大妻多摩中学高等学校

【校長室より】大妻多摩中高の取り組みと大学入試改革

大妻多摩中高は大妻コタカの人間教育を基礎に、難関大学合格のための進学校としてさらなる進化をします。
2018年度、本校では2020年度から行われる予定の大学入学共通テストの実施と、2022年度から年次進行で実施される文科省の新学習指導要領に基づいて以下の学びを充実させます。

1 人間関係スキル・キャリア教育プロジェクト英語・国際教育プロジェクトの充実

  特に英語・国際プロジェクトでは、ターム留学の拡充と大妻女子大学棟における放課後イングリッシュラウンジと、多摩中高棟における「英語JUKU」、英語検定試験の指導などによって、2020年度以降の新大学入試の英語4技能試験に備えます。中学3年間の成果はイングリッシュアワーで発表されます。

2 探究プログラムの実践

中学生の1分間スピーチの実施、中学3年生の「社会総合」、高校1年の「探究基礎」、きめ細かい進路指導、学年毎にテーマを持った「校外学習」などの探究プログラムの実践により、社会で起きている時事問題に対して関心を高め、生徒の知的探究心を伸ばします。

3 ICTの充実

2017年度に導入した電子黒板を活用し、タブレットを使ったアクティブラーニングをより円滑に行います。基礎力定着のためのアプリ、大学入試の調査書作成のためのeポートフォリオ(後述)も導入する予定です。

  2019年度より中学1年から高校1年まで個人用タブレットを導入。

4 「主体的・対話的で深い学び」の充実

各教科の授業において発表(プレゼンテーション)の機会を増やすとともに、「主体的・対話的で深い学び」に向けた取り組みを全学で展開します。

5 中学補習や高校受験対策講座・勉強合宿の強化

6 AIを用いたプログラミング授業の導入

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 大学入試改革について

 現在の「センター試験」に代わって、2020年度から新しいテスト「大学入学共通テスト」が導入されることが文科省から発表され、昨年11月にはプレテスト(試行テスト)が行われて各教科の問題の傾向や正答率が公表されました。「思考力・判断力・表現力」が問われるこの入試改革は、大学入試を変えるだけでなく高校と大学を繋ぐ高大接続改革であり、高校では学習指導要領の見直しと学習・指導法の改善を図ることが重点的な目標となっています。

 

11月に実施されたプレテストの問題構成や内容の特徴は次の通りです。(進研総合学力テスト編集部による分析結果に基づく)

 

特徴その1 「社会とのかかわり」や「探究活動」を意識した出題が増加

     授業における話し合いの場面やグループワークの場面が扱われるなど、今後、高校教育で重視されていく「探究活動」を意識した出題が目立った。

特徴その2 「複数の資料」を読み取り、情報を統合・考察する力の重視

     多くの資料を比較した上で情報を統合したり、多面的・多角的に考察したりするなど、思考力重視の出題意図がうかがえた。

特徴その3 記述式+新形式のマーク式問題で解答形式が多様化

     「正解が複数ある問題」「前問の解答と連動する問題」「該当する選択肢をすべて選択させたり、解答なしの選択肢を解答させたりする問題」など。

 

 

ではなぜこのような入試改革が行われることになったのでしょうか。

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 イギリスの高等教育専門誌Times Higher Education(THE)は、教育力、研究力、国際性などの分野について毎年世界大学ランキングを発表していますが、イギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学、アメリカのスタンフォード大学、ハーバード大学などは常に上位を保っていますが、近年東京大学や京都大学はアジアの大学に追い越され、2018年版ではシンガポール国立大学や北京大学、香港大学が躍進しています。日本の大学全体の教育力が問われる一方で、インターネットが急速に発達したグローバル社会では、人々はいかに他者と協働しながら生き抜くかが問われます。これからの子どもたちには両親の世代が経験したことのない予測不能で不確実性の高い社会が待ち構えています。このような社会では人工知能(AIが人間に代わって仕事をするようになり、今ある職業の半数は新しい職業にとって代わられるといいます。日本では急速な少子高齢化社会を迎えて、生産年齢人口が減少するとともに労働生産性が低下し、産業構造も変化せざるを得なくなってきます。国境を越えてヒト・モノ・カネ・情報が行き交うグローバル社会では国内だけでなく地球規模で活動することが求められ、子どもたちにも自ら問題を発見して解決する力が求められるようになります。そこで教育においても今までの知識習得・思考法重視から思考力・創造性重視へと変換を迫られ、教師はいかに教えるかではなく、目的とした力を生徒がどう身につけるか、均等に学ばせることから、生徒の学ぶ場をどう作るかが問われるようになり、大規模な教育改革が行われることになったのです。

 

新しい「大学入学共通テスト」とはどのようなものなのでしょうか。そしてその傾向は?

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 現行のセンター入試は20201月の2019年度の実施が最後となり、2020年度からは現高1が受験する「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)が行われるようになりますが、実施時期は今と同じ1月中旬の2日間ということです。ただしこの「共通テスト」は、現在の学習指導要領で学んだ生徒が受験する20202023年度版と次期学習指導要領で学んだ生徒が受験する2024年度以降では出題・解答傾向が修正されることが検討中。センター試験からの大きな違いは、「知識・技能」だけでなく大学入学段階で求められる「思考力・判断力・表現力」を中心に評価することが基礎にあり、大きく二つの特徴が挙げられます。それは①記述式問題の導入②英語4技能(読む・聞く・話す・書く)の評価です。現行では国立大学は受験生に一次試験として共通試験(現行のセンター試験)で5教科7科目を課し、二次試験として各大学がそれぞれのアドミッションポリシーに基づいた個別学力試験を実施してきましたが、2020年度以降も5教科7科目が課される予定ということです。文科省が20177月に公表した「共通テスト」の二つの特徴は次の通りです。

 

 記述問題の導入(国語、数学)(2024年度以降は地公・理も導入検討)

今進行中の教育改革では、知識や技能を習得する教育から、その知識・技能を活用して課題を解決する論理的思考力・判断力・表現力を育成する教育への変換が図られています。そのためこの「共通テスト」では国語と数学に記述式問題が出題されます。

国語では80120字程度で答える問題が3問程度、古文・漢文を除く「国語総合」から出題され、マークシート問題とは別に大問が出題される予定です。記述式導入に伴って時間は80分から100分に延長。数学は「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」受検者を対象に「数学Ⅰ」の範囲から3問程度、マークシート問題と混在の出題もあり、時間も現行60分から70分に延長される予定です。

 

   民間の資格・検定試験を活用した英語4技能評価

「共通テスト」ではグローバル社会に適応すべく英語のコミュニケーション能力の評価が不可欠になってくることから、すでに4技能評価を行っている民間の英語資格・検定試験のうち、ケンブリッジ英語検定、英検(新型)、GTEC,IELTS,TEAP,TEAP CBT,TOEFL iBT,TOEICの8種のうちいずれかを活用することになりました。受検者は高校3年生の412月までに受検した結果を活用することになります(2回の受検が可能、成績の高い方の結果を活用できる)。ただし2023年度までは大学入試センターが実施する共通テストの英語も受験し、資格・検定試験と共通テストの英語のどちらか、または両方を使うかはそれぞれの大学の判断にまかされるということです。国立大学協会は昨年11月に、一般入試の全受験生に民間試験とマークシート式の両方を課すと決めましたが、東大は受験の機会や成績の評価方法の公平性に不安が残るとして3月10日、民間試験を使わない方針を発表しました。

 

以上が「共通テスト」の主な変更点ですが、2020年度以降、国公私立大学の2次試験(個別学力試験)にも、「思考力・判断力・表現力」を評価するより高度な記述式問題が導入されるようになります。さらに各大学で志望理由書や学習計画書などの書類、小論文、面接などによって合否が決まるAO入試」「推薦入試」の定員が拡大される予定です。

 学力試験だけでは測れない多様な能力や資質を評価するために導入されるAO入試」「推薦入試」は今までも行われてきましたが、国立大学協会はこれらの入試の占める割合を2021年までに入学定員の30%とすることを目標としています。(私大は大学によってその割合は異なる。)「共通テスト」の活用で一定の学力が保証されるので、学力に加えて調査書などの出願書類と、小論文、面接、プレゼンテーションなど多様な評価方法により多面的・総合的な能力が評価されることになります。そこで必要になってくるのが生徒の評価資料としての調査書です。

20180402大学入試改革と取り組み2

 

調査書による「多面的・総合的な評価」

 現行の調査書は表に各高校が生徒の各教科の評定や特別活動の記録を記載し、裏に学年ごとに記入する「指導上参考になる諸事項」という欄からなった一枚の用紙ですが、2021年度からは、生徒の成長の状況にかかわる所見を以下の6項目の内容について具体的に記載することになります。

キャンパスの桜のつぼみ①

1.各教科・科目および総合的な学習の時間の学習における特徴等

2.行動の特徴、特技等

3.部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等

4.取得資格・検定等

5.表彰・顕彰等の記録

6.その他

 

大学入試では、従来のAO入試や推薦入試だけでなく一般入試でも同様に調査書が重視されるようになります。そこで各々の生徒は高校1年生からの活動を記録・保管しながら、大学出願時にそれらを調査書に記載して提出します。文科省では高校段階でのeポートフォリオ(生徒の学習成果や活動記録を電子化したもの)とインターネットによる出願を連動させたシステムを開発中であり、近い将来、eポートフォリオ活用による調査書が義務付けられることになるでしょう。

 

以上述べてきたように、このたびの入試改革の目的は、①基礎的・基本的な知識・技能 ②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力 ③主体的に学習に取り組む態度という学力の3要素のうち、①の基礎的・基本的な知識・技能はもちろんのこと、特に②の思考力・判断力・表現力をこれまで以上に評価することです。例えば複数の資料やデータを読み込んで自らの考えをまとめ、さらにその過程を表現する能力が適切に評価できる出題が想定されます。また2次試験にも書類審査・面接が導入されることになると、従来の学力試験で測れない学習意欲や能力を正当に評価するために調査書・志望理由書・学習計画書など、高校3年間にわたる資料の蓄積が重要になってきます。このようにして、その生徒の総合的な能力を評価して伸ばそうというのが今回の教育改革の目的なのです。

 

★★★★★★

 

20世紀型教育では、先生は黒板を使って知識と思考法を生徒に均等に教え、生徒は先生が教える「正解」を覚えることが学習の中心でした。しかし21世紀型教育では、AIが導いた結果を活かしながら、独自の思考を加えて新しい価値を生み出す創造性が重視されるようになります。タブレットを使って様々な情報を集めながら、「正しいこと」を学ぶことから「何が正しいか」を考えることへの転換が行われます。言い換えると、先生が作った教案に基づいて授業が行われるのではなく、先生は授業の先導者になり、生徒同士の話し合いによる問題発見・解決によって授業が進行します。ここでは先生自身の構想力や創造力、そして学内外との連携が問われるのです。いわば「正解」のない課題に取り組み、「納得解」を得る力を身につける学習活動と言えるでしょう。

このたびの教育改革は、これらの考え方に基づき、日本国内にとどまらず世界に目を向けて、異なる言語・生活環境に身を置いて仕事をすることを前提としています。どのような状況に置かれても、臨機応変で柔軟に対応できる力と、自ら獲得した確固たる知識に裏打ちされた自信が、これからの日本を背負う子どもたちには必要なのです。

sakura