大妻多摩中学高等学校

【校長室より】第29期生 高校卒業式

 

高校3年生のみなさんへ、卒業式に寄せて                  

校長 谷林眞理子

高校三年生のみなさん、本日は大妻多摩高等が校ご卒業誠におめでとうございます。

保護者の皆様、お嬢様のご卒業をお祝い申し上げます。
みなさんにとって大妻多摩中高での6年間は、長いようであっという間だったと思います。今まではご家族や先生方に守られてこのキャンパスで過ごしてきたと思いますが、みなさんの自ら切り開く人生はこれから始まります。

新聞や雑誌、またテレビコマーシャルでも「人生100年時代」に突入したと言われますが、その裏付けは何なんでしょう? 長寿国で知られる日本の100歳以上の人口は2018年は現7万人近くですが、国連推計によれば2050年までに100万人を突破すると言われています。100年前には100歳まで生きている確率は1パーセントだったにもかかわらず、現在50歳未満の日本人の半数は100年以上生きる可能性があり、まして2000年、2001年に生まれたみなさんは104年以上生きることが予想されるといいます。

ロンドンビジネススクール教授の経済学者リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットによれば、長寿時代を生きるみなさんは、祖父母の世代とは異なる人生選択をしなくてはならない、親世代の人生をコピーしてもうまくいかないといいます。高校卒業にあたり、みなさんには、ベストセラーになった『ライフシフト 100年時代の人生戦略」を書いたこの二人の教授による将来の生き方の指針について少しお話ししようと思います。

平均寿命が10年に2歳以上のペースで延びてきたといっても、寿命が無限に延びるわけではなく120歳ぐらいが上限だということです。医学、衛生、栄養、教育、テクノロジーなどの発達により人は健康に過ごすことになるので、今まで教育、仕事、引退後という人生の3つのステージの人生全体の設計をし直さなくてはならないことになります。つまり大学卒業が教育のゴールではなく、オンラインで大学の授業を受けるなど、何歳になっても勉強の機会は広がり、60歳定年から70歳~80歳定年へと変化していきます。そうなると今までの画一的な人生設計ではなく、各々が自分らしい良い人生の歩み方を考える必要が出てきます。

日本政府の「人生100年時代構想会議」のメンバーでもあるグラットン教授は二人の息子をもつ母親でもありますが、AIなどの先進技術に追いつくため、人間にしかできない仕事をするために学び続けることが大切だと言っています。彼女は、この世界はどのように発展し何が起きるのかというような問いを立てられるように、何にでも好奇心をもつように育てればよいと話しています。

ただし現在の日本に突き付けられた問題と矛盾があります。それは、人口動態上、日本は長寿国である一方で出生率は極めて低く、高齢者人口が増える一方で総人口は減り、2060年には65歳以上の人口が40パーセントを占めることになるといいます。グラットン教授は女性の役割がもっと大きくなると予測していますが、世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数では、日本は昨年149か国中110位、主要7か国中今年も最下位です。また女子の大学進学率が50.1パーセントと昨年初めて5割を超えたとはいえ、地域差も大きく、大学院進学率では男子と3倍近い開きがあります。一方で、現在適齢期の女性の三分の1が専業主婦志望、管理職志望の女性は一割にも満たない。8割以上の女性は管理職になりたくないと答えているという現実があります。

この「人生100年時代」を乗り越えるために、グラットン教授らは次のように提案しています。世界の労働市場の未来をよく理解し、さまざまなキャリアの選択肢を検討すること。具体的にいうと、新しいステージを築くために、余暇時間をスキルや健康や人間関係構築のために投資することだといいます。女性が高学歴になるとともに会社で役職に就くなどキャリアを築くようになれば、今まで女性の仕事とされていた育児や介護も男性も共に担わなくてはならなくなります。選択肢が広がるということは幸せになるチャンスが増えるということであり、自分だけでなく社会貢献の可能性がさらに広がることを意味しています。

みなさんは、4月からは大学という新しい世界で生活することになります。人生100年時代、今までよりいっそう人間らしい力が求められる未来を生き抜くには、計画的に学び続けることが重要なのです。パイオニアとなるのはみなさん、あなたたちです。これからの長い人生の選択肢を増やすために、5年先、10年先を見据えて、今できることは何かを考えることを考えてみてください。

改めて大妻多摩高等学校ご卒業、おめでとうございます。