大妻多摩中学高等学校

【校長室より】「ごもくめし」

ごもくめし

ごもくめし

『ごもくめし』とは、コタカ先生が喜寿を迎えられた昭和33年に出版された著書(自伝)のタイトルです。先生が前書きでお書きになっているように、「御馳走として調った(ととのった)ものでもなく、鰻のような栄養もなく、といって「おにぎり」のように一つひとつの型の揃ったものでもなく、甘いもの辛いもの酸っぱいもの、又赤や白や黄色、青と色とりどりのものを、形もなくごたごたに混ぜ合わせたこのささやかな小冊は、私の毎日の仕事そのままの姿」だということです。

ふつう「ごもくめし」というと、鶏肉ににんじんや筍、彩りに絹さやなどを散らした、「五目ご飯」や炊き込みご飯をさします。たいしたおかずがなくてもご飯それだけで味もついておいしいし、具も入っていて栄養バランスも取れています。コタカ先生はうまいことをおっしゃいますね。「ごもく」といっても「ちらし寿司」のようにご馳走でもないし、おにぎりやにぎり寿司のように形がきれいに揃っているでもない、さまざまな味と形の具がごった煮になっている、先生はご自分の伝記をまるで「ごもくめし」のようだと形容なさったのですね。77歳を迎えられ、大妻学院という学校の創立者としての記録、伝記というには本当にささやかな、それまでに出会った人やお世話になった人たちや楽しかったことが、良馬先生の死や戦後の公職追放、校舎火災などの辛い思い出などと取り混ぜて書かれています。

私は最初この本を見せていただいたとき、「ごもくめし」はコタカ先生の好物かお得意のお料理かと思いました。本の最後のほうに先生の好物、長生きの秘訣ともいうべき「焼きモチ」の話が出てきます。焼いたモチを朝食がわりに毎朝召し上がるのですが、さすがに夏は熱いモチではなく、小さく切って陰干しにしたアラレを煎って召し上がっていたとか。広島県世羅町という山間の僻地に育ったため子どもの頃から魚や肉にはあまり縁がなく、牛乳などもおいしいと思わないと書いていらっしゃるので、日常的には粗食だったことがうかがわれます。先生曰く、粗食が「原始的な長寿の秘訣」だとか。

『ごもくめし』はコタカ先生の思い出集として「あのことも、あの方も、私の脳裏を往来する事柄」がつまっている、小さいけれどとても温かい本です。