大妻多摩中学高等学校

第62段

 国語科の小野による本の紹介コーナーです。第6回は、二畳庵主人(にじょうあんしゅじん)/加地伸行(かじ・のぶゆき)著『漢文法基礎 本当にわかる漢文入門』(講談社学術文庫)です。

 その筋では名著の誉れが高い古典的参考書の文庫化がブームのようで、高田瑞穂著『新釈現代文』(ちくま学芸文庫)、本コーナーの第1回目でも紹介した小西甚一著『古文の読解』(ちくま学芸文庫)に続いて、今度は漢文の参考書『漢文法基礎』が刊行されました。この本は、今から30年以上も前にZ会(増進会出版社)から、「二畳庵主人」の著者名で出版されたものです。二畳庵主人の正体は、大阪大学名誉教授の加地伸行氏。当時は、本書の「はじめに」にも書かれているように、「いろいろうるさい問題があるので、覆面してい」たため、本名は伏せられていましたが、数年前に本人が正体を明かしたので、今回は「二畳庵主人/加地伸行」名義で出版されています。

 加地氏は、中国哲学史が専門の著名な研究者ですが、本書は、小西氏『古文の読解』同様、優れた研究者が真剣に書いた学習参考書なので、たいへん高い水準の書物になっています。
私がこの本を読んだのは、実は教師になってからなのですが、学生時代、あまり真面目に漢文とつき合っていなかった私には、たいへんためになる本でした。助字一つ一つの語感、文の構造などが丁寧に説明してあって、授業準備・プリント作成などの際にたいへん参考になりました。漢文の学力は、生徒だけでなく教師も昔より確実に落ちているでしょうから、現在では、ひょっとすると、高校生・受験生よりもまず若い国語教師こそが読むべき本であるかもしれません。

 本のカバーには「大学入試攻略などは当たり前、第一人者が気骨ある受験生、中国古典を最高の友人にしたい人へ贈る本格派入門書」といった宣伝文句が躍っていますが、実際、600ページというかなりのボリュームの本書(これでも、底本にあった最後の二つの章を削除してあります)をじっくり読んで勉強すれば、相当しっかりした漢文の力が身につくはずです。長いし、回りくどい説明を読まされていると感じる箇所もいくつかあり、漢文の勉強や読書そのものに慣れていないと相当骨が折れるでしょうが、飛ばしたりせずに丁寧に読み進めることが大切です。

 ただし、残念ながら、高校3年生にとっては、刊行が少々遅かったかもしれません。今から読み始めるのを躊躇させるだけのボリュームが、この本にはあります。2年生ならば、今から読めば相当実力をつけて受験生生活に入れるかもしれません。もっとも、最後までしっかり読み通せればの話ですが。

 現在世に出回っているお手軽な(全部がお手軽だという言うつもりはありませんが)参考書に飽き足りないという骨のある高校生が読むのに相応しい優れた古典的学習参考書が、今後も多く復刊されることを望みます。さしあたり、リクエストを一つ。松尾聰氏『古文解釈のための国文法入門 改訂増補』(研究社)が、講談社学術文庫などで復刊されると、非常に嬉しい。

 私がお薦めする参考書については、『プレジデントファミリー』2010年10月号で、自分で言うのがちょっと恥ずかしい題名の特集記事の中で何点か紹介しています。よろしければご覧下さい。

                                                                      国語科 小野