大妻多摩中学高等学校

【校長室より】銃規制を求めて高校生が立ち上がる

銃規制を求めて高校生が立ち上がる

20180423校長室より_銃規制①

4月2日の朝日新聞は、アメリカ南部フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件で同級生を亡くした日本人女子生徒が、同校生徒による銃規制の呼びかけにより3月24日にワシントンで行われた「わたしたちの命のための行進」(March for Our Lives)に参加したというニュースを取り上げていました。17名の犠牲者を出した同校では乱射事件に備えて日頃から避難訓練を行い、セキュリティーも万全だったといいます。24日当日には銃規制に賛同する高校生を中心に80万人もの若者がワシントンに集結し、全米各地でも同様の行進が行われたということです。
TIME誌は4月19日、同校の生徒でありこの運動を率いた活動家エマ・ゴンザレスをはじめ、同校の5人の生徒が「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたことを発表しました。さらに同日、ゴンザレスを代表する高校生グループは、米経済誌Fortune誌が選ぶ「世界の偉大な指導者50人」の第一位に選ばれました。

今年2月14日のバレンタインデーに起きたこの事件で多くの生徒が死亡したというニュースは、これまでに学校における銃乱射が何回も繰り返されているアメリカで、依然として規制が進んでいないことを思い知らされる事件でした。犯人は、在学中に他の生徒を脅迫したり事件を引き起こしたりして退学処分になっていた同校の卒業生でした。

アメリカでは2012年に東部コネティカット州の小学校で26人が、2017年には西部ラスベガスで58人が死亡するという銃乱射事件が起きています。学校での発砲事件は2018年1、2月ですでに18件、犠牲者が出なかった事件も含めると2013年以降290件も起きているといいます。(ライブドアニュースより)

アメリカでは18歳で銃の所持が許可されており、銃規制を訴えたオバマ大統領と異なり、トランプ大統領を支持する「全米ライフル協会」の反対により、銃規制は依然として進んでいないのが現状です。トランプ大統領は今回の事件をふまえて、銃所持の年齢を引き上げるなどの提案はしたものの、教職員が銃を所持していればこのような事件は起きないだろうと発言して銃規制推進派の人々を驚かせました。学校における銃撃に備えて教職員が武装するという案は「全米ライフル協会」が以前から主張してきたことだといいます。

アメリカの学校における銃撃事件といえば、マイケル・ムーア監督による映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』(Bowling for Columbine、2002)で描かれたコロンバイン高校銃乱射事件が有名です。事件は1999年4月20日、コロラド州ジェファーソン郡コロンバインにある郡立コロンバイン高校で起きました。直前までボウリングをしていた同校の男子生徒二人が12名の生徒と1人の教師を射殺し、重軽傷者は24名に及んだという事件です。犯人二人は学校に爆弾を仕掛けており、カフェテリアと図書館を爆発させた上に、数百人の生徒を襲撃する予定だったといいます。犯人は自殺してこの事件は終わりを告げますが、ムーア監督はアメリカ大陸における植民地時代から現代の銃社会の歴史を追い、コロンバイン市民や全米ライフル協会の当時の会長である映画俳優チャールトン・ヘストンらにインタビューし、事件の背景をドキュメンタリー映画として発表。この映画は2002年にカンヌ国際映画祭50周年記念特別賞をはじめ数々の賞を受賞、2003年にはアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。タイトルの“Bowling”には、ボウリングのピンが人間の形に似ているので、射撃の的に使われることがあるからという意味もあるそうです。

アメリカでは現在多数派である白人たちは、移民当初から先住民の襲撃に備えて武装し、また南北戦争以降は、黒人迫害に対する復讐を恐れて武装するなど、自らが迫害してきた異民族に対抗すべく武装してきたといってよいでしょう。その考え方を変えない限り、銃規制は進まないと思いますが、ハリウッドのセクハラに対して全米に広がった#Me Tooと同様に、#Me Next?(次の犠牲者になるのは私?)、#Never Again(もう二度とこのような事件は起こさない)キャンペーンを支持しているのは高校生をはじめとした若者たちなのです。

4月4日には公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師が、39歳で暗殺されてから50年目の追悼会がテネシー州メンフィスで行われ、全米各地で追悼行事が開かれました。黒人初の大統領が誕生したものの、今まで少数派であった黒人やヒスパニックやアジア系の人口が、近いうちに多数派である白人人口を上回ることが予測されているアメリカでは、依然として白人たちの少数派に対する差別意識が根強いといいます。さらに、“America First”を強調するトランプ大統領の言動はアメリカを分断し、高校生たちの声が、「銃には銃を」の強固な姿勢の前にどれほど届くのかが懸念されます。