大妻多摩中学高等学校

【校長室より】LA LA LANDのLAはロサンゼルスのLA

 

2016年度第89回アカデミー賞で14部門にノミネートされ、作品賞受賞最有力候補だったこの作品、受賞式でプレゼンターのウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイによって「最優秀作品賞は『ラ・ラ・ランド』!」と読み上げられた直後に、担当者が間違った封筒を渡したことが判明、すぐに取り消されたためにステージ上が大混乱した記念すべき作品です。作品賞は逃したものの、主演のエマ・ストーンが主演女優賞、弱冠32歳のデイミアン・チャビル監督が監督賞を受賞するなど最多の6部門で受賞しました。

売れないジャズピアニストと女優の卵のロマンスというと、二人そろって夢を追っている間はいいのですが、どちらかが売れるとその関係はどうしてもぎくしゃくしてしまうものです。マーティン・スコセッシ監督の『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977)のサックス奏者と歌手、オペラ『ラ・ボエーム』を下敷きにしたミュージカル『レント』(1996)のミュージシャンとダンサーなど、『ラ・ラ・ランド』が下敷きにしたであろう作品はいくつか思いつくのですが、わざわざ過去の作品を下敷きにしたことを観客に悟らせながら、「これがぼくの作品なんだ!」と自信満々で監督が言っているようなそんな作品です。

『ラ・ラ・ランド』はロサンゼルスを舞台にしていますが、スクリーンを見ながらわたしの頭に浮かんだのはパリを舞台にした二つの映画、ジャック・デゥミ監督による『シェルブールの雨傘』(1967)と『ロシュフォールの恋人たち』(1964)でした。確か中学の映画鑑賞会で『シェルブールの雨傘』を見た記憶があるのですが、台詞がなく、登場人物が急に歌い出すので最初は違和感があったのを今でも思い出します。今でこそミュージカルはストーリーの途中で急に歌い出したり踊ったりするとわかっているのでびっくりしませんが、はじめてこの映画を見たときにはなんて不自然なのだろうと思い、ストーリーが頭に入りませんでした。

『ラ・ラ・ランド』のストーリーは4つの季節に分れており、映画スタジオのコーヒーショップでウエイトレスをしながらオーディションを受け続けている女優志望のミアと、ジャズバーのオーナーに言われるままにつまらない曲を弾いているピアニストのセバスチャンが出会うのが「冬」。「春」「夏」と季節が巡り、二人は惹かれあいますが、生活の安定を求めて意に沿わないバンドでピアノを弾くセバスチャンと、夢を追い求めるミアとの間に少しずつ気持ちのすれ違いが生じていきます。そして最終章、蛇足とも思える場面展開にちょっと引き気味になりながらも、なるほどこう来たかと納得する結末です。

ララランド②

夢のように現実離れした映画の都ハリウッドを表わす『ラ・ラ・ランド』というタイトルが示すように、冒頭では、シネマスコープのワイドスクリーンにロサンゼルス空港から市内に向かうハイウェイの車列が映し出され、それに続く渋滞したハイウェイ上のダンスシーンにまず圧倒されます。50年代のテクニカラーを思わせる目にも鮮やかな原色の風景が広がる、わくわくするようなスタートです。夜のグリフィス公園でのミアとセバスチャンの古典的ハリウッドミュージカルのようなダンス、グリフィス天文台での星空に舞い上がるダンスなど、様々なミュージカル映画のダンスを彷彿とさせるシーンがこの映画の見所ですが、もう一つの主役はロサンゼルスの街そのものです。摩天楼そびえるニューヨークではなく、日の光がさんさんと降り注ぎ、色と光とが織りなすまばゆいばかりの自然、広告看板までもカラフルなペンキで塗り立てられ、ストーリーは現代なのに、5,60年代にタイムスリップしたような錯覚を覚えます。個人的にはセバスチャンを演じたライアン・ゴズリングのピアノとダンスにしびれました。

ちなみに、『ラ・ラ・ランド』は日本語で言うときには「ラ・ラ・ランド」のように二番目のラを高く言いますが、英語ですと、アカデミー賞受賞式でもお聞きになったと思いますが「ラ・ラ・ランド」と最初のラを強く言います。