大妻多摩中学高等学校

【校長室より】エンジニア姿のバービー人形

ロボット工学エンジニアになったバービー人形

0723校長室より_バービー人形①

6月26日付の米GLAMOUR誌に、おもちゃメーカーのマテル社が2018年モデルとしてロボット工学エンジニアのバービー人形を発売したという記事が載りました。バービーは様々なファッションに身を包み、60年近く「なりたければ何にでもなれる」(“they can be anything they want to be”)と、世界中の少女にメッセージを送ってきました。今回発売されたロボット工学エンジニアとは、機械工学、計測制御工学、生体工学などの総合した学際分野の技術者で、ロボット幾何学、ロボット動力学、制御工学、感情情報処理、AI、ロボットシステム応用技術などを含む最先端の研究分野のプロのことです。

1959年、マテル社の創業者の一人であるルース・ハンドラーが、ヨーロッパ旅行中にスイスで見つけたリリという人形を娘バーバラにお土産として買ったことからバービー人形の歴史は始まります。リリにヒントを得た八等身で成熟した女性の体をもつこの着せ替え人形は、60年代には人件費の安い日本で生産されてアメリカに輸出され、日本でも売れ行きを伸ばしましたが、67年にリカちゃん人形が製造されてからは日本国内ではあまり人気がなくなったといいます。17歳のファッションモデルである本名バーバラ・ミリセント・ロバーツ(Barbara Millicent Roberts、愛称Barbie)の姿かたちは日本人とは程遠く、日本人の少女たちにとっては等身大のかわいいリカちゃんの方がより親しみがあったといえるでしょう。

現在では50以上の国籍を持ち、140か国で販売されている身長30センチ足らずのこのバービーは、あらゆるファッションブランドのドレスを着こなし、60年代後半には多民族国家アメリカを反映するようにアフリカ系、アジア系、ラテン系の友人を持つなど、人種の幅、肌の色も広がっていきます。顔の変化も顕著で、誕生当時の「伏し目がちの流し目」も70年代第二波フェミニズムの影響を受けて、自己主張が表れた、しっかりまっすぐ前を見る目つきに変わります。モデルだったバービーは、時代を経るに従ってCA、医師、看護師、警察官などの職業のほか、その時々の世相に合わせて、パイロット、宇宙飛行士、湾岸戦争の兵士、大統領候補、プロバスケットボール選手、オリンピック選手、ニュースキャスターなど200以上の仕事に従事してきました。

2016年1月28日付のUSA TODAY紙によれば、これまでの八頭身美人ではなく、より本物のアメリカ人少女の体型に近づけた長身(Tall)、小柄(Petite)、ぽっちゃり系(Curvy、意味は曲線美))という人形が売り出されたということです。新しい3つの体型に加えて、肌の色は7種類、目の色は22種類、ヘアスタイルは24種類あるといい、自分と友達の誰でもが自らの姿を発見できるよう組み合わせが可能だといいます。従来の現実離れした体型をもつバービーは女性性を誇示しすぎるとしてしばしば批判の対象になってきましたが、新しいバービーは美しさの規準には幅があることを子どもや親たちに示したのだといいます。(“a responsibility to girls and parents to reflect a broader view of beauty”)「(太っていてもやせていても)女の子は誰でも美しい」、「それぞれの体型にふさわしいファッションを見つけよう」というメッセージは多様性を重んじる現代社会を反映しているといえます。

0723校長室より_バービー人形②

エンジニアスタイルの
バービー

そして今回のロボット工学エンジニアの登場です。これまでも宇宙飛行士のようにSTEM (Science,  Technology,  Engineering, and  Mathematics:科学、技術、工学、数学)の分野で活躍するバービーはいましたが、このロボット工学エンジニアは、今迄のバービーのようにハンドバッグや帽子、イアリングやネックレスを身につけておらず、彼女のアクセサリーはラップトップコンピュータ(中型ノートパソコン)とロボットとゴーグルだけ。米国務省の統計によると、現在この分野は急成長しているものの女性の雇用は24パーセント。そこでマテル社は子ども向けプログラミング学習プラットフォームのティンカー社と提携して、プログラミングの基礎が学べるというおまけまでつけました。バービーのGM(ジェネラル・マネージャー)であるリサ・マックナイトは「これまであまり女性が就かなかった職業や分野に光を当てたかった」(“We wanted to shine a light on this underrepresented career and field for women.”)と語っています。マックナイトによれば、できるだけ本物に近づけるようにこの人形は髪を後ろで束ね、服装もMIT(マサチューセッツ工科大学)の女性教授の指導のもとに、仕事がしやすいようにスニーカーにジーンズをはき、ダンガリーシャツを着ています。また多民族多文化を反映して、アフリカ系、アジア系、白人、ラテン系という4種の肌の人形が用意されているということです。

21世紀の新しい教育であるSTEMは、Art(芸術)を加えてSTEAMRobotics(ロボット工学)を加えてSTREAMとなるなどその守備範囲がどんどん広がっていきますが、自ら学ぶ力を養うという点で、IT社会とグローバル社会で生活する国際的競争力を持った人材を育成するには必須の教育システムです。また、タブレットを使ったり、パソコンでプログラミングをしてロボットを組み立てることに慣れている子どもたちにとって、AIに使われることなく国際社会で活躍するためにも、STEM教育は、これからの教育場面で大きな比重を占めてくるでしょう。こうしてみてみると、7歳から使用可というプログラミングバービーで遊ぶことは、ジェンダー格差のない職業選択のためにもおおいに役に立つのではないでしょうか。