大妻多摩中学高等学校

【校長先生】みらいのせかいは たいへんなことばかりって ほんとう?

 
「2030年には、少子高齢化がさらに進行し、65歳以上の割合は総人口の3割に達する一方、生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少すると見込まれている。」文部科学省によれば、将来の変化を予測することが困難な時代を前に、現代と未来に向けて、自分の人生をどのように拓いていくかが、子どもたちに求められているということです。グローバル化や情報化が進む社会では、ヒトとモノとが速いスピードで相互に影響し合い、先を見越すことがますます難しくなり、子どもたちが将来就くことになるであろう職業も変化せざるをえない。子どもたちの65%は将来、今存在しない職業に就くかもしれないし、今後10~20年ぐらいで今の半分近くの仕事がAI(人工知能)に取って代わられると言われています。

「予測不可能な時代」、「グローバル化と情報化」、「仕事がAIに奪われる」、さらには「AIが人類を超えるという『シンギュラリティ』に到達する」などという記事も見られます。「人生100年時代」と言われる現代を生きる子どもたちにはAIを使いこなして仕事をして生き抜く力が問われ、そのために知識を身につけて社会で主体的に活躍するための教育改革が必要になってくるのです。

「予測困難な時代」を指すVUCA(ブーカ)という単語があります。これはVolatility(変動性、不安定)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもので、もともと1990年代の軍事領域で用いられた言葉であり、近年経済やビジネスに使われ、あらゆる環境が複雑になり将来の予測が困難になる状況にあることを指すようです。どの単語をとってみても確固たる地盤のない不安感が増す単語ばかりです。

今まででも10年、20年先は誰にもわからなかったはずですし、当然ながら、子どもたちは親の世代が経験したことのない時代を生きてきました。つまり子どもたちは親の敷いてくれたレールをただ歩んできたのではなく、自らの力で新しいレールを敷いてきたはずです。それなのにどうしてこのように不安を煽るような表現がなされるのでしょうか。それはグローバル化、情報化のスピードがものすごく速いからなのです。2006年から2016年までの10年間でネット人口は14億人から2倍以上の35億人に増加し、シートベルトとかエアバッグを装備していた車は自動探知や自動ブレーキを搭載するようになり、2020年には自動運転タクシーが登場する現代です。このようなテクノロジーの発達した時代で求められる力とはAIができない力、すなわち問題発見・解決力、思考力・創造力、発想力、コミュニケーション力、直感とセンスなどです。

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大変な時代が来たものです。でもそんな不安を吹き飛ばす絵本が出版されました。「ねえねえ、しってる?みらいはたいへんなんだぜ」、学校から帰ってきたおにいちゃんは妹に言います。急に不安になった妹はおばあちゃんに聞きに行くと、おばあちゃんはこう答えてくれます。「だーいじょうぶよ!みらいがどうなるかなんて、だれにもわかんないんだから!たいへんなことだけじゃなくて、たのしいことやおもしろいことも たーくさんあるんだから!」。おばあちゃんはさらに続けて言います。「そうよ!それしかないわけ ないじゃない!」おばあちゃんの自信満々の言葉を聞いて妹はすっかり安心します。「たいへんなみらいしかないわけないでしょう?いろんなみらいがあるでしょう!?

「AIに仕事を取られたらどうしよう、今のうちにコンピュータに慣れなくちゃ。え~とエクセル使ってプレゼンか。」などと心配している大人と比べたら、子どもとおばあちゃんはなんとおおらかなのでしょう。この本は昨年11月に出版されて以来、今年の2月には第5刷りが出版されたヨシタケシンスケさんが描いた絵本『それしかないわけ ないでしょう』です。ヨシタケさんといえば、今話題の絵とストーリーで人気の絵本作家です。2017年には『なつみはなんにでもなれる』が第10回MOE 絵本屋さん大賞第一位を受賞し、2018年には『おしっこ ちょっぴりもれたろう』が第11回MOE絵本屋さん大賞第一位を受賞しています。『それしかないわけ ないでしょう』の帯には「考え方ひとつで楽しい未来が見えてくる!」と書いてありますが、表紙は一枚のタオルをいろいろに使っている子どもの絵がたくさん描いてあります。「一通りしかないわけない、こんなに使い方たくさんあるのに」という意味でしょう。つまりこの絵本は子どもたちと経験豊かなお年寄りの柔軟な頭脳によって働き盛りの大人の常識を取り払って、多様な考え方ができることを証明してくれるとっても楽しい絵本です。