大妻多摩中学高等学校

【校長室より】大妻学院 花村邦昭理事長の著書『女性が輝く時代「働く」とはどういうことか』

花村理事長の近刊である本書を紹介する前に、2013年に出版された『働く女性のための<リーダーシップ>講義』(三和書籍)の紹介をしましょう。

生命論的パラダイム

1999年に「男女共同参画社会基本法」が国策として公布・施行されて以来、社会の各方面にわたる女性進出は盛んになりましたが、2020年までに企業の管理職中の女性比率を30パーセントにしようという目的はいまだ達成されません。昨年の世界経済フォーラムにおける男女格差報告でも日本は主要7か国の中でも最下位と低迷しています。そこで著者は、どこに問題があるか、「特に女性の立場に立って、女性がリーダーとなるための主体的条件」を探り、男性性に基づいた「機械論的パラダイム」ではなく、女性性に基づいた「生命論的パラダイム」が必要であること、言い換えると統帥型リーダーではなく、参謀型リーダー、ひいては卓越型リーダーにこれからのリーダー像を求めるべきだと言います。しかし、この「生命論的パラダイム」は「“いのち”を産み育てる性である女性性」のほうにより親和的であり、すなわち女性のほうがリーダーとして適任だと考えたとしても、いまだ男性の価値観が働くことの多い日本社会において、何人の女性がリーダーになろうとするでしょうか。それは今までに手本とすべきリーダー像が具体的になかったからであり、それならば女性たちは、勇気をもって自分でリーダー像を創りださなくてはならないと著者は明言します。

一方2015年出版の『女性が輝く時代「働く」とはどういうことか』は、著者によれば「これからの時代は女性こそが『働く』ことに意味と価値を真に体言する存在であってほしい」という願いから書かれたということです。言い換えれば本書のテーマは「女性の働きがより一層輝いて見える社会をどう実現するか」なのです。これには前著で述べられていた「機械論的パラダイム」から「生命論的パラダイム」へのパラダイムシフトの実現が欠かせないのですが、そこにこそ、「高度ICT社会への対応だけでなく、自然環境問題、少子高齢化問題、地方創生問題、あるいはワーク・ライフ・バランスのあるべき姿」など、時代が直面する諸問題を解く鍵があると著者は言います。さらに著者はいままであまり価値を置かれてこなかった女性の「家事労働」について見直すべきではないか、さらに「良妻賢母」という規範について再評価すべきではないかと考えます。この「良妻賢母」とは、大妻学院の創立者である大妻コタカが提唱していたことですが、コタカの「良妻賢母」とは家庭婦人である前に「まずは自立して自活できる実技実学をそなえた有職の婦人であれ」ということであり、コタカの言うところの「母性の涵養」という教育理念に集約されていると言います。この中には「男女共同参画社会」、「少子高齢化問題」、「ワーク・ライフ・バランス」など現代の諸問題が先取りされていると著者は述べています。
著者は本書を、そのような生き方を生きて欲しい「若者たち」へのメッセージで締めくくっていますが、このメッセージは若者たちだけでなく、彼らを受け入れる企業と社会に対しても向けられています。人は誰でも生き生きと世間にかかわって生きていきたい、何からの形で社会に貢献したいと願っていますが、その可能性という点で女性は男性より優位な立場にいるのではないかと著者は言います。