大妻多摩中学高等学校

【校長室より】大いなる力には大きなる責任が伴う

ニューヨーク、ブルックリンブリッジ①
ニューヨーク、ブルックリンブリッジ

「大いなる力には大いなる責任が伴う」(“With great power, comes great responsibility”)

『スター・ウォーズ』の「フォース(Force)」は超能力の基になるエネルギーをさしますが、『スパイダーマン』では、ふとしたことから超能力(great power)を身につけた高校生のピーター・パーカーは、自分がその力を持たなければ叔父は死なずにすんだのだと後悔と自責の念に駆られ、生前叔父から言われたこの言葉の重みをかみしめます。以来彼は、偉大なる力を持ったからこそ無力な一般市民を救うことは自分に課せられた義務と責任だと考え、「スパイダーマン」として行動するようになります。

エンパイアステートビルディング①
エンパイアステートビルディング

スーパーマン、バットマン、スパイダーマンに代表されるスーパーヒーローは、元々はマーベル・コミックスとDC・コミックスに代表されるアメリカのコミック出版社が出版する32ページほどの月間誌の登場人物。1938年のスーパーマン、1939年のバットマンの登場以来、スーパーヒーローたちは超能力を駆使してアメリカ国民を救う人気キャラクターになりました。「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」「弾丸よりも速く、力は機関車より強く、高いビルディングもひとっ飛び」 スーパーマンのこのキャッチフレーズでもわかるように、スーパーヒーローは生まれながら空を飛ぶなどの特殊能力をもっており(あるいはバットマンのように修行により身につけ)、彼らの活躍の場所は主としてニューヨークの摩天楼、やはり超能力を持っている敵を追いまわします。森や丘に囲まれた牧歌的な田園地帯では彼らの活躍は目立ちません。超高層ビルや鉄塔の上や、ビルの谷間を飛び回ってこそ彼らは本領を発揮します。

ヨーロッパでは妖精や魔女の登場するおとぎ話がこどもたちの成長に大きな影響をあたえましたが、アメリカ精神の根幹である正義と高潔さと強さをもったスーパーヒーローたちは、その誕生以来、アメリカの子どもたち、特に少年たちのあこがれの的になりました。新聞記者のクラーク・ケント(スーパーマン)や大富豪のブルース・ウェイン(バットマン)のように、ほとんどのスーパーヒーローたちは一般人を装った職業をもっており、彼らの超能力が必要にされたときには、それとわかる派手な衣装や装備をつけてスーパーヒーローに変身します。一人で行動する以外に、ファンタスティック・フォーやアヴェンジャーズのようにチームで行動するスーパーヒーローもおり、CGを活用した最近の実写映画版の制作により、彼らのスーパーパワーはコミック誌を超えてますます進化してきました。

ほとんどのヒーローが生まれながらに超能力を身につけているか、なんらかの化学的事故により身体に突然変異をおこして後発的に超能力を身につけていますが、その経緯がはっきりわかるのが1961年にマーベル・コミックスに登場した、冒頭に挙げたスパイダーマンです。ニューヨークのクイーンズにすむ高校生のピーター・パーカーは両親亡き後叔父と叔母に育てられています。(少女小説だけでなく、トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンのようにアメリカ少年小説でも孤児は多い。)成績も外見もさえないピーターは高校の校外見学で博物館に行ったときに特殊なクモに刺されて超能力をもつようになります。

ニューヨーク、マンハッタン①
ニューヨーク、マンハッタン

これまでのスーパーヒーローが能力的にも完璧な成人男性だったのに対して、ピーターは学校ではその風貌や行動から友達からからかわれ、親友と呼ばれる友人もガールフレンドもおらず、勉強や進学の問題をかかえ、養父母である叔父と叔母に対しても素直になれない、要するに漫画の読者同様に、思春期特有の悩みの多い少年なのです。彼は30年代から第二次大戦までのスーパーヒーローの黄金時代にはいなかったキャラクターであり、アメリカが国内外で大変革を迎える60年代の若者が共感するような、欠点だらけの主人公として登場したのです。その後のスパイダーマンの活躍はシリーズ化された映画をみればおわかりと思います。

日本でも正義の味方のウルトラマンに始まり、ガッチャマンやセーラームーンなど特撮ライブアクションのヒーロー・ヒロインがいますが、日本独自の進化をしたにせよ、アメリカのスーパーヒーローの影響を強く受けていることがわかります。タイトルにもあるように、偉大な力を持ったときにはその力の影響力について考えなければならない、そして力を持っているからこそ責任があるのだというメッセージは、世界でも絶大な力をもつアメリカならではの深い意味があるのではないでしょうか。