大妻多摩中学高等学校

【校長室より】世界で活躍する日本人、中満泉さん

世界で活躍する日本人、国連軍縮担当上級代表(事務次長)中満泉さん

中満泉①

国連「核兵器禁止条約」採択で注目を浴びた日本人女性がいます。その人が今年の3月、国連のグテーレス事務総長から国連軍縮担当上級代表に指名された中満泉さん、この職は国連の軍縮部門のトップであり、国連本部の日本人として最高位。5月に就任した中満さんは核兵器条約制定交渉会議でも国連を代表して核保有国と非核保有国との調整にあたり、今回の核兵器禁条約採択をとりまとめ国内外でもニュースになりました。

中満さんは8月6日の広島平和記念式典に出席し、国連事務総長の代理として次のようなメッセージを代読。条約採択は「世界的な運動の結果」であり、「被爆者の方々の英雄的な努力は核兵器がもたらす壊滅的な影響を世界に強く印象づけ、核兵器廃絶を目指す運動に貴重な貢献をした」と称賛しました。

それでは中満さんとはどのような方なのでしょう。彼女は早稲田大学法学部からアメリカのジョージタウン大学外交大学院(国際関係論)を修了したのちに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に勤務、1991年の湾岸戦争勃発時には元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏の視察をサポート、翌1992年、29歳の時にはサラエボのUNHCR現地事務所所長代行に就任、2008年からは国連ニューヨーク本部の国連平和維持活動(PKO)局で政策部長、アジア・中東部長などを歴任、国連開発機構(UNDP)危機対応局局長を経て現職。国連本部の事務次長は日本人としては9人目、女性では初。

「高校時代にマザー・テレサに感銘を受け、国際貢献の仕事を目指すようになったのですが、……誰かのために働く仕事が自分に合っていると思ったのです」(『ハーパースバザー』日本版2017年9月号)と語る中満さんには、外交官であるスウェーデン人の夫との間に二人のお嬢さんがいます。彼女はキャリアも家庭も両立させているスーパーウーマンなのです。

中満泉②

中満さんが国連開発機構の危機対応局長だった2015年の3月に日本記者クラブで行った「世界の中の日本」という講演をご紹介しましょう(YouTube)。中満さんの仕事は世界で多発する紛争などの危機管理のトップとして、開発支援団体と現場の政府が機能できるよう援助したり、難民に対してただ援助に依存させるのではなく生計支援をすること。中満さんによれば、1992年にスタッフ10名でスタートした国連開発機構は2014年には64名になり、そのうち女性職員は36名、幹部職員14名の半数が女性というきわめてジェンダーバランスが取れている職場だということです。例えば日本では管理職には女性が少なく、「女性が少ないことをおかしいと思わないことがおかしい」と中満さんは指摘します。彼女によれば国連は積極的に女性を雇用する職場だが、そこには体力と気力とパッション(情熱)が必要であり、理想を持ち、自分の仕事が世界をよくするという考えが心の根幹にあることが大切だといいます。国連職員に適している人とは次の三つの要素を備えていることが大切、つまり ①マニュアルなしで自分の頭で問題を分析して判断し、行動ができること。②規律(discipline)と柔軟性(flexibility)のバランスが取れていること。日本人は時間や締め切りを守るが、危機に対応するためには、どうすれば日々刻刻と変わっていく状況に柔軟に対応できるか考えなくてはならない。③幹部職員になるにはいかに部下を引き付けられるか、部下の特性を生かして働かせる管理能力が必要。大きなヴィジョンのみを提示して、部下には自由に働くというモチベーションをもって仕事をしてもらう。また組織全体を見極める司令塔としての役割が果たせること、だといいます。

中満さんは、日本人は自己主張をあまりせず国際機関では損だと言われるが全くそういうことはないと否定します。外国語をきちんと使いこなせることが大前提ですがと前置きして、自分の言いたいことだけを押し付けない日本人が国際社会では重要な役割を果たすと言明します。彼女は相手のことをよく聞くという日本人のコミュニケーション能力が国際社会で重要だと語ります。さらに女性とキャリアについては次のように答えています。①女性であったために損はしたことはなく、むしろプラスになった。女性だったからこそ、つまり意外性があったからこそ紛争国の首相や大統領に会うことができた。②キャリアと家庭のどちらかをとるかと考えたことはない。女性も男性もきちんと仕事と家庭を両立できる社会でないと普通の社会とは言えないと考える。③日本では女性が輝く時代というが、今変えないと変わらない、社会を変えるにはスピード感を持たないと変革できない。

国連は女性の結婚や妊娠・出産に理解ある職場だと語る中満さん。日本社会にいまだ根強い妊娠への無理解にジレンマを感じると言う彼女は「(日本では)勤務先に妊娠を伝える際、『ご迷惑をおかけして』と謝る女性がいると知り、ショックでした。社会やコミュニティ全体で子育てを支援する姿勢は昔の日本にはあっただろうに、今の日本人は働きすぎて疲弊しきっていて他者を思いやることができない、それが心配です」と語っています。(『ハーパースバザー』日本版)現在はニューヨーク勤務、お嬢さんのお弁当作り、家族そろっての夕食は欠かしたことがないそうです。

中満さんの今後の活躍によって世界が平和に導かれるよう願うばかりですが、これから世界に羽ばたいこうとする生徒の皆さんにとっても、彼女の仕事ぶりはきっと力強い後押しになることでしょう。YouTubeの「世界の中の日本」もぜひご覧ください。