大妻多摩中学高等学校

【校長室より】アメリカ大統領と映画

アメリカ大統領と映画

アメリカ大統領選は4年ごと、偶数年、うるう年に行われます。第一回目は1789年、この年のみが例外で、第二回の1792年以来、ずっとこのルールで選挙が行われています。選挙の年の2月に予備選(primary)が、3月には党員集会(caucus)が始まりますが、3月1日の火曜日(スーパー・チューズデー)には多数の州が予備選と党員集会とを同時に開催し、事実上の候補者選びが本格化します。そして7月の全国党大会(national convention)を経て、各党の候補者が指名されます。今年は7月18日から21日まで4日間かけて行われた共和党の全国大会ではドナルド・トランプが、7月25日から28日までやはり4日間かけて行われた民主党の全国大会ではヒラリー・クリントンが指名されました。11月8日には投票が行われ、翌年の1月5日にはアメリカ大統領・副大統領が正式に発表され、20日には就任式が行われます。

アメリカ大統領になるにはどのような資格が必要なのでしょうか。まず大統領に立候補するには、アメリカ生まれで14年以上アメリカに住み、35歳以上であることと憲法第2条第1節で定められています。また選挙権は18歳以上のアメリカ国民で、住んでいる市町村で有権者登録をした者とされています。

今年の選挙では、最初は泡沫候補と言われた共和党のドナルド・トランプと、初の女性大統領誕生かと言われる民主党のヒラリー・クリントンの一騎打ちになるわけですが、共和党と民主党とではどのような違いがあるのでしょうか。共和党(Republican Party)のシンボルマークは象、もともと南北戦争前に奴隷制拡大反対の勢力として形成されました。歴史的には民主党が南部農園主を勢力とする政党になったのに対して、共和党は東北部の新興産業資本勢力と中西部の自営農民層の連合体として組織されました。一般的には新保守主義の立場をとる中道右派政党であり、大企業や軍需産業、キリスト教右派、中南部の富裕層の保守白人層をとりこんでいます。一方民主党(Democratic Party)のシンボルマークはロバ、南部大農園主、西部小農民層、負債者層などで構成されていました。リベラリズムの立場を取り、環境問題や人権・福祉に関しては共和党より積極的な姿勢を取っています。経済政策に関しては、国内の貧困層や弱者・中小企業を救済。主な支持層は東海岸および西海岸の大都市市民、および高学歴知識層、労働者、さらにアフリカ・ヒスパニック・アジア系など人種マイノリティ、また文化人やハリウッドの映画産業関係者にも支持されています。

 

アメリカ大統領と映画

 

それでは本題に移りましょう。アメリカ大統領と映画の関連を見ていきますと、大統領の名前を冠した映画として、古くはジョン・フォード監督による『若き日のリンカーン』(Young Mr. Lincoln,1938)があります。大変有名な作品ですが、これはリンカーンが大統領になる前の、弁護士時代の偉業を映画化したものです。1976年にはウォーターゲート事件を追跡取材したワシントンポストの二人の記者を描いた『大統領の陰謀』(All the President’s Men)が、1991年にはケネディ暗殺に疑問を抱いた一地方検事がある陰謀を暴こうとする『JFK』(JFK)が製作されました。大統領を主人公とした映画はたくさん製作されていますが、何本も作られるようになったのは90年代になってから、特に1993年から2001年まで二期8年間務めたビル・クリントン(William(Bill) Jefferson Clinton)の時代です。アメリカは好景気に沸いたクリントン政権下では、財政収支も30年ぶりに黒字に転じ、失業率も低下しました。この期間には大統領の力を誇示するような、また大統領の人柄を肯定的に、あるいはコミカルに描いた映画がいくつも公開されました。

『デーヴ』(Dave, 1993)は、脳卒中で倒れた大統領に成り代わって大統領のそっくりさんが難事を切り抜けるというコメディタッチのサクセスストーリー。『アメリカン・プレジデント』(The American President, 1995)は、妻を亡くして幼い娘と二人でホワイトハウスに住む大統領が、政治的難局を乗り越えつつもロビイストの女性と恋に落ちるというロマンチックな映画。 『インデペンデンス・デイ』(Independence Day, 1996)は湾岸戦争のパイロットだったという大統領がエイリアンとの戦いに勝利し、自由を奪還した7月4日の独立記念日に人類の独立宣言の演説を行うという、大統領の力が前面に出された映画です。そして圧巻は『エアフォース・ワン』(Air Force One, 1998)です。ハリソン・フォードが演じる大統領の乗った「エア・フォース・ワン」(大統領専用機)がテロリスト集団にハイジャックされますが、墜落寸前の専用機を大統領自らが操縦して難を逃れるというスリリングな映画です。1999年には、民主党大統領予備選に出馬するジャックがサポート役の妻とともに、いかに優れたブレーンを集めて大統領候補に指名されるかを描いた『パーフェクト・カップル』(Primary Colors)が公開されました。明らかにビルとヒラリー・クリントン夫妻の選挙戦の裏側をパロディ化したものでしたが、公開当時には原作者の氏名は明かされませんでした。1999年から2006年まで続いたテレビドラマ『ホワイトハウス』(The West Wing)もクリントンと同じ民主党政権下のストリーでした。映画の中で黒人大統領が登場し始めたのも90年代、『ディープ・インパクト』(Deep Impact, 1998)ではモーガン・フリーマンが大統領役を演じていますし、テレビドラマ『24』は、黒人のパーマー大統領のボディーガードであるジャック・バウアーのテロリスト相手の活躍を、スプリット画面やデジタル時計表示を用いた臨場感ある場面展開によって日本でも人気となりました。

首相がしばしば交代する最近の日本では首相を主人公に据えた映画はなかなか製作されませんが、大統領選挙戦そのものがショーのようなアメリカでは、大統領のキャラクターや大統領選大統領自体がエンタテインメントの一つとして考えられるのです。今年20年ぶりにリメイク版が公開された『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(Independence Day: Resurgence)では対エイリアン戦争を指揮する女性大統領が登場しますが、エイリアンなどよりもっと手ごわい敵がいくつも待ち構えている国際社会では、大統領の強権をどのように、いつ実行するかその手腕が問われます。11月にはトランプ、クリントンのどちらかがアメリカの大統領に選出されます。大統領次第で対日関係も変化する今日、日本人としても大統領選の行方が見逃せません。