大妻多摩中学高等学校

第189段

『おもてなし』

2013tsurezuregusa001 今月の初めから高校2年生の修学旅行の引率で奈良・京都へ行ってきました。高校2年生の修学旅行は11年ぶりでした。学年から離れて久しく、最近は海外への引率や仕事での渡航があったので、国内での引率は本当に久しぶりでした。忙しくて慌ただしい中を出かけたため旅行気分もなく、さらにHPのリニューアル時期と重なってしまい、新幹線や近鉄特急、ホテルではタブレットPCと向かい合いながらの引率となりました。しかし、やはり行く前から楽しみにしていたことがいくつかありました。久しぶりに訪れる古都の歴史的な仏像や建立物にまた出会えるのも楽しみでしたし、料理や生徒の楽しそうな顔を見るのも楽しみでしたが、奈良での宿泊ホテルである多武峰観光ホテルのことも楽しみでした。

 このホテルで出される「義経鍋」は生徒達に大人気です。白い煙が大広間に立ちこめて向こうが見えにくくなる中、全員で食べるこの料理は生徒の活気や喜びのソースと混じり合って旅の思い出となるのは間違いありません。でも、それよりも心に残る印象を、このホテルは何度訪れても変わらずに与えてくれるのです。それは正に今、時の言葉となっている『おもてなし』の心です。初めて訪れたときの驚き、いや感動は忘れられません。大広間での食事が終わり、いざ退出しようとすると全員のスリッパが整然と並べられているではありませんか。到着、出発の際には、断っても荷物を運んでいただけます。出迎えと見送りの時にも、全員で道路に沿って整列されて笑顔で手を振ってくださいます。激しい雨に見舞われて生徒の靴が濡れたことが何度かありましたが、その度に、一足一足に丁寧に新聞紙を入れドライヤーで乾かしてくださいます。正に『おもてなし』です。旅先で雨にあったのに、何故か心がホッと温かくなります。しかも、それは初めて訪れた20年以上前と少しも変わらず続けられているのです。伝統となり、このホテルの『顔』となっています。

 でも、そんな老舗ホテルにも一つだけ変わったことを発見しました。それは支配人さんがお年を召されたことでした。温かい笑顔の眼差しと、きれいな透き通る声の柔らかな説明は20年以上変わらぬままでしたが、人は歳をとるのを避けられません。髪の色にも顔のしわにも、年月の経過を感じました。しかし、なんと素敵な歳の召され方でしょう。以前とはまた一味違う奥深さや上品さが、その言葉と挨拶一つひとつからあふれ出ていました。ホテル伝統の『おもてなし』の心と人の美しい齢の重ね方に、私は心打たれました。そして、いつかは分かりませんが、次回またこのホテルに来る日が楽しみになりました。お世話になりました。そして『おもてなし』の心をありがとうございました。

英語科 伊藤