大妻多摩中学高等学校

【校長室より】第32期生 中学卒業式

桜_卒業式2

中学3年生のみなさんへ、卒業式に寄せて                  

校長 谷林眞理子

 

中学三年生のみなさん、本日は大妻多摩中学校ご卒業おめでとうございます。
保護者のみなさま、お嬢様方の中学ご卒業を心からお祝い申し上げます。
新しい制服に袖を通して正門をくぐってからあっという間の三年間でしたね。ほとんどの方は電車通学が始まり、唐木田駅からの上り坂と階段を重い鞄をもって通学することには慣れたことと思います。

この三年間、中学生としての知識を増やし、毎年の三大行事をこなし、そしてそれぞれの部活で活躍をし、心身ともに大きく成長したと思います。
ところでみなさんは三年間で何冊の本を読みましたか?インターネットの発達により活字文化は多様になってきていると思いますが、文庫、新書、文学、科学書、辞典からさらにマンガにいたるまで、読書の習慣はみなさんの成長に大きく影響を与えていると思います。

2014年に日本人で二人目の国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子さんをご存知でしょうか。短槍使いの女用心棒バルサの活躍を描いた「守り人』シリーズは、アニメやテレビドラマ化されたので皆さんもご存知のことと思います。
上橋さんとは前の職場である大学の同僚でしたので、お互いに先生をつけて呼んでいましたが、先生が本を出版なさるたびに研究室に伺ってサインをいただいていました。外部のサイン会にもわざわざ並んでサインをいただいていました。

実は上橋先生のご専門は文化人類学、その読書量は多岐にわたり膨大です。仕事を一緒にしていたときもよく研究室に伺ってお話をしましたが、子供のころからおばあ様や両親が本の読み聞かせをしてくれたことから、本は「語られるもの」という認識があったといいます。特におばあ様は民話を話して聞かせてくれ、そこから口頭伝承のすばらしさを知ったそうです。小学生のころには考古学や歴史にはまり、ギリシャ神話にも親しみ、中学生ではイギリスの児童文学に夢中になり、時空を超える「タイムファンタジー」に興味を持ったそうです。そして高校の英語研修でイギリスに行った時に『グリーン・ノウの子どもたち』の作者であるルーシー.M.ボストン夫人に会いに行って、作家になろうと思ったとか。先生は大学で文化人類学を専攻することになって、ヨーロッパ以外のアフリカやアジア、南太平洋の神話にふれ、さらにオーストラリアのフィールドワークでアボリジニと共に暮らした経験から、「自分の社会で常識と思っていたことが外に出ると常識でもなんでもないことに気付き」、「言葉も通じないところで自分で人間関係を築いて何とかやっていく」ことから物語を書くという自覚が生まれたといいます。つまり物語を書いたり読んだりする行為は「他者を想像することであり、他者を思いやる力そのもの」だといいます。

もう一人みなさんと同じ中学三年生の作家鈴木るりかさんのお話をしたいと思います。るりかさんは中学二年生の14歳のときに『さよなら、田中さん』で作家デビューし、昨年は二作目の『14歳、明日の時間割』を刊行したばかり。小学校の時に「12歳の文学賞」で3年連続で大賞を受賞した鈴木さんは、家の隣が図書館だったために、赤ん坊のときから図書館が遊び場、一歳半で絵本を広げては絵に合わせて話しを作って話していたと言います。その図書館では読み聞かせをしていたので、小学校入学前から文字も自然と覚えたそうです。るりかさんも大変な読書家ですが、昭和の小説や文豪の作品が愛読書、好きな作家は志賀直哉、吉村昭、安岡正太郎、遠藤周作などだといいます。

上橋先生も鈴木さんもそれぞれの読書経験が作家としての下地にあることは確かです。この二人には面白い共通点があります。それは二人ともマンガが大好きで自分でマンガを描くのも大好きだというところです。作家になるかどうかは別として、学校で先生が進めてくださる本だけでなく、自分の興味の赴くままでいろいろと読んでいくうちに関心の幅が広がっていく。読書をすることによって想像力は無限に広がっていきます。

大妻多摩中高にはアカデメイア棟という素晴らしい図書館があります。高校に進学しても学校の図書館や地元の図書館に足を運んで読書量を増やしてください。大学進学から社会人になっても、これからの人生設計に必ず役に立つはずです。読書はあなたを裏切りません。

改めて、大妻多摩中学校ご卒業おめでとうごさいます。