大妻多摩中学高等学校

【校長室より】『インデペンデンス・デイ:リサ-ジェンス』-ハリウッドと女性の活躍

『インデペンデンス・デイ:リサ-ジェンス』-ハリウッドと女性の活躍

先に挙げた『スター・ウォーズ/ フォースの覚醒』、『アリス・イン・ワンダーランド-時間の旅』などでも注目されたように、最近のリメイク映画は女性の活躍を意識した作品がとても目立ちます。70年代のフェミニズムの隆盛に対して反応が遅かったハリウッドですが、「アメリカ初の女性大統領誕生か?」という現代の世相を反映するかのように、ようやくハリウッドも女性の力を無視出来なくなっているようです。20世紀初頭の映画誕生から30年代の黄金時代に至るまで、映画はもともと男性中心の産業であり、ハリウッドは西部劇や戦争物、政治・裁判映画に至るまで強い男性像を量産してきました。一方女性はどのように描かれてきたかというと、強い男性主人公を引き立てるためのかよわい美女や、観客の涙を誘うような悲劇のヒロインが女性の観客の共感を得ました。80年代に入って強い女性が描かれるようになっても、『エイリアン』シリーズ(1979-97)や『GIジェーン』(97)などをみてもわかるように、彼女たちは並外れた体力と頭脳を兼ね備えた男性のような女性でしかあり得ませんでした。女優、女性監督など映画産業にかかわる女性を軽視してきたハリウッドですが、2015年のアカデミー賞受賞式では、『6才のボクが大人になるまで』で最優秀助演女優賞を受賞したパトリシア・アークエットが、「今こそ女性が男性と同等の賃金と権利をもつときがきた」(“It’s our time to have wage equality once and for all and equal rights for women in the USA.”)とスピーチをして話題になりました。

1996年の『インデペンデンス・デイ』から20年の月日を経て『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(Independence Day: Resurgence)が公開されて話題になっています。監督は前作同様ローランド・エメリッヒ。1996年版ではエイリアンと渡り合うウィル・スミス演じるヒラー大尉が大活躍し、大統領専用機エアフォースワンが迫り来るエイリアンの攻撃からかろうじて逃れ、エイリアンを撃退した大統領が7月4日の独立記念日に改めて人類の独立を宣言するのです。しかしこの映画で犠牲になるのは、大統領夫人(女性)、ゲイのタクシードライバー(性的少数派)、酒浸りのパイロット(社会的弱者)などのマイノリティでした。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以来、爆破倒壊する貿易センタービルを思い出させるカタストロフィー(大災害)映画は一時自粛されていました。しかし世界各地が毎日のようにテロの脅威にさらされ、さまざまな形で日々戦闘は続いている今日、『リサ-ジェンス』公開により、アメリカの威信を誇示するような映画が再び生まれたと言えるでしょう。“Resurgence”とは「復活」のこと。更に力を増したエイリアンの攻撃によって壊滅的な打撃を受けた地球が、アメリカ大統領のもとに再生するというストーリーです。前作の20年後を舞台とした『リサ-ジェンス』で活躍するのは前作の子ども世代、ホイットモア大統領の娘パトリシアです。母親を対エイリアン戦争で亡くした彼女は、湾岸戦争に出征した経験をもつ父親の影響でパイロットを志し、今では年老いた父の世話をしながらホワイトハウスに勤務、現大統領であるランフォードの下で働いています。ヒラリー・クリントンを意識してか、アメリカ初の女性大統領であるランフォードは、エイリアンの攻撃に対して冷静かつ適格に部下に指示を出せる強い大統領として描かれています。多文化主義を反映してパイロットのメンバーに中国人女性が含まれていることも特筆すべきでしょう。『リサ-ジェンス』ではホイットモア前大統領のほか、前作で地球防衛システムを構築したエンジニアのデイヴィッドと彼の父親ジュリアス、前作以来20年間昏睡状態に陥っていたオーキン博士などが再登場して活躍するのも見所の一つです。でも個人的には、タコの触手のような手足をもった巨大なエイリアンが登場すると、一気に安っぽいSF映画になってしまうのが残念なところ。所詮ハリウッド映画はエンタテインメントを目的としていますので、異形のエイリアンの登場も致し方ないことです。

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上記以外に女性が主人公として活躍する映画としては、1984年公開のSFコメディ映画『ゴーストバスターズ』が実に32年ぶりにリメイクされ、ゴースト(幽霊)を退治する3人の科学者を人気コメディ女優たちが演じています。「ゴースト」といい、「門の神ズール」、「鍵の神ビンツ」、マシュマロマンといい、1作目の『ゴーストバスターズ』は荒唐無稽なドタバタ喜劇ですが、興行的には当時大成功しました。ディズニー映画『ファインディング・ニモ』も13年の時を経て、続編が制作されましたが、主人公がカクレクマノミの少年「ニモ」からナンヨウハギの少女「ドリー」に代わり、タイトルも『ファインディング・ドリー』に変わりました。

もともとアカデミーの会員の多くは白人で占められており、今年度のアカデミー賞でも非白人の受賞者がいなかったことでアメリカの狭量さが露呈してしまいましたが、女性が映画界を席巻しているとはいえ、本当の意味で女性の活躍がふつうのこととして取り上げられる時代が来るのでしょか。