大妻多摩中学高等学校

【校長室より】『九十歳 何がめでたい』

佐藤愛子著 『九十歳 何がめでたい』

 

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先週は二十一歳の栗原類くんの著書を紹介しましたが、今週は今年九十三歳になる佐藤愛子さんの『九十歳 何がめでたい』をご紹介します。この本は佐藤さんが九十歳の時に女性誌に書き始めた連載をまとめたものですが、表題からして意気軒昂な様子が伝わってきますね。

佐藤愛子さんといえば『戦いすんで日が暮れて』で直木賞(1969)、『幸福の絵』で女流文学賞(1979)、『血脈』菊池寛賞(2000)、『晩鐘』で紫式部文学賞(2015)など60年以上執筆活動を続け(ご本人の弁によれば「二十五歳で小説なるものを書き始めて今年で六十七年」)、小説のほかにエッセイを多数執筆していらっしゃいますが、いつもなにかに怒っている強い筆致が印象に残っています。『晩鐘』執筆後、九十歳を過ぎた愛子さんがのんびり老後を過ごしたいと思っていたものの、のんびりどころか人にも会わなくなるとだんだん生きる気力がうせて、「老人性ウツ病」になりかけたときに依頼された原稿、日頃の怒りがまたふつふつと燃えさかってきたというのが本著執筆の動機らしいです。

年を重ねて体力は落ちても「憤怒の孤独」が押し寄せ、スマホ使用によって「日本人総アホ時代」に突入かと怒る。新聞の人生相談を読んでは「自分の弱さと戦う!戦わないで嘆いているのは甘ったれだ!」とエキサイト、デパートのトイレに入れば誤って緊急警報装置の紐を引っ張ってしまい店員が駆けつける、といった調子。確かにデパートや大型店舗の最新式水洗トイレはそれぞれ様々なレバーやボタンがあるので、お年寄りでなくても戸惑うだろうなと思います。「怒りは私の元気の素だった。特に活力を与えてくれたのが毎日のようにかかるいたずら電話だった」と書いているように、身の上相談、愚痴電話、無言電話にも面白がって相手をしていた昔を懐かしむ。そして連載の最後には「長生きするということは、全く面倒くさいことだ」と言いつつ、「ヤケクソの力で連載を続け」、あげくの果ては「いちいちうるせえ!」と怒鳴る。そうこうしているうちにご本人も元気を取り戻し、読者も抱腹絶倒しながら元気付けられるのです。

人が良すぎてたびたび寸借詐欺にあったり、愚痴電話に付き合うことはないにしても、私自身最近のスマホやタブレットにはついていけず、若い人の話し方や行動に怒り心頭に発するのは同感、いちいち愛子さんのおっしゃることにごもっともとうなずくのは年取った証拠と考えつつも、愛子さんの怒りのエネルギーには感心します。

生徒のみなさんが「年寄りってこんな考え方するんだ」と、ご自宅のおじいちゃまやおばあちゃまの考え方を理解する上でも、一度手に取ってみたらいかがでしょうか。