大妻多摩中学高等学校

【校長室より】ディズニープリンセス

ディズニー・ピクチャーズの作り出したキャラクター、ディズニープリンセス

 

 2017年の4月に公開されるウォルト・ディズニー・ピクチャーズ製作の実写版『美女と野獣』の原作は、18世紀フランスのヴィルヌーブ夫人の『美女と野獣』(La Belle et la Bete)ですが、話の展開としてはこれを少し短縮したフランスのボーモン夫人作の『美女と野獣』の方がより知られているようです。

3人の息子と3人の娘をもつ商人が、町への帰り道に野獣の館に迷い込み、末娘ベルが欲しがっていた赤いバラを1本摘んだところに野獣が表れて、家に帰りたければ娘を差し出すように商人に迫ります。野獣の館に住むことになった心やさしいベルは野獣からプロポーズされますが、これを拒否。ベルは許されて一時帰宅しますが、失意のあまり衰弱しきった野獣の夢を見て、急ぎ野獣の館に駆けつけます。彼女が愛を告白すると野獣はハンサムなプリンスに変身して二人は結ばれます。

美女と野獣③
美女と野獣②

ディズニーは伝承童話やグリム・アンデルセン童話などから残酷かつ差別的な要素を取り去り、ディズニープリンセスというキャラクターを主人公として、夢のようなファンタジーワールドを作り出してきました。すべてのお話が「むかしむかし」(Once upon a time)から始まり、「二人はそれから末永く幸せに暮らしました」(They all lived happily everafter.)で終わります。一般的にディズニープリンセスといえば高貴な生まれで容姿端麗と決まっていますが、時代の流れに従ってその性格付けは少しずつ変化していることがわかります。初期の『白雪姫』(1937)の白雪姫、『シンデレラ』(1950)のシンデレラ、『眠れる森の美女』(1959)のオーロラ姫の3人のプリンセスは美しく気立てが良いが、王子に選ばれるのを待つだけの受け身のプリンセスです。しかし70年代以降の第二波フェミニズムを意識して、ディズニー初の女性脚本家がシナリオを書いた『美女と野獣』(1991)のベルは読書好きで知識欲旺盛、狭い地域社会から広い外の世界へのあこがれを持つ行動派です。ベルはプリンセスの仲間に入ってはいますが一般家庭の生まれであり、プリンセスになりたいとも思っていません。アニメ版では野獣の対抗相手として原作にないイケメンのガストンが登場しますが、ベルは彼の外見に惑わされることなく、彼の求婚を拒絶します。

アニメ版『美女と野獣』では、レモンイエローのドレスを着たベルが野獣と踊る二人きりの舞踏会のシーンが印象的です。ディズニーのコンセプトで原作を脚色しているので、通常のディズニープリンセスの脇を固める人間の言葉を話す動物たちの代わりに、魔法で家具調度品に姿を変えられた給仕頭ルミエール(燭台)、執事のコグスワース(時計)、メイド頭のポット夫人(ポット)のような従者や召使いたちが登場します。劇団四季のミュージカルでもこれが踏襲されていて、彼らが登場すると一気にお子様向けのミュージカルという雰囲気になります。しかし野獣と出会ったベルが成長していく原作に対して、ディズニー版では野獣の成長に彼女が手を貸すという展開になっており、瀕死の野獣にベルが愛の告白をすると魔法が解けて野獣は王子に変わり、フェミニズムはどこに行ってしまったのか、女性がハンサムな男性と結婚してめでたしという従来のプリンセスものと同じ結末になっています。

さて今回の実写版『美女と野獣』は91年のアニメ版を下敷きにしているといいますが、フェミニストのエマ・ワトソンが主演する以上、女性の自立と社会参加に重きが置かれないはずはありません。ミュージカル映画を手がけたビル・コンドンが監督、イアン・マッケラン、ユアン・マクレガー、エマ・トンプソンなどのイギリス人ベテラン俳優が脇を固めるほか、ミュージカルで何度もトニー賞を受賞しているオードラ・マクドナルドもワードローブ役で出演、きっと楽しい映画になることでしょう。