大妻多摩中学高等学校

第19段

大妻多摩中高英語科田辺によるレビュー欄②です。

「線文字Bを解読した男」 アンドルー・ロビンソン著 (創元社)

ヨーロッパ最古の文字を解読したマイケル・ヴェントリスの簡単に伝記です。20世紀中期、現在ではギリシア語の一種として知られている線文字Bを、言語学者でも考古学者でもない、建築家であるヴェントリスが数少ない手懸かりと直感によって、当初は何語であるかさえ分からないまま解読を始め、最終的にギリシア語の一種として解読に成功するまでの道程を簡単に紹介しています。

線文字Bと呼ばれる通り、線文字Aも実際に存在し(そちらは未解読ですが)、古典ギリシア語とは表記がまるで違い、実際は表音文字ですが当初は表意文字として見られていたように非常に特殊な記号で、またエジプトのヒエログリフとは違いロゼッタストーンのような解読の手懸かりもないまま、数少ない粘土板に記された記号の比較や分析から未知の言語を解読する作業は圧倒されます。しかもそれを自分の仕事ではなく、趣味として。

実は僕も学生時代にホメロスを古典ギリシア語で読んでいたので、線文字Bには関心はありましたが、解読の作業を説明されて驚きました。無から有を生み出す作業は困難だったことでしょう。
また表記の仕方にも当然間違いやずれがあるという事実も僕は納得しましたが、一般には理解が難しいことでしょう。現在ではある1つの言葉(単語)は1つの綴りしかありませんが、そうなったのは実は正書法が確立された近代以降で、それ以前は随分自由な書き方が存在しています。僕は学生時代に学んだ中世フランス語で同じ単語にいくつかの綴りの種類があることに最初戸惑いました。
外国語、特にヨーロッパの言語は学べば学ぶほどお互いに密接な関連があり、理解が深まります。将来第2、第3外国語を学びたいと考えている人や、ヨーロッパ古代史に関心がある人にお奨め。世界には未だ解読されていない言語があり、それを解読しようと日夜努力を重ねている人たちが存在することも理解出来ます。

英語科 田辺