が再び空中を舞っているのをラフィキがたまたま見つけ、彼女はシンバが生きていることを知るという場面です。またこの映画でも最近のディズニー映画での女性の役割を反映してか、危険を冒してシンバを探しに出かけるナラの勇気、スカーに反抗して決起するサラビ率いる雌ライオンたちの活躍がシンバをプライドロックの王として復活させるのです。

 

『ライオンキング』はもともとは1994年製作のディズニーアニメーション映画。この映画がジュリー・テイモア演出、ハンス・ジマー音楽、エルトン・ジョン作曲、ティム・ライス作詞で1997年にブロードウエイミュージカルとなり大ヒット、舞台上にプライドロックの大きな岩山を作り、仮面や衣装によってアフリカの動物や植物を表したテイモアの演出は1998年のトニー賞ミュージカル賞を受賞します。シンバの誕生が告げられ、動物たちが劇場のあちこちから姿を現し、劇場全体がアフリカのサバンナに変わる冒頭場面は衝撃的ともいえる感動で、何度見ても素晴らしいものです。超実写版という今回の映画は確かにどこをとっても素晴らしいのですが、ミュージカルを初めて観たときほどの感動は得られなかったというのが本音でしょうか。ミュージカルのムファサが死んだときの雌ライオンたちの嘆き、夜空に父の姿を見出すシンバの姿など感動的な場面がないのですが、動物の生態、アフリカの広大な土地、シンバとスカーの死闘を見るだけでも一見の価値があります。