大妻多摩中学高等学校

【校長室より】#Me Tooからの『オーシャンズ8』

#Me Tooからの『オーシャンズ8』

オーシャンズ8①

 ハリウッドの大物プロデューサーであるハーベイ・ワインスタインがセクハラで告発されて以来、パワハラ、男女不平等などを訴えて、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞などの授賞式で女性映画人、女優たちが声を上げています。主要キャスト8名が女性で占められた、それも名だたるオスカー女優やセレブリティで占められた『オーシャンズ8』が公開中です。もともとはフランク・シナトラを中心とした『オーシャンと11人の仲間』(1960)のリメイク版。ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットを配した『オーシャンズ11』(2001)、『オーシャンズ12』(2004)、『オーシャンズ13』(2007)の続編。ストーリーは世紀の強盗団のボスであるダニー・オーシャンを兄にもつデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)が5年の刑期を終えて仮出所するところから始まります。彼女は刑務所の中で考え抜いた強奪計画を実行に移すべく、バーの経営者にして独特の犯罪美学を持つルー(ケイト・ブランシェット)、天才ハッカーのナインボール(リアーナ)、ジュエリー職人のアミータ(ミンディ・カリング)、敏腕スリのコンスタンス(オークワフィナ)、主婦でありながら盗品ディーラーのタミー(サラ・ポールソン)そして落ち目のファッションデザイナーのローズ(ヘレナ・ボナム=カーター)に声をかけます。 デビーのターゲットは毎年5月1日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される慈善イベントである「メット・ガラ」。アメリカVOGUE紙編集長であるアナ・ウィンターを中心として毎年特定のテーマのもとに美術館服飾部門のイベントが開かれ、世界中のセレブたちが集結することでも知られています。デビーが狙うのはディーバ役のハリウッドスターであるダフネ(アン・ハサウェー)が身に着けるカルティエ製の一億5千万ドルのネックレス。デビーが集めた仲間は今はぱっとしませんが、チームワークもさることながら、個人個人がそれぞれの分野であっと驚く手腕を発揮します。 このような見事としか言いようのない犯罪映画のストーリーを書くのはナンセンスです。ここで注目したいのは、8人の女優陣です。英語でも日本語でも現在女優・男優の区別をせず「俳優」(actor)で表しますが、ここではあえて女優という単語を使いたいと思います。デビーの右腕となるルーを演じるケイト・ブランシェットは今年のカンヌ国際映画祭の審査委員長を務めましたが、彼女は参加した82人の女性監督によるデモ行進を行い、男女格差是正を訴えて喝さいを浴びました。長編コンペティション部門にノミネートされた女性監督の作品が82本、それに対して男性監督の作品は1645本ということです。歌手リアーナは一昨年のメット・ガラでディーバを務め、裾の長いカナリア・イエローのドレスでメットのレッドカーペットを上って注目を浴びました。脚本家、プロデューサー、作家、監督としても知られるインド系のミンディは有色人として様々な賞を受賞しています。女優であり脚本も手掛けるオークワフィナはアジア系のラッパーとしても有名です。サラはエミー賞、ゴールデングローブ賞などの受賞歴のある実力派女優。唯一犯罪歴のないデザイナーを演じるヘレナはその独特の芸風でストレートからコメディまでどのような役もこなす個性派女優です。そして今年母親になったアン・ハサウェーがどのような役回りをするかが映画の中の見ものです。 デビーのモットーは強盗団には男性をメンバーに加えない、あくまで女性だけで実行すること。この計画にかかわる男性は裏切られ、スクリーン外に追いやられる。あくまでも美しくスマートに、これがデビーの復讐の仕方なのです。男性中心のハリウッドにおいて、監督は「オーシャンズ」シリーズを引き継ぐスティーブン・ソダバーグですが、脚本、製作には女性が大きな役割を果たしています。「(主要キャストの)半数が母親で、学校に通っている子どもがいるし、家事もこなさなくてはならなかった」とサンドラ・ブロックがインタビューで答えていましたが、女性の連帯を実現した痛快な映画です。