大妻多摩中学高等学校

【校長室より】高校三年生 卒業に寄せて 

卒業生のみなさん②

桜の開花が待たれる3月18日、大妻多摩高等学校と大妻多摩中学校の卒業式が行われました。


みなさん、大妻多摩高等学校ご卒業おめでとうございます。保護者のみなさま、お嬢様のご卒業を心からお祝い申し上げます。
2012年に中学に入学して6年の月日が経ち、心身ともに成長したみなさんは新たな世界に一歩踏み出そうとしています。これからは大学そして社会という外の世界に行動の範囲を広げることになりますが、今まで女子だけで過ごしてきたときとは異なり、勉強をしたり仕事をしたりするときに、性差というものを意識せざるを得なくなるでしょう。

先の平昌オリンピックでは日本は13個のメダルを獲得しましたが、そのうち8個は女子が受賞しました。カーリングやパシュートなどチーム競技での活躍が目立ちました。スポーツの世界では女性は大活躍をしていますが、政治・経済分野での男女格差(ジェンダーギャップ)は極めて大きく、毎年この格差を発表している世界経済フォーラムによれば、2017年日本は、144か国の調査対象国の中で114位という低さ、先進7か国の中でも最下位でした。日本では女性官僚は少なく、企業のトップはほとんど男性で占められているからなのです。実は女性がさまざまな権利を行使しているようにみえるアメリカでさえ49位、決して社会で女性が活躍しているとはいいがたいのです。

今日は、アメリカの政治・経済分野における女性の地位について書かれたベストセラーがあるのでご紹介したいと思います。タイトルはLean In。日本語訳の副題は「女性・仕事・リーダーへの意欲」です。この“lean in”とは「身を乗り出す、一歩踏み出す」という意味です。著者はグーグルからフェイスブックに入社、43歳でフェイスブック初の女性執行役員COO(最高執行責任者Chief Operation Officer)に選ばれたシェリル・サンドバーグです。サンドバーグは、職業選択の自由が自分の母親や祖父母の時代よりはるかに広がったにも関わらず、リーダーになる女性が極めて少ないのは、職場における偏見に基づく待遇や性差別、セクハラなどがあると言いますが、体制的な差別や社会的性役割を、女性自らが作ってしまうことを指摘し、そこから一歩踏み出す勇気が必要だと書いています。2013年に出版されたこの本は、二人の子どもを出産しながらトップに上り詰めた著者の、職場における女性リーダーの在り方と働き方が書かれており、出版から半年で100万部以上売れ、働く女性にとってバイブルになりました。

彼女はハーバード大学の学生時代の経験から、女性が一歩踏み出すことに対して無意識に身を引いてしまう例を挙げています。それは、女性はよい成績をとって褒められても罪悪感を感じ、思わず自らの能力を低く見積もってしまうというのです。男子学生と一緒に勉強をしていると、女子学生が十分実力がありながら、理由もなく自信が持てなくて悩んだり、自信喪失に陥りやすい傾向にあるといいます。幼いころから共学で男性に対抗して勉強してきたアメリカ女性でさえ、学問研究という男女平等の場でそのような劣等感を感じるのかと私は驚きました。

さてみなさんは6年間女子だけの環境で勉強し、行事や部活においてもそれぞれの役割を引き受けてきました。男子に遠慮するとか、自らを過小評価するなどはまず考える必要がなかったと思います。女子一貫校のメリットはここにあるのです。みなさんは大学に進学しても今までのおおらかな気持ちを持ち続けて、持って生まれた能力を思う存分発揮していただきたいと思います。

昨年暮れに、私は矢澤先生と一緒に、新しく交換留学予定の学校を訪問するためドイツに出かけました。私たちが飛行機に乗り込んだ時、「矢澤先生!2012年に卒業した古屋です」と声をかけてくれたCAの方がいました。彼女は大妻多摩の卒業生だったのです。古屋さんは中学一年生のときに「夢」という題の作文の中で、将来航空産業に携わりたいと書いたそうです。その夢を持ち続けて、大学4年生の時に彼女はANAの地上勤務とCA両方の内定をもらって、いまはCAとしてとても楽しく仕事をしているとのこと。照明を落とした機内でも表情がわかるように、CAの方ははっきりとメイクをするそうですが、飲み物を運んだり免税品を売るときに彼女が笑顔で接客している様子は、自信にあふれてとても輝いて見えました。

大妻コタカは生徒たちに対して「匂いやかなれ」と言っています。これは、職場のリーダーとして仕事をするときでも、母になって子供たちに接するときでも、その人がいるだけで周囲が明るくなり和やかな気持ちになることをいいます。大妻多摩を卒業して6年、古屋さんはまさにこの「匂いやかなれ」にぴったりの女性として成長していました。

どうぞ皆さん、大妻多摩中高で勉強したことを誇りに思い、大学でも社会に出ても自信をもって、前に進んでいただきたいと思います。皆さんの卒業にあたり、「一歩前に踏み出す勇気」を持ちつつ、そして「匂いやかな」女性になっていただきたいと思います。皆様の今後のご活躍を心からお祈りしています。