大妻多摩中学高等学校

第136段

お久しぶりです、留学中の国語科・小野の「老書生通信・第4号」です。

いろいろと忙しくてすっかりご無沙汰しているうちに、もう師走です。12月に入って、大学では、平成25年春の入社を目指す三年生の就職活動が本格化しました。

私が学部四年生だったのは昭和の末年、ちょうどバブル景気の絶頂期で、「空前の売り手市場」などと言われていました。キャンパス内には、「それまで何もしていなかった同級生(文学部・男)が、8月から始めたたった二週間の就職活動で、東証一部上場企業への就職が決まった」とか、「経済学部の金融論のT教授のゼミ学生は、教授の電話一本で都市銀行に就職できるらしい」といった、本当なのか単なる噂なのか定かではありませんでしたが確かに景気のいい話が様々とびかっていたものです。

就職のために四年間の学生生活があるわけではないのは言うまでもありませんが、それでも大学・大学院を出た後は大部分の人が働くわけですし、しかもこれだけ不況だ就職難だと騒がれると、就職というものが大学の中の重大な関心事になるのは仕方のないことです。では、最近の学生の就職活動とはどんな様子なのでしょうか。過日、就職部(学習院大学では「キャリアセンター」という名称です)の方にお話を伺いました。以下、キャリアセンターの方とのやり取りの一部です(実際の問答を正確に再現したものではありません)。

――来年(平成24年)3月に卒業を予定している全国の大学生
の就職状況はどんなですか?
キャリアセンターの方(以下「キャ」と略します):昨年と同じぐらいの数字です。数年前に比べれば厳しいのは確かですね。

 《文部科学省が11月18日に発表したデータによると、平成23年10月1日現在の全国の大学生(学部)の就職内定率は、59.9%。昨年の同時期と比べると2.3ポイント増です。ちなみに、同様の調査における、3年前の平成20年10月1日時点の就職内定率は、69.9%でした。》

――就職活動がうまくいく学生の共通点というのは何でしょう
か?
キャ:ぶれないでしっかりした軸を持っている学生、自分を端的に表現することが出来る学生、相手の意図していることを正確に認識できる学生、こういった学生はうまくいきます。やはり、自分はこれまで何をしてきたのか、これから何をしたいのか、ということをきちんと説明できるのは大切なことです。

――反対に、うまくいかない学生というのは?
キャ:柔軟性がなく頑なな学生はうまくいきません。軸を持つのは大切なんですが、「この業種だけ」とか「大企業だけ」とか、変に凝り固まっているとだめです。また、目指す企業や業種を深く研究していなくて、表面的なところしか見ていない学生も、面接で見抜かれます。それと、口下手な人は損してしまいますね。「どうして自分はこの企業に入りたいのか」ということが上手に説明できない学生は、やはり厳しいです。

――今の学生と昔の学生とを比べると、どんな違いが見られま
すか?
キャ:昔は就職部には頼らないなんていう学生も結構いました。今は、熱心で真面目な学生が多くて、セミナーなどへの参加率も高いんですが、自分で考えないで安易に答えを求める学生が多い。例えば「エントリーシートは何通送ればいいんですか」なんてことを聞いてきます。学生にはよく「就職活動にたった一つの正解などありません。全員それぞれ違った形になります」と話すんですが、今の学生は他人と違うのがとても不安なんです。それで何でもマニュアルどおりにやろうとします。人づきあいが上手でない学生も多いですねえ。OB訪問のためにOBに電話をかける場合でも、携帯電話にならかけられるけれど家の固定電話にはかけられない、なんていう学生もいます。

――えっ、本当ですか!?

 《昭和の大学生は、ここでびっくり。携帯電話のなかった昔は、彼女(もしくは彼氏)に電話したかったら、最初に本人ではなく親が受話器を取ってしまうリスクを冒してでも家の電話にかけるしか方法がありませんでした。「家電(いえでん。家の固定電話のこと)とか無理~」などと言っていたら、先に進めなかったのです。ちなみに、OB訪問・OG訪問というのは、志望している企業に勤務している卒業生に直接会って、その企業に関する情報を収集することです。就職希望の学生のほとんどが行なっているはずです。》

――人とうまくコミュニケーションが取れないと困りますよね。
キャ:就職活動で大切なのは、学業成績よりも人柄です。やはり、三年生までの間にどれだけの経験をしてどれだけの人と関わってきたのか、ということがとても重要になります。学生生活をしっかりエンジョイして欲しい。エンジョイしていろいろな物事に興味が持てれば、人間に幅が出ます。そうやって作ってきた「自分」を、情熱をもって的確に相手に伝えられる学生は、やはりいい結果を出すことができます。

――就職活動などまだずっと先の話だと思っている人が大部
分ですが、中学生・高校生に対して、何かメッセージが
ありましたら、お願いします。
キャ:将来どうしたいのかということを、いろいろな場面で考えてみて下さい。もちろん、中高生のうちに「私はこれになりたい」という答えを出す必要はないので、漠然と考えるだけでもいいです。将来のことをあれこれ考えてきたか否かで、その後の大学受験の仕方や大学生活の送り方が違ったものになるはずです。とにかく、いろいろな機会を利用していろいろなことに興味や関心を持って中高生活を送って欲しいですね。

――どうもありがとうございました。

いろいろとお話を伺いましたが、就職活動に成功する学生・失敗する学生の例は、「そうだろうなあ」と納得がいくことばかりで、突飛な話や特殊な話は一つもありませんでした。おそらく、どの大学で訊いてみても同じような回答になるのではないでしょうか。考えてみれば、どんな人物を採用したいのかという一番根本的な部分は、時代が変わって世の中がどれだけ複雑になっても変わりがないのでしょう。「就職活動で大切なのは、学業成績よりも人柄です」というお話でしたが、「学業成績」の部分を「資格・技術の有無」に置き換えても同じことだと思います。最終的に効いてくるのは、人間性や情熱、人間としての魅力といったもののようです。

どんなに不況な時代であっても、思った通りの就職が出来る人や夢を実現させる人は必ずいるわけで、今大学生の人もこれから大学生になる人も、あまり悲観的にならずに、自分というものをしっかり持った、充実した大学生生活を送ってほしいものですい。

国語科  小野