大妻多摩中学高等学校

【校長室より】16歳 親と子のあいだには

16歳のあなたに

 

16歳親と子のあいだには①

 高校生になると誰もが将来何をしたらよいのか、漠然と、なんとなく将来のことを考え始めます。あちこちの大学のオープンキャンパスに行っても、行くたびに志望校が変わってしまう。どの大学も魅力的だと思う反面、本当に自分の進むべき学部なのか見極めることができない。大学卒業後の職業選択にしても同じようなことが言えます。世の中には情報があふれ、無数の選択肢が与えられていても、どんな職業を選ぶべきなのかわからない。こういうことは親しい同級生にもなかなか話せないし、まして親に相談しても答えがでるなんて思えない。「体は大きいけれど部活と受験で手一杯、いろいろと興味の幅は広がるけれどまだ親世代の話にはついていけない、……高校時代は、いわば『距離のとりにくい親子関係』の時期なのではないでしょうか。聞きたいけど聞けない、近寄りたいけど近寄りがたい、助けて欲しいけど頼みにくい」 将来どんなことをしたら社会貢献できるか今から考えましょうなどと学校で言われても、自分が何に興味があるのすらわからない。

「確立しないアイデンティティ、集団の中に埋没してしまう個性。自分は誰なのか、何をしたいのか、何ができるのか。…..ネットやマスメディアにはさまざまな情報が氾濫していますが、かといってその中に自分が参考にすべきロールモデルがなかなか見つからないのが現状でしょう」

高校生の時に『宇宙からの帰還』(立花隆著、中公文庫)という本を読んで宇宙飛行士になりたいと思った野口聡一さんは、『16歳 親と子のあいだには』(平田オリザ編著、岩波ジュニア新書)のなかでこのように書いています。この本は、作家、音楽家、教育家、舞踊家などそれぞれの道で有名になった人たちが自分の16才の頃を振り返って、ちょうど思春期を迎えた読者に対して人生の指針となることをまとめたものです。高校時代の野口さんは陸上部員で、毎日校庭で練習に明け暮れる毎日を送りながらボーイスカウトの活動を続けていたそうです。そして一冊の本との出会いから、宇宙飛行士を目指すことになるのですが、単に宇宙飛行士という職業に憧れたのではなく、宇宙飛行士だった人たちの帰還後の人生観の変化を読んで、飛行士は脚光を浴びる花形の職業ではなく、帰還後の生活には注目される者の悩みもあることを知ります。野口さんは2001年ディスカバリー号の搭乗員に任命されるもコロンビア号の事故により中断、2005年に15日間の宇宙体験の後、2009年12月にはソユーズに搭乗し、国際宇宙ステーションに5ヶ月滞在して2010年6月に地球に帰還した体験をもっています。

「……真摯に生きる人生は一瞬一瞬が意味を持ち、輝きを持っているはずです。客観的にではなく主体的に生きる。物質的でなく感性的に周りをも見る。外からの評価ではなく内なる声に耳を傾ける。他者を愛して、尊重することで自分自身の生命の尊さにも気がつく。そして、自分が目指すものに向かって、今できることを一つずつ自分の手でやっていく。それが真摯に生きるということでしょう」 両親との距離感を計りかねて悶々とした過ごした野口さんの16歳の頃の思い出は、今16歳の皆さんの気持ちとも通じるところがあるのではないでしょうか。一人ひとりがさまざまな可能性と夢を持って生きていることに気づけば、他人に対する敬意や社会に対する連帯感が自然と感じられる、と野口さんは言います。自分は何もできない、他人より抜きんでていることなど何もないと否定的に考えるのではなく、どんな些細なことでもいいから、このことなら誰にも負けないというものを持ってみませんか。可能性は誰にでもあるのです。

岩波ジュニア新書には、ちょうど中高生のみなさんが読んでぴったりくる内容のものがたくさんありますので、図書館で手にとって見てください。どんなに有名な人でも、十代のころはみなさんと同じように漠然とした悩みを抱えていたことがわかると気持ちも楽になると思います。