大妻多摩中学高等学校

【校長室より】Black Lives Matter

Black Lives Matter. 「黒人の命だって価値がある」

ダニエル・ブレイク①

 

みなさんはこの言葉を聞いたことがありますか?省略してBLMともいいます。
‘Lives’は ‘Life’の複数形、‘Matter’は動詞で「重要である」という意味です。つまりこの言葉は「黒人の命は大切だ、黒人の命だって価値がある」という意味です。

トランプ政権誕生以来、彼の強行な難民・移民対策がクローズアップされていますが、近年アメリカにおける白人警官による黒人青少年に対する暴行事件、射殺事件がメディアをさわがせていたことをみなさんはご存知でしょうか。2012年にフロリダで黒人高校生が白人自警団に射殺された事件を契機に、2014年、2015年にも白人警官による黒人射殺事件が相次ぎました。そこで黒人および人種差別に反対するグループが‘Black Lives Matter’というスローガンを掲げて、黒人の命をないがしろにしてはならないとデモ行進をしました。この言葉は、ラッパーのケンドリック・ラマーの‘We gon’be alright’(我々は大丈夫)というメッセージソングとともに全米に広がり、各地で警察の人種差別に対するデモが広がりました。オバマという黒人大統領が誕生したにもかかわらず、1950年代の公民権運動当時の黒人差別がいまだに行われているのです。

アメリカはもともと移民によって出来た多民族国家です。国勢調査の結果2050年には建国以来優位だった白人WASPの数が少数派に転じる、すなわち、アフリカ系、ラテン系、アジア系、イスラム系などの少数民族の数が白人の数よりも多くなることが推定されています。この場合WASPというのはWhite Anglo-saxons Protestantの男性を意味します。アメリカ第一主義、白人男性の優位性を掲げているトランプ大統領は、初の議会演説で、彼の難民・移民政策がうまく国民に伝わっていないことを認めましたが、彼と彼の支持者は、少数派および移民たちが彼ら主流アメリカ人の生活を脅かしていると考えていることは事実です。

アメリカでは今人種の話をするのはタブーだと言われています。黒人たちの多くは表面的には「アメリカ社会で人種など関係ない」「抑圧されているのは人種に由来するのではなく、個人の責任だ」と言います。『スターウォーズ』や『インディジョーンズ』の監督であるジョージ・ルーカスの現在の妻であるメロディ・ホブソンは黒人です。彼女はTEDのスピーチで、人種の違いを気にしないようにふるまう人のことを‘Color Blind’だと言っています。文字通りの意味は色の区別が付かないことですが、‘Color Blind ’とは人種偏見がないという意味でも公平という意味でもないとメロディは言います。彼女はプリンストン大学を卒業したエリートで、シカゴの投資会社ArielのCEO(代表取締役)なのですが、会議のためにある会社の受付に行ったとき、きちんとした身なりをしていたのに、調理場の求人面接と間違われたことがあるといいます。人々は表面的には人種を気にしないと言いながら、肌の色で差別をしていたのです。メロディはこのスピーチの中で、‘Color Blind’ではなく‘Color Brave’になろうと言っています。「今こそ人種について話すときです。黒人、白人、アジア系、ヒスパニックなど、さらに男性も女性も、親も教師も企業家も科学者も、すべての人が次世代のこどもたちのために、誠実に勇気をもって人種について話しましょう」、TEDで彼女が訴えたのはこういうことだったのです。

日本では肌の色はあまり話題に上らないかもしれませんが、ファッション誌のモデルに欧米系の白人やハーフのモデルを使う傾向があるのも、日本人の心の中にある白人崇拝の表れなのかもしれません。海外に行けば、私たち日本人はアジア系、有色とみなされます。世界では肌の色、どの民族かによって政治が動くのです。トランプ大統領の誕生とともにヨーロッパ各国でも広がっている自国第一主義ならびに不寛容の精神に対して、日本人としてもう少し肌の色を意識してもよいのではないでしょうか。