大妻多摩中学高等学校

【校長室より】女性の自立とディズニー・プリンセス

白バラ①

父親が娘ベルのお土産に摘んだ薔薇は野獣のものでした。 1階のグラウンドに咲く薔薇。

ディズニー・プリンセスとはディズニープロダクションが生み出したアニメの主人公たちの総称であり、プリンセス(王女)とひとくくりされていますが、実際には王家の生まれでないプリンセスも含まれています。現在白雪姫からアナとエルサまで13人のディズニー・プリンセスがいますが、プリンセスたちは時代の変化によってその描かれ方が大きく変化しているのをご存じでしょうか。

白雪姫(『白雪姫』、1937)、シンデレラ(『シンデレラ』、1950)、オーロラ姫(『眠れる森の美女』、1959)のうちシンデレラは王家の生まれではありません。白雪姫は毒りんごを食べてこん睡状態に陥りプリンスのキスによって目覚め、シンデレラはガラスの靴がぴったり合ったためにプリンスと結婚し、オーロラ姫は糸車の針で指を刺されて眠ってしまったところをプリンスのキスによって目覚めます。いずれも自分で働きかけることなく、プリンスによって見初められてプリンセスになる受身的な女性たちです。

1970年代のアメリカのフェミニズム(女性解放運動)後に生まれた3人のプリンセスたちは自分の意志で行動して幸せをつかみます。『リトル・マーメイド』(1989)の人魚姫アリエルは人間のプリンスに恋をして、声と引き換えに人間になりたいと願います。裕福な商人の娘ベル(『美女と野獣』、1991)はその優しい心で野獣に姿を変えられたプリンスの魔法を解き、結婚します。『アラジン』(1992)のジャスミンはサルタンの王女、宮殿を抜け出し、彼女をプリンセスとしてではなく一人の女性として認めてくれたアラジンと出会って結婚します。

この6人は正統派プリンセス。黒髪の白雪姫、肌の浅黒いジャスミン以外はヨーロッパ系の白人でブロンドの髪を持つプリンセスです。アラブの王国のプリンセスであるジャスミンは、異国風という意味でヨーロッパ系プリンセスと同列に扱われます。しかし1995年以降、文化・民族の多様性を体現したプリンセスが登場します。ネイティブアメリカンの族長の娘ポカホンタス(『ポカホンタス』、1995)と、古代中国の名家の娘ムーラン(『ムーラン』、1998)の二人です。ポカホンタスはアメリカ開拓を目指してやってきたイギリス人冒険家ジョン・スミスと心を通わせ、ムーランは病気の父に代わって男装して戦闘に加わります。ヨーロッパ系ではなく、アメリカの少数派ネイティブアメリカンとアジア系のプリンセスの登場です。

オバマ大統領の登場を受けて生まれたのがアフリカ系アメリカ人のティアナ(『プリンセスと魔法のキス』、2009)。舞台はニューオーリンズのフレンチ・クオター。この映画では、彼女の夢がプリンスと結婚することではなく自分のレストランを持つこと(自立)が強調されています。

ブロンドの長い髪の毛をもち森の中の塔に幽閉されているラプンツェル(『塔の上のラプンツェル、2010』)の恋する相手はプリンスではなく泥棒、この映画はロマンスというより若く美しく成長する娘に対する母(実は魔女)の嫉妬が描かれています。ピクサー史上初のヒロインであるメリダ(『メリダとおそろしの森』、2012)は乗馬が得意で弓の名手であるお転婆なプリンセス。王位継承者としての勇気を持ち合わせていますが、この映画のテーマはメリダと母(王妃)の絆の回復です。

最後に登場するのがエルサとアナ(『アナと雪の女王』、2013)です。この映画でプリンスは登場しますが、姉妹の王国乗っ取りをたくらむ裏切り者です。この映画では姉妹の絆が強調されています。

このように時代の変化によってディズニーのプリンセスたちの言動も大きく変化し、白馬にまたがりプリンセスの心を射止めるハンサムなプリンス像も、21世紀に入るとプリンセスの活躍の影に追いやられてしまいます。プリンスとの結婚だけが人生の最終目標ではなく、自立したプリンセスたちは自分の信念をしっかりもち、自らの道を切り開いて幸せをつかんでいくのです。