大妻多摩中学高等学校

【校長室より】「王子様を待たないで、お寿司も指輪も自分で買おう」

「王子様を待たないで、お寿司も指輪も自分で買おう」

毎日かあさん①

なんともセンセーショナルな一文だと思いませんか。毎日新聞の16年にわたる連載マンガ『毎日かあさん』で卒母(そつぼ:母親を卒業すること)をした漫画家西原理恵子さんの、母から娘への生き方本『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(角川書店)の帯に書いてあるキャプションです。

『毎日かあさん』は西原さんの代表作、フォトジャーナリストである夫との間に一男一女をもうけるも離婚。彼女は母子家庭となったその後の働きながらの子育てを描き、同年代の女性や同様の境遇の母親から大きな共感を集めました。本作品で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をはじめ、手塚治虫文化賞短編賞、第40回日本漫画協会賞参議院議長賞を受賞。テレビアニメ化、映画化もされました。

『女の子が生きていくときに~』は二人の子育てを終え、自らの娘時代を振り返るとともに、16歳で自立するという娘に対するまじめで破天荒な「生き方指南」をまとめたものです。波乱に満ちた少女時代を過ごした西原さんは、19歳で故郷の高知から上京し、美大を卒業したのち、漫画家としてようやく一人前の生活が送れるようになったとき、ようやくこれで風邪をひくことができると思ったそうです。

「自分の足で歩けるっていうのは、つまり、自分でちゃんと稼げるってこと。……自分で働いて、お金を稼ぐっていうのは、そうやって、ひとつひとつ、自由を勝ち取って行くことなんだと思います。」「大事なのは、自分の幸せを人任せにしないこと。そのためには、ちゃんと自分で稼げるようになること」。 実生活では仕事でも家庭でも人一倍苦労をしながらも、その作風で人気漫画家としての地位を築いた西原さんですが、娘に対して、「女の子こそ、生きていくための戦略を立ててください」と書いています。「夢は追い求めるものではなくて、自分でつかみとるもの」などといいますが、西原さんは「夢なんか、そうそうかなわない。夢をつかむことより、たとえ夢破れても、そこから立ち直ることのできる方が大事。転んでもいいから、また、顔をあげる、そういう女の人になってください」と言います。

自らの愛憎入り交じった母娘関係を経て、夫との凄絶な関係と彼の死を乗り越え、そして二人の子どもを育てた西原さんの、自立しようという娘への言葉は「どんな時でも、次の一手は、自分で考えて、自分が選ぶ。王子様を待たないで。幸せは、自分で取りにいってください」です。

一方、娘より先に自立した息子は、16歳のときにアメリカ留学を決意しサンディエゴに渡り、帰国して開口一番「いつも世話をかけてごめんね」を言われてハグされたとき、西原さんは「なんか留学すげえ! 子どもには外メシ食わせるのが一番なのかも」と思ってしまいます。息子さんはなんと「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと言葉にして言うようになった、彼が留学して一番変わったところはそこだったといいます。

「優しくていい子になってね」と世の親は娘に言うけれど、「自分さえ我慢すれば」は間違い、「まず自分がちゃんと幸せにならなくってどうする」と西原さんは言います。「結婚か、仕事かだったら、どっちもとってください。……どっちかを諦めなきゃいけないなんて、おかしい。子育てか、仕事かでも、どっちもとりましょうよ。」 西原さんの本音まるだしの言葉には実体験に基づいた重みがあります。

安倍首相は「すべての女性が輝く社会づくり」を目指し、女性のためのエンパワーメント、女性の活躍促進のための取組みをするとおっしゃるけれど、現実的には日本はまだまだ男性中心の社会ですし、女性が十分に輝いているとはいえません。スローガンだけならいくらでも言うことができますが、女性が本当に輝くためにも、少女のときから、地に足をつけて人に頼らずに生きる姿勢を学ばなくてはならないと思います。

この本には「母が娘に伝える幸せの極意」という副題がついていますが、これから船出をしようとする娘に対して母が託したメッセージです。娘である生徒のみなさんが読んで、「なるほどお母さんはこういう風に考えているんだ」と納得するのも良し、「反抗ばかりしてごめんなさい。それで、お母さんは本当はどう思ってるの」と聞いてみるのも良いかも知れません。母と娘というのは切っても切れない関係にあって小説や映画の題材になることも多いのですが、お母様たちには、西原さんのようなたくましい母娘関係もあるのだなと思いながら読んでいただくのも良いかもしれません。
図書館に入れますので、興味のある方は読んでみて下さい。