大妻多摩中学高等学校

【校長室より】2018年度 中学修了式 

今年度は大妻学院創立110周年、大妻多摩高校創立30周年という、大妻学院にとって節目となる年でした。大妻多摩中学は1988年の高校創立の6年後の1994年に作られました。これまで多摩中高では「千代田の森のかげあかるく」から始まる学院校歌が校歌として歌われてきましたが、このたび高校創立30周年をお祝いして、谷川俊太郎さん作詞、谷川賢作さん作曲の新校歌が完成し、昨年11月8日にお二人をお迎えして新校歌発表会が開かれたことはみなさんの記憶にも新しいところだと思います。

さて昨年の12月14日、目白にある自由学園明日館講堂で谷川さんの『バウムクーヘン』という新刊書刊行記念音楽会が開かれました。この音楽会では俊太郎さんによる詩の朗読と賢作さんのピアノ演奏と、お二人のトークショウが行われました。質問コーナーでは、200名ほどの観客からいくつもの質問がお二人に投げかけられました。中学校の国語の先生は、谷川さんの詩を授業で教えるときどんな点が重要ですかと質問しましたが、俊太郎さんは「日本語の美しさを生徒に伝えてほしいです」と答えました。また、オペラ歌手の方が、俊太郎さんの詩を歌う時に、作者の思いをどのように伝えたらよいのかとの質問には「詩の作者である私の気持ちではなく、あなたの感じたままを歌えばよいのです」とアドバイスしました。自分の詩に自信があるからこそいえる答えだと思いました。翌日15日の俊太郎さんの87歳のお誕生日を観客も一緒になってお祝いした後、音楽会も終盤に差し掛かった時、賢作さんが一番新しく作った歌を紹介しますと言って歌ってくれたのが「大妻多摩中高校歌」だったのです。当日のチケットはネットで注文したので、私が行っていることは賢作さんにもわかっていたと思うのですが、特別の取り計らいに感激した夜でした。

日本を代表する詩人であり、詩集や絵本翻訳など数々の本を出版している谷川さんですが、どうして谷川さんに作詞をお願いすることになったのかお話しようと思います。

今から2年前、学校では30周年に合わせて新しい校歌を作りたいという話が持ち上がりました。今まで何度か提案されましたが実現しなかったことです。生徒が歌いやすい、大妻多摩をイメージできる校歌作詞を誰にお願いするかということになり、数人の作詞家の名前の中から谷川俊太郎という名前があがりました。谷川さんは小学校から大学まで日本中の学校の校歌の作詞もしていて、それは『ひとりひとりすっくと立って、谷川俊太郎・校歌詞集』という本にもまとめられています。でも谷川さんは高齢でもあるし、有名な詩人が校歌を作ってくれる全く分からないまま、村上先生が谷川さんと高校の同窓生ということから思い切って直接手紙を出したのです。それからしばらくして谷川さんが「引き受けましょう」と電話でお返事を下さって、作曲は谷川さんの詩を一番よく知っている息子さんの賢作さんにお願いすることになりました。谷川さんの母校の高校では、「あなたに」という谷川さんの詩を代々語り継ぎ、卒業式には男女3名の卒業生が暗唱することで知られているそうです。この詩はこの高校の宝ですからここではあえて触れません。実は昨年の新校歌発表会の最後にこの「あなたに」が朗読されたのですが、校歌を依頼した村上先生に対するお礼の気持ちだったのだと思います。

新校歌作成にあたり、生徒の皆さんには校歌にどんな言葉を入れてほしいかアンケートをとりましたね。それをまとめて谷川さんに送り、作詞の参考にしていただき、「欅並木の階段上り」で始まる新校歌が誕生しました。谷川さんは1952年『二十億光年の孤独』という詩集でデビューして以来、宇宙や自然をテーマとした詩をたくさん作っています。新校歌の中の「この空は宇宙に続く、しなやかにこまやかに、いのちを生きる私たち」はまさに谷川さんの詩です。また谷川さんは「美しい多摩川フォーラム」の依頼によって「多摩川の歌」を作っていらっしゃいます。今思うと、谷川さんは「大妻多摩中高」だからこそ、校歌を引き受けてくださったのだと感じています。そして谷川さんの母校の名前は杉並区にある「都立豊多摩高等学校」なのです。

新校歌は来年度の入学式から、式典のときに学院校歌と共に歌われることになっています。
みなさんの思いのこもった新校歌をこれから歌い継いで、さらに素晴らしい校歌にしていただきたいと思います。