大妻多摩中学高等学校

第92段

“ 異文化体験は最後まで ”

ごきげんよう。オーストラリア、ブリスベンの伊藤です。東京は、梅から桜の開花が待たれる時期に移りつつある頃でしょうか。そして間もなく卒業式ですね。毎年、桜前線の北上とともに春がやってくるのが、今年は懐かしく思われます。こちらでは、少しずつですが夏の終わりを感じるようになってきました。今月初めに暑い日が2~3日続きましたが、その後急に吹く風が涼しくなり、朝晩は少し肌寒く感じられるようになりました。日没も早まり、春ならず秋の足音が聞こえてきそうです。

帰国を間近にした先日、またまた大変な経験をしました。その日は大学まで車で行こうと、最寄り駅の駐車場に車を止めたところ、エンジンがかからなくなってしまったのです。朝乗ったときにバッテリーランプが点灯していたので、駐車場に着いて車を止めた後、確認しようとキーを回したのですがエンジンがかからなくなっていました。日本のJAFにあたるRACQというロードサービスに加入していたので、早速携帯から電話しました。私は個人的にはこのような経験が日本でもなかったので、生まれて初めて、しかもそれが海外ということで、かなり緊張していました。でも、幸い電話に出たおばさんらしき人の英語は、オーストラリア訛りの少ない聞き取りやすい英語だったので、落ち着いて現在地を伝えることができました。そして待つこと、わずか6~7分でRACQと書かれた作業車が到着しました。颯爽と出てきた2人が手際よくバッテリーを交換してくれたので、これで安心と思ったのですが、“Power is too small.  You need a wrecker.”のような内容のことを言われ、結局レッカー移動で地元の修理工場まで運ばれることとなってしまいました。そして2人は携帯からレッカー車を呼ぶと、ここで待つようにと伝え、あっという間に去って行きました。あまりの手際の良さに驚くと共に、ボンネットを開けた状態で道路脇に止められた車のそばで呆然と wrecker を待つことになりました。

丁度正午過ぎの暑い時間帯だったので、車のそばにあった街路樹の木陰に腰を下ろし、通行人の好奇の目にさらされながら待つこと1時間弱、目の前に現れたのは想像していたよりもはるかに大きいレッカー車(トラック)でした。サングラスをかけた粋なおにいさんが、これまた颯爽と飛び降りできて手際よく車を積み込みました。この後、彼と一緒にレッカー車で住んでいる地元のメカニックに運ばれることになりました。途中、車内では車好きのこのおにいさんと日本車の話で盛り上がり、いつもよりずっと見晴らしの良い wrecker の座席から見える車窓の景色をのんきに楽しみながら1時間かけて修理工場まで戻りました。レッカー移動費は$95で、その場で支払いました。

結局、修理費にさらに$430を支払うことになり、翌日の午後になってようやく中古で買った愛車は戻ってきました。「あと一月弱だというのに」という気持もありましたが、生まれて初めてさせてもらった様々な体験に、なぜか損をした気持も少なく思えました。最後まで異文化体験は続くだろうし、帰国すればこれも貴重な思い出になるのでしょう。

家の前から撮った夕景、この日は満月がきれいでした
【写真:家の前から撮った夕景、この日は満月がきれいでした】

英語科 伊藤