大妻多摩中学高等学校

【校長室より】“#Me Too” と “ Time’s Up”

“#Me Too”(「わたしも」) と “ Time’s Up”(「時間切れ」)

毎年ハリウッド外国人映画記者協会会員の投票で決められるゴールデン・グローブ賞の授賞式に、3人を除いてほぼ全員の俳優たちが権力に対する抗議を表す黒のドレスやスーツを着たことがニュースになりました。ハリウッドで大きな力をもつ大物プロデューサーのセクハラに対して、被害をこうむった有名女優たちが彼を告発したのを機に、#Me Too(「わたしも」被害にあいました)と女性たちが次々に声を上げ、彼は映画界を追放されるとともに、この運動が世界中に広がり、今回のブラックドレス着用の授賞式となりました。そして女優たちが『ニューヨークタイムズ』紙に寄せた公開書簡から Time’s Upというファンドが立ち上げられ、ハラスメントの被害にあった人を支援するために、多額の裁判費用が集められているといいます。

20世紀初頭に女性たちが参政権獲得を訴えて白のドレスを着てデモ行進したことに始まり、昨年トランプ大統領の発言に抗議して多くの女性たちがピンクのニット帽をかぶって集会を行うなど、連帯を表すために同色の衣装を身につけて行う抗議運動はいままでも数多く行われてきました。しかし毎年ゴールデン・グローブ賞はアカデミー賞の行方を左右するという点でも、今回の抗議活動が今後どのように発展していくかに注目が集まっています。

個人的には、男性と同等の権利が与えられていると思われているアメリカ女性たちが、男性の暴力に対してようやく今になって声を上げ始めたことは驚きでした。また、抗議したのが社会的地位もあるセレブ女優たちだったことも意外でした。日本では俳優が社会的・政治的発言をすると問題視されることが多いですが、大統領選に見られるように、アメリカでは俳優の個人的意見が大きな影響力を持ちます。セレブさえ今まで権力に対して発言できなかったとすれば、一般の女性たちは職場でハラスメントにあっても今までは泣き寝入りせざるを得なかったのかと、アメリカにおいても弱者が声を上げることのむずかしさを感じました。

そして今回は受賞作よりも、受賞者のスピーチにも大きな注目が集まったのは興味深いことでした。長年のテレビ・映画界での功績に対して黒人女性初のセシル・B・デミル賞*が、司会者でプロデューサーでもあるオプラ・ウィンフリーに与えられましたが、その力強いスピーチは3回のスタンディング・オベーションを受け、彼女は次期大統領選に出馬するのではないかと噂されるほどです。(*『十戒』、『地上最大のショウ』などの監督セシル・B・デミルを記念した賞)

ウィンフリーは1964年に、今まで白人だけしか受賞できなかったアカデミー賞に、『野のゆり』で初めて黒人男性としてシドニー・ポワチエが最優秀男優賞を受賞した時の感動に言及し、その約20年後の1982年にポワチエが受賞したセシル・B・デミル賞が、今年自分に与えられるという喜びを語っています。彼女は武装した白人男性から暴行され路上に捨てられた黒人女性リーシー・テイラー事件を取り上げ、彼女こそローザ・パークスに公民権運動のきっかけとなるバスボイコット事件を起こさせた人物だと話しました。「女性たちは長い間、男性の暴力に対して、自分たちがこうむった被害について真実を語っても、耳を傾けても、信じてももらえませんでした。でももうそんな時代は終わりです!彼らは時間切れなのです」と。

“She lived as we all have lived, too many years in a culture broken by brutally powerful men. For too long, women have not been heard or believed if they dare speak the truth to the power of those men. But their time is up. Their time is up.”

ウィンフリーは授賞式を見ている女の子たちに次のように呼びかけ、10分近くのスピーチを締めくくりました。「新しい時代がやってきます。ついに夜が明けるのです。それはまさに今晩この会場にいる多くの卓越した女性たちと影響力のある男性たちのおかげであり、二度と再び『わたしも(被害にあいました)』と言わなくてもよい時代に私たちを連れて行ってくれる、そんなリーダーになろうと戦っている人たちのおかげなのです。」

“So I want all the girls watching here, now, to know that a new day is on the horizon! And when the new day finally dawns, it will be because of a lot of magnificent women, many of whom are right here in this room tonight, and some pretty phenomenal men, fighting hard to make sure that they become the leaders who take us to the time when nobody ever has to say “Me too” again.”

今回の授賞式では思い思いのブラックドレスに身を包んだ女性受賞者たちがスピーチの中で差別や男女賃金格差などにふれ、女性が堂々と主役を演じられる授賞式を喜び合っていました。彼女たちは女性が男性に遠慮しないで発言し、差別やハラスメントに反対できる社会を目指して、勇気をもって自らの意思を表明したのです。