大妻多摩中学高等学校

【校長室より】国連「核兵器禁止条約」採択、条約制定交渉会議場に残された折り鶴

国連「核兵器禁止条約」採択、条約制定交渉会議場に残された折り鶴

 

2017年7月7日、核兵器の開発や保有と使用を法的に禁止する「核兵器禁止条約」が、ニューヨークの国連本部で開かれた条約制定交渉会議で採択されました。広島と長崎への原爆投下から72年が経過し、日本からの被爆者も会議に参加する中、人道的見地から核兵器の存在を否定する条約が誕生したのです。採択には、国連加盟193か国から124か国が出席、投票は122か国が賛成、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国として交渉に参加したオランダは反対、シンガポールは棄権しました。

しかし、アメリカなど核保有国9か国とアメリカの「核の傘」に守られている日本など28か国はこの会議に不参加でした。日本が参加しなかったのは「北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思われない」という理由からです。世界で唯一の被爆国である日本は、本来なら本条約採択に際してリーダーシップをとるべきところ終始立場を明らかにせず、会議には参加しないことを表明したのです。これに対して出席した国々や被爆者は、いっせいに日本政府のこの決定に不満の声を上げました。

折り鶴

この条約採択に先立つ今年3月28日、国連本部で開催された第一回核兵器禁止条約制定交渉会議場には、不参加の日本の席に日本に参加を促す平和の使者である白い折り鶴が一羽置かれていました。置いたのはNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」の代表者だといいます。また、100か国以上が参加した6月15日から7月7日まで続いた交渉会議でも、核兵器をもつ国々とアメリカの「核の傘」に安全保障をゆだねる日本の代表の姿はなく、その空席にはやはり折り鶴が置かれていたのです。この時は、広島市長とともに渡米した被爆者の一人が「唯一の戦争被爆国の日本にこそ、核廃絶に向けてリーダーシップをとってほしい」と願って持参した折り鶴を置いたといいます。いずれも日本こそ核兵器禁止条約に賛成してほしいという願いと、不参加を決めた日本政府に対する抗議の意味合いが込められていました。

核兵器禁止条約の採択から初めて迎えた8月6日の広島原爆の日、松井広島市長は「核兵器禁止条約の締結促進を目指して核保有国と非核保有国との橋渡しに本気で取り組んでほしい」と政府に要望しました。また9日の長崎原爆の日には、田上長崎市長が平和宣言を述べ、その中で次のように強い口調で政府に抗議しました。

「日本政府に訴えます。核兵器のない世界を目指してリーダーシップをとり、核兵器を持つ国々と持たない国々の橋渡し役を務めると明言しているにも関わらず、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できません。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への一日も早い参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直しを進めてください。日本の参加を国際社会は待っています。」(『朝日新聞』より抜粋)

核保有国と非核保有国の間に分断がある限り、そしてアメリカの「核の傘」の下にいる限り、日本が双方の橋渡しをし、核兵器の非人道性を訴えて条約に賛成することは大変難しいことに思われます。まして核軍縮どころか核軍拡に向かいかねない世界の様相をみるにつけ、折り鶴の願いが核保有国のリーダーたちに届く日が来ることを願うばかりです。