大妻多摩中学高等学校

【校長室より】夏服を着た少女たち

夏服を着た少女たち(Girls in their Summer Dresses)

 

夏服①

 

5月を半ばも過ぎると、生徒たちのほとんどは白長袖の合服に着替え、登校風景がいっぺんに明るくなります。四季がはっきりしている日本では昔から「衣替え」といって、6月1日になると制服は夏服になり、人々も薄い夏の衣類に変えたものでした。でも最近のように4・5月でも急に暑くなることがあると、季節に関係なくTシャツに着替えたりします。

夏服③
夏服を着た女たち
アーウィン・ショー

毎年この季節になると思い出されるのが、アメリカの作家アーウィン・ショー(1913-1984)が書いた「夏服を着た少女たち」(‘Girls in their Summer Dresses’)です。書かれたのは1939年、第二次世界大戦が始まった年ですが、本土が直接戦争の影響を受けなかったニューヨークのマンハッタンには30年代までに現在見るような高層ビルが立ち並び、休日ともなればおしゃれなニューヨーカーがマンハッタンの5番街をそぞろ歩きしていたといいます。

この短編は、マイケルとフランセスという夫婦のある日曜日のちょっとした出来事を描写しています。季節は春の兆しの見え始めた2月、二人はダウンタウンのグリニッジ・ビレッジから南にワシントン・スクエアをめざして歩いています。彼らは結婚5年目のカップル、新婚ではないけれど、かといって中年にさしかかっているわけでもない、子どもがいるかどうかはストーリーからは不明ですが、おそらくいないと思われます。彼らはマンハッタンを南北に走る5番街をウィンドウショッピングしながら日曜日をどう過ごそうか話しながら歩いていますが、マイケルはむこうからスタイリッシュな女性が来ると、妻と歩いていることをつい忘れて振り返ってしまいます。「振り返るほど美人じゃないわ」とフランセスは言いますが、地方出身のマイケルはニューヨークに出てきて以来、レストランでも、地下鉄でも、劇場でも、コンサートでも、どこに行っても素敵な女性がいると思わず振り返ってしまうのです。インテリ風の眼鏡をかけたOL、スカウトされるのを待っている女優の卵、メイシーズデパートの店員、ユダヤ人、イタリア人、アイルランド人、中国人など、きれいな女性ならだれでも彼は振り返らずにはいられない。「とくに季節が暖かくなって、女性たちが夏のドレスを着るようになると......、僕は彼女たちを見ずにはいられないんだ。」(and when the warm weather comes, the girls in their summer dresses,...I can’t help but look at them.)そう言うマイケルにフランセスは腹を立てながらも、いつものことだと思って結婚生活を続けていく、という話です。

みなさんにはちょっと大人のストーリーかもしれませんが、夏のドレスを身にまとうと女性たちがきれいに見えるってなんとなくしゃれたストーリーだと思いませんか? 女性を美の対象として見ていて差別的だとか言わないで、ちょっとした会話を交えながら男女の機微をさらっと書いているところに、ショーの作品が時代を超えて読まれている理由があるのでしょう。

夏服②

注)日本でも1979年に常盤新平訳で講談社から出版されて以来、とてもよく読まれている短編です。