大妻多摩中学高等学校

第87段

みなさんは「タンカ」をご存知でしょうか?「タンカ」とはチベット仏画のことです。(写真参照)
2月15日(火)、かねてから注文していた「タンカ」がようやく届きました!縦150センチ、幅60センチほどのとても大きな「タンカ」です。

 私もこの「タンカ」を注文する際に初めて知ったことなのですが、よく「この絵で商売繁盛」「開運の仏画」など、それを買えば何かラッキーな現世利益が起きると宣伝する商品がありますが、「タンカ」(チベット仏画)はそのような現世利益を追求するものではないのです。
たとえば観音菩薩の「タンカ」ですが、“慈悲の化身、観音菩薩”と聞くと、この「タンカ」を飾れば「御利益とし、観音菩薩さまから慈悲心が与えられるのだ」と考えがちですが、そうではないのです。毎日「タンカ」を見ることによって「自らの内面に慈悲心を見い出すよう努力し」、「慈悲心を常に忘れない、と心に刻む」ために「タンカ」を飾るのです。タンカを見るたびに、各仏の持つ功徳を自分に重ねて思いを馳せる。それが「タンカ」の使い方のようです。もちろん、純粋に美術品としての価値もあるものです。

 これを手にするまではいろいろとありました。
私は2007年末にチベットのラサを訪れ、その約3ヵ月後の2008年初めにチベット暴動が起きました。ちょうどそのころ、オーダーを受け「タンカ」を製作するチベット人絵師のことを知り、「タンカ」を注文しました。中学生の頃からチベット仏教にも興味を持っており、またチベットで仏画を見て帰国してきた自分にとって、毎日仏様を眺められる「タンカ」を購入したいと思ったのは自然な流れでした。

この特注の「タンカ」を製作してもらう前には、インドのダラムサラ(チベット亡命政府の置かれている場所)にあるメン・ツィー・カン(チベット医学・暦法研究所)に自分の生年月日と出生地を知らせ、自分の主尊を診断してもらいます。私の主尊は「金剛手」で、これを中心の仏像とし、周囲の脇侍として左上から時計回りに「ダライ・ラマ法王」、「お釈迦様」、「白ターラー菩薩」、「観音菩薩」、「文殊菩薩」を配してもらうようにお願いしました。あとは表装の色やサイズを決めます。
しかし、私の前には8人も完成を待っている人がいたり、途中でいろいろなトラブルや手違いがあったりなどで、結局、自分のもとへ「タンカ」が届くまでに3年もかかってしまいました。のんびりと完成を待つつもりでいたので、それに文句を言うつもりは全くありませんが、ここに至るまでにいろいろなことがあったため、ようやく自分の手に「タンカ」が来たことを思うと感慨深いものがあります。

 タンカ絵師のジャムガさんはチベットのカム地方(現在は中国の雲南省にある)の出身で、同郷の奥さんが妊娠したときに子供の将来を考えて、ヒマラヤを越えてインドへ亡命してきました。身重の身体でヒマラヤを越えるのは大変辛かったそうです。今はその子も小学校4年生で、下に4才の男の子もいます。「タンカ」を書くことで収入も安定し、「タンカ」の修行も進み、今ではジャムガさんは大きな寺院の「タンカ」を書くこともあるそうです。中国によってほとんど破壊されたチベットの伝統文化を、こうやって受け継いでいるのです。注文した「タンカ」は決して安いものではないのですが、少しでもチベットの人の役に立てればと思ったことも、注文を決めた理由の一つです。
これから毎日タンカを眺め、自省し、チベットの人びとへ思いを馳せるつもりです。
ちなみに2月15日はお釈迦様が入滅された日でもあり、不思議な縁も感じました。

タンカ

国語科 矢澤