大妻多摩中学高等学校

【校長室より】第29期生 中学卒業式

満開の桜 中学3年生のみなさんへ、
卒業式に寄せて                  

校長 谷林眞理子

 
皆さん、大妻多摩中学校ご卒業おめでとうございます。この3年間は自宅学習の習慣をつけると同時に、3年後に控えた大学進学にむけて学習の基礎を固めた時期だと思います。また楽しい体育祭、文化祭、合唱祭でクラスや学年の団結を深め、中学卒業論文作成では図書館で調べたり、実地リサーチをしたり、アンケート調査をして視野を広げ、最終的に自分の考えをまとめて表現するという習慣がついたと思います。

大妻学院は創立者である大妻コタカ先生の信念のもとに、明治時代の学校創立当時から「良妻賢母」教育を提唱してきました。今では古くさい言葉に聞こえますが、この言葉には「よき妻たれ、賢い母たれ」に加えて「よき社会人たれ」という意味が込められています。つまり、「まずは自立して自活できる実技実学を備えた有職の婦人たれ」という意味なのです。女性がまだ家庭に縛られている明治時代に、「職業をもったよき社会人たれ」という発想はとても革新的でした。昼間仕事をしている女性たちが裁縫と手芸という技術を習って経済的自立ができるようにと、日本で初めて夜学を創られたのも先生なのです。当時の生徒の中には、日露戦争で夫を亡くし、子どもを抱えた女性が何人もいたそうですが、そのような女性たちにとって、子どもの養育のためにまず経済的な地盤を固めなくてはなりませんでした。

このようにコタカ先生のお話をしていると思い出される一つの物語があります。それはアメリカの19世紀半ばの南北戦争を背景に書かれた4姉妹の物語『若草物語』です。この物語は著者ルイザ・メイ・オルコットの半自伝的小説ですが、従軍牧師として戦地に行った父の代わりに、4姉妹が母を助けながら成長する姿が描かれています。母親は男性が戦争に行ってしまったあとのコミュニティをまとめるボランティア活動をし、姉妹は戦争で夫を亡くした貧しい移民一家を助けたり、裁縫や家庭教師をして家計を助けます。著者ルイザ自身を投影した次女ジョーは、新聞のコラムや短編小説を書いて原稿料を稼ぎ、一家の暮らしを楽にしたいと願います。模範的な良妻になる長女、おてんばで自立心旺盛な次女、引っ込み思案で家庭内のことをするのが好きな三女、そして姉たちのすることをうらやましがってばかりいる4女というように4姉妹はとても個性豊か、日頃は仲良しの姉妹ですが、互いにねたんだり、意地悪をしたり、けんかをしては仲直りをしたり、時代はかわってもみなさんと少しも変わりません。当時の家庭教育の大切さを教訓とした『若草物語』は、読者である少女たちにマナーやしつけを教える手本となりながら、感謝と奉仕の精神を教え、作家志望のジョーの姿に女性の自立をみるのです。

みなさんは、今は自宅と学校という狭い社会で、ご家族や先生方から守られて何不自由なく生活していると思いますが、みなさんのこれからの活躍の場は日本だけでなく世界です。この場合の「世界」はGlobe、すなわち「地球」のことです。目の前のこと、つまり大学入試だけでなく、大学でどのようなことを勉強したら将来社会で貢献できるか考えてみて下さい。中学3年間の目標である「自分を知る、他者を知る、社会を知る」は達成できましたか?「自分を知る」ことは「日本を知る」ことであり、「他者を知る」ことは「世界を知る」ことです。そしてこの「社会を知る」は地球規模の「グローバル社会を知ること」なのです。

春休みといっても部活などであっという間に過ぎてしまうかもしれません。でも少しでも時間があったら、是非本を読んでください。みなさんは『扉のむこう』という「読書のすすめ」の中の本を何冊ぐらい読みましたか?『文系?理系?人生を豊かにするヒント』のようなすぐに役に立ちそうな本もあります。その中で、わたしはあえてここで勉強から離れて、英米の少女小説を楽しんで読むことをおすすめします。『赤毛のアン』『大きな森の小さな家』『アルプスの少女ハイジ』『あしながおじさん』、そして先ほど触れた『若草物語』はいかがでしょうか。日本の少女漫画のモデルともいわれるこれらの小説は、みなさんと同年代の女の子の悩みや喜びが描かれていてきっと共感がもてるはずです。

高校に進学するとさらに目的意識をもって勉強しなくてはなりません。新学期が始まる前に楽しんで読書をしてください。みなさんの心の成長にきっと役に立つと思います。

中学ご卒業おめでとう。高校に進学してからのみなさんの活躍を期待しています。これでお祝いのメッセージとさせていただきます。