大妻多摩中学高等学校

【校長室より】2017年度 新入生のみなさん

 

新入生のみなさん②
新入生のみなさん、大妻多摩中学校にご入学おめでとうございます。
ご父母のみなさま、ご家族のみなさま、お嬢様のご入学をお祝い申し上げます。

日本では入学式は4月のはじめ、桜が満開の季節に行われますが、花が咲き木の芽が吹き出す春は、ものごとのスタートにまさにふさわしい時だと思います。みなさんの晴れの門出を祝うようなSpring「春」というイギリスの詩をご紹介しましょう。

Spring, the sweet spring, is the year’s pleasant King,
Then blooms each thing, then maids dance in a ring,
Cold doth not sting, the pretty birds do sing,
Cuckoo, jugjug, pu-we, to-witta-woo?

「春、甘美な春は四季の中でも陽気な王様だ
花々が咲き誇り、少女たちは輪になって踊る
寒さは肌をさすこともなく、かわいい小鳥たちは歌う
カッコー、ジャグジャグ、ピュウィッタウィッタウ!」

輪になって踊るのはみなさんです。ここ多摩は小鳥のさえずりがしょっちゅう聞こえます。カッコーもいますし、鶯は初夏までその美しい声を聴かせてくれます。

新入生のみなさん①

さてみなさんは、中学に入学して勉強の新しいステージ、つまり舞台に立ったところです。中学では図書館に行って調べたり、クラスメートと話し合いをしながら意見をまとめて発表したり、実験や観察をしたりします。体育祭、文化祭、合唱祭などの学校行事では、一人ではなく、クラスのみんなと力を合わせて共同作業をしなくてはなりません。修学旅行や都心巡検など、学校の外に出て学習する機会もたくさんあります。日本を離れて海外に飛び出し、グローバルな視点でものを見ることも重要です。机に座って勉強するだけが勉強ではありません。

では人は何のために勉強するのでしょうか。知識や技能を身に着け、視野を広げてよい大学に入り、よい職業につくためでしょうか。現在、これまでにないほどの大規模な教育改革が始まっています。2020年に始まる大学入試改革もそのひとつです。中学生になったばかりなのにもう大学?と思われるかもしれませんが、今からその準備が始まっているのです。
この新しい教育改革では、「何を理解しているか、何ができるか」「理解していること、できることをどう使うか」、「どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか」という、将来の展望にまでおよぶ壮大な計画なのです。みなさんには、学んだことをどう社会に生かせるかという人間力が求められているのです。
実は、今申し上げたことは大妻学院の創立者である大妻コタカ先生がはるか昔から実践していたことでした。

今から130年以上前の明治17年に広島県の山間(やまあい)の盆地でうまれたコタカは、2歳で父を亡くし、母親の手で育てられます。山奥の小学校ですから、教員は校長先生ともう一人だけ、その先生が公用で学校をあけた時は、教え方の上手なコタカが、自分の得意な勉強を下級生に教えたといいます。たまたまその様子を見た校長先生が「コタカさんは教え方がうまいね」とおっしゃった。生徒同士で教えあうというのは今でいう「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)だと思います。これは、生徒は机に座って先生のお話を聴くだけでなく、グループで話し合いをしたり、自分の考えをまとめて発表したりする学び方のことです。

先生に褒められたコタカは、そのとき、大人になったら人に教える立場になろうと思ったそうです。人一倍の努力家のコタカは、精一杯勉強し、卒業式には成績一番で名前が呼ばれると思っていたのですが、真っ先によばれたのは男子でした。当時は女子には教育はいらないという時代でした。「男に負けてはいけない。がんばりなさい」と女生徒を励ましてくれた男性の先生のおかげでコタカは勉強を続けることができたといいます。

コタカは17才で母校の小学校の代用教員の職を得ましたが、「勉強を続けなさい」という母の教えを守り、さらに高い裁縫の技術を身に着けようとがんばるのです。当時、東京を中心に女子の高等教育機関がたくさん創立された時代でした。コタカが勉強を続けることに最初は反対だった兄も次第に折れ、コタカは親せきを頼ってようやく上京を果たします。コタカは和裁だけでなく当時は珍しかった洋裁の技術も学び、こどものころの夢だった裁縫と手芸の先生になります。コタカにとっては自分で学んだことを教えることによって社会に貢献できましたし、一方生徒は、和洋裁の技術を身に着けるということによって経済的に自立することができました。

一口に社会貢献といいますが、何もすべての女性が仕事をすることが社会貢献という意味ではありません。「良き妻たれ、良き母たれ、良き社会人たれ」とコタカ先生がおっしゃるように、母親としてこどもを育てることも大きな社会貢献なのです。

みなさんは今日から大妻多摩の生徒としての学校生活をスタートさせます。この機会を与えてくださったご両親に感謝して、多くのことを吸収してください。チャンスはみなさんの前にあります。みなさんの夢の実現のために、私たち教職員はみなさんを全力でサポートします。これで入学のお祝いの言葉とさせていただきます。