大妻多摩中学高等学校

【校長室より】『人生を危険にさらせ』

『人生を危険にさらせ』須藤凜々花(NMB48)+堀内新之介(政治社会学者)

人生を危機にさらせ

昨年3月末に出版されて以来、アマゾンなどでもランキングされたこの本、「将来は哲学者になりたい」と公言するNMB48の須藤凜々花(りりぽん)と政治社会学者の堀内新之介氏の共著である「哲学入門書」。というか、哲学少女であるりりぽんが堀内氏の講義を聞きながら自分の考えを述べたり、反論したり、納得したりするポップな哲学書です。本書は「生きるということ」、「愛するということ」、「自由になること」、「正義(ただしい)ということ」、「大人になること」の5章から成っており、各章の最後にはりりぽんのコラムがついており、巻末にはアリストテレス、プラトン、ソクラテス、カント、ニーチェ、ハイデガーなどの人名や『ソクラテスの弁明』、『実践理性批判』、『ツァラトゥストラはこう言った』、実存主義、ポストモダンなどの事項説明と参考文献一覧が載っています。この本のトータルプロデューサーは秋元康氏、タイトルの『人生を危険にさらせ』は、りりぽん呼ぶところの「ニーチェ先輩」の言葉です。

りりぽんが哲学に興味を持ったのは、中学生の時に感じた「わたしは何のために勉強しているのだろう」という疑問からだったといいます。暗記中心のテストに追われ、成績ばかりを気にする毎日に空しくなったとき、中学校で試験的に行われた「哲学」に出会ってすっかり夢中になったといいます。りりぽんは「勉強しなさい」とは一言も言わなかった母親に感謝しています。そして彼女がたどり着いた境地は「自律した自由な個人でありたい」ということでした。

ただしこの本は哲学を学びたい人のための入門書というわけではありません。あくまでりりぽんが読んだ(理解した)哲学書についてや同年代の女の子(男の子も)が感じたであろう人生における疑問や解答などが、りりぽんの頭と心を通して語られると言っていいでしょう。どこかの書評にあったように、西洋哲学を語るときに知識としてなくてはならない宗教(キリスト教)についての言及がありませんし、哲学理論が体系的に述べられているわけでもありません。中高生の生徒のみなさんは、りりぽんが中学生の時に抱いた疑問「なぜ勉強をするのか」と同じ視点から、彼女と堀内氏の講義・対話を読みながら、わからないことがあったら自分で調べてさらに知識を深めるとよいでしょう。

ところで、私はこの本を知り合いのお寺のご住職から紹介されました。彼は77歳なのですが、週刊誌でりりぽんが学者の先生と対談しているのを読んでこの本に関心がわき、すぐ買って読んだそうです。彼はものすごい読書家なのですが、自分が読んだ後はその本を若い人にあげて読んでもらうのだとか。というわけで、わたしもこの本を図書館に置いておきますので、興味がある方は手に取って読んでみてください。